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9月9日は「救急の日」|年間760万件超の現場から考える、本当に必要な救急医療と私たちが今日からできること
ビジョナリー編集部 2026/09/08
急な怪我や病気に見舞われたとき、電話一本でいつでも駆けつけてくれる日本の救急医療。私たちは日頃、この手厚いシステムを「当たり前」と捉えがちです。
毎年9月9日の「救急の日」と、その日を含む一週間の「救急医療週間」は、その安心の裏側にある現状に目を向け、医療を守るために一人ひとりができることを考える重要な機会として設けられています。
本記事では、この日が制定された背景や目的を掘り下げるとともに、最新のデータが示す厳しい現実、そして私たちが日常生活の中で実践できる行動を詳しく解説していきます。
「救急の日」と「救急医療週間」の由来と目的
「救急の日」は、「9(きゅう)月9(きゅう)日」の語呂合わせにちなみ、昭和57年(1982年)に当時の厚生省(現・厚生労働省)と消防庁によって制定されました。また、9月9日を含む日曜日から土曜日までの7日間は「救急医療週間」として定められています。
この記念日が設けられた目的は、救急医療に対する国民全体の正しい理解と認識を深め、医療従事者や救急隊員の意識高揚を図ることにあります。
毎年この期間中には、全国各地の消防署や医療機関、自治体が中心となり、一般市民を対象とした応急手当の講習会や防災イベントが積極的に開催されています。「いざという時に自分自身や大切な人の命を守るための知恵と意識をアップデートする一週間」として位置づけられているのです。
データで見る日本の現状
日本の救急医療システムは世界的に見ても極めて優秀ですが、近年は大きな負荷がかかり、構造的な限界を迎えています。消防庁が公表した最新のデータをもとに、現場が直面している主な課題を解き明かします。
高齢化による出動件数の増加
総務省消防庁の「令和6年版 消防白書」によると、令和5年中の全国における救急自動車の出動件数は約763万8,000件に達し、過去最高を更新しました。計算すると、1日あたり平均で約2万900件、「約4.1秒に1回」のペースで出動している計算になります。
搬送された方々の内訳を見ると、65歳以上の高齢者が大半を占めています。高齢化の急速な進展に伴い、一人暮らしの高齢者や、持病の悪化により緊急搬送が必要となるケースが急増しており、需要は増加の一途をたどっています。
現場到着までの遅延と「搬送困難事案」の発生
出動件数の増加は、現場への到着時間や病院収容までの時間に影響を与えています。以前は通報から現場到着まで平均6分台だった時期もありましたが、直近のデータでは現場到着所要時間の全国平均が約10.0分へと延びました。
さらに、病院側も満床状態や対応医師の不足により、受入要請を引き受けられないケースが増加しています。照会を何度も繰り返し、現場での滞在時間が長時間化する「搬送困難事案」が社会問題となっており、一刻を争う重症患者への対応が遅れてしまうリスクが懸念されているのです。
軽症患者の利用による「適正利用」の課題
また、救急車の利用目的の偏りも深刻です。年間660万人以上にのぼる搬送人員のうち、医師の診断結果として「入院を必要としない軽症」と判定された割合が全体の48.5%と、およそ半分を占めています。
もちろん、本人や家族にとっては「どうすればいいか分からず不安だった」というケースも多く含まれます。しかし中には、「交通手段がなかった」「日中の診察待ち時間を避けたい」といった理由でタクシー代わりに利用される例も散見されます。限られた救急車とスタッフが圧迫されることで、救えるはずの命が脅かされる事態を引き起こしかねません。
命を守るために私たちが今日からできる「4つのアクション」
救急医療の崩壊を防ぎ、自分や家族の万が一に備えるために、私たちが日常の中で実践できる具体的で実効性の高いアクションを4つご紹介します。
Action 1:迷ったら電話相談「#7119(救急安心センター事業)」を活用する
「突然の熱や痛みに襲われたけれど、救急車を呼ぶべきか、明日まで待つべきか分からない」という場面に直面した際は、電話番号「#7119」を活用してください。
ここに電話をかけると、医師や看護師、相談員が病状を聞き取り、緊急度の判定を行ってくれます。緊急性が高いと判断されれば救急車を手配し、受診が可能と判定された場合は、その時間帯に診察を行っている最寄りの医療機関を案内してくれます。(※実施エリアは順次拡大中のため、自治体での運用状況を事前に確認しておくと安心です。)
Action 2:応急手当やAEDの使い方を講習で学んでおく
心肺停止などの緊急事態が発生した際、救急車が到着するまでの数分間に周囲の人間が施す一次救命処置(胸骨圧迫やAEDの操作)が、傷病者の生存率や後遺症の有無を大きく左右します。
地元の消防署や日本赤十字社などが定期的に開催している「普通救命講習」に参加し、実際に手を動かして胸骨圧迫のテンポやAEDの操作手順を体験しておきましょう。知識があるだけで、いざという時のパニックを防ぎ、確かな行動を起こすことができます。
Action 3:家族の「医療情報」をすぐ取り出せるように整理する
救急隊が現場に到着した際、傷病者の「持病」「日頃飲んでいる薬(お薬手帳)」「アレルギーの有無」「かかりつけ医」などの情報は、搬送先の選定や応急処置において重要な判断材料となります。
お薬手帳を一箇所にまとめて保管し、緊急連絡先や既往症を記した「救急情報メモ」を分かりやすい場所に用意しておくことをおすすめします。
Action 4:救急箱の点検と熱中症・季節性疾患への備え
家庭内での事故や急病を未然に防ぐ意識も大切です。定期的に救急箱を開け、消毒液や絆創膏の期限、常備薬の補充状況をチェックしましょう。
また、夏季の熱中症や冬季の感染症・ヒートショックなど、季節ごとに急増する疾患への対策を徹底することも、救急医療への負担軽減につながります。適切な水分補給や室温管理など、日々の健康管理が最高の防衛策です。
終わりに:一人ひとりのモラルと知識が「命の現場」を支える
私たちが享受している救急医療の価値を再認識するための大切な日が、9月9日の「救急の日」です。救急車や地域の医療体制は、無限に存在するものではありません。一人ひとりが適正利用を心がけ、いざという時の応急手当の知識を身につけることが、巡り巡って自身や大切な家族の命を守るセーフティーネットになります。
ぜひ救急医療週間をきっかけに、できることから一つずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。


