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2026

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    絶叫の裏に潜む緻密なUX。東京ドームシティが「アナログの恐怖」に投資し続ける理由

    絶叫の裏に潜む緻密なUX。東京ドームシティが「アナログの恐怖」に投資し続ける理由

     「わざわざお金を払い、冷や汗をかいて絶叫する」——。

     一見すると非合理なこの消費行動が、エンターテインメント業界で独自の進化を遂げている。近年、SNSでの考察系ホラーや「モキュメンタリー」(フィクションの物語を、ドキュメンタリーであるかのように見せて描く手法)が若年層を中心にブームとなるなど、ホラー人気はかつてない熱を帯びている。

     しかし、受動的なデジタルコンテンツが溢れる今だからこそ、リアルな感情体験の価値が再評価されている。その最前線を30年以上走り続けてきたのが、お化け屋敷を自社アセットとして磨き続けてきた東京ドームシティである。

     同施設は、お化け屋敷プロデューサー・五味弘文氏と長年タッグを組み、業界の常識を覆す名作を世に送り出してきた。そして前作から約8年の時を経て、抜本的なリニューアルを敢行。最新作『暗闇婚礼』をオープンさせた。彼らが仕掛ける恐怖は、なぜビジネスとして成立し続けるのか。企画・プロモーションを担当する鈴木氏と對川(つがわ)氏の話から、その体験設計の裏側に迫る。

    あえてのアナログ投資 ── VRには出せない究極の「びっくり箱」

     最新作『暗闇婚礼』で特筆すべきは、最新のデジタル技術ではなく、あえてアナログな空間設計に投資した点だ。

     鈴木氏はその理由をこう明かす。「お化け屋敷は、一生懸命に作った『びっくり箱』なんです。例えば、お客様を引き込む最初のバスの部屋。映像コンテンツを入れる案もありましたが、VRには敵わないし、そこが求められているわけではないと考え、照明と影だけで勝負しました。リアル路線に振り切るのが、東京ドームらしさであり、実空間だからこそ出せる『質感』がそこにはあるんです」

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     このアナログ空間に命を吹き込む最大の要素が「人(キャスト)」の存在である。運営効率化のためにセンサー等のギミックも取り入れているが、恐怖の核は人間にしか生み出せないという。

     「効率化のためにギミックを増やしてはいますが、最終的に『どこが肝か』と言われれば、やはり人なんです」と鈴木氏は語る。機械では再現不可能な絶妙な間合いや息遣いが、生々しい恐怖を生むのだ。「リアルさの追求は、今後も変わらない大切なポイント」と、對川氏も深くうなずく。

    クリエイティビティとビジネスの融合 ── 狂気的な「細部へのこだわり」

     圧倒的な質感を維持するため、現場では膨大な労力が費やされている。最新作では、体験デザインから内装設計までを一貫して手がけるクリエイティブ集団「博展」を新たに起用。ウェディング雑誌を模したキャッチーなCMを制作するなど、プロモーション面でも攻めの姿勢を見せている。

     一方で、現場では五味氏の妥協なきこだわりを具現化しつつ、安全で円滑な運営を両立させるための試行錯誤が続いた。

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     「人形一体ずつの表情や角度、照明の位置まで、現場を歩きながら6〜7時間話し込むこともありました。運営目線では滞留を防ぎ、回転効率を落とさず、何よりも安全にご案内しなければなりません。演出クオリティと安全性のバランスを取るのが一番の苦労でした」と對川氏は振り返る。

     開発部門の経験を持つ鈴木氏も、「スピーカーの角度ひとつで感じ方が変わる。一つひとつの部屋が小劇場なんです。それをいかに安全かつ確実に成立させるかが、私たちの腕の見せ所です」と自負をのぞかせる。

    顧客インサイトを捉える ── 「怖い」を「楽しい」に変換するUX設計

     こだわり抜いた空間の先で提供されているのは、実は単なる「恐怖」ではない。東京ドームシティのお化け屋敷は、極限まで怖がらせた後に「楽しい」と感じさせる緻密な感情導線が設計されている。

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     「お客様には、『思い切り怖がりたい』『大声を出し、騒ぎたい』という潜在的な欲求があります。私たちがその欲求を刺激し、解放するからこそ、恐怖は最終的に『楽しさ』へと変わるんです。拒絶されるレベルではなく、無意識に求めている『適度なスリル』を叶えることが大切だと考えています」と鈴木氏は分析する。

     さらに對川氏は、伝統的に磨き上げてきた「ミッション型」体験の効果を指摘する。 「お客様自身のアクションがあることは大きい。今回も複数のミッションを用意していますが、やり遂げた時の達成感や爽快感が『楽しい』という感情に直結しているのです」

    経営理念「感動の共有」を体現する、ホラーカルチャーの未来

     東京ドームグループが掲げる経営理念「感動の共有」。恐怖という感情をエンターテインメントに昇華させるお化け屋敷は、まさにこの理念を体現するコンテンツだ。

     「ホラーは、恐怖というネガティブな要素を誰もが求めている稀有なコンテンツ。『楽しい』『嬉しい』とは異なる切り口の『感動の共有』だからこそ、大切なエンターテインメントなんです」と鈴木氏は熱を込める。

     對川氏も、「細部へのこだわりは、すべてのエンターテインメントに通ずる要素。どんな業務でもこの姿勢を忘れずに取り組みたい」と、ものづくりへの意気込みを語った。

     30年で築いたブランド資産を武器に、東京ドームシティは次なる飛躍を見据えている。2026年9月、ホラーカルチャーの発信拠点となる新たな祭典『東京ホラー特区!!2026』が開催される。「Dive into Horror」を掲げ、アトラクションの枠を超えてインディーホラーゲーム、映画、作家、クリエイターが集結する。
    さらに、巧妙な大道具・美術セットや制作ノウハウといった「恐怖の世界の裏側」を公開する体験型展示会『Re:ホラーにふれる展 -映画美術の世界-』も展開。プロの映画スタッフが創り上げた空間を「さわって」「撮れる」といった新たなアプローチで、ホラー体験の可能性をさらに拡張していく。

     「リアルだからこそできる、びっくり箱。これは東京ドームシティというアセットを持つ私たちがやるべき領域です」と鈴木氏は断言する。

    徹底的にリアルな質感にこだわり、『心が動く、心に残る』体験を生み出し続ける東京ドームシティ。唯一無二の「びっくり箱」が開くとき、そこには新たな感動の共有が生まれるに違いない。 記事内画像

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