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新商品の一発ヒットで終わらせない。市場で「売れつづける」に伴走するマクアケの狙い
ビジョナリー編集部 2026/08/19
新商品の開発に成功し、いざ一般販売やEC展開へ進出したものの、思うように販路や売上が広がらず足踏みしてしまう。あるいは、日々の細かなEC運用作業に忙殺され、商品開発リソースが削られていく。多くのものづくり企業がEC運営における構造的なジレンマに直面している。
こうした課題に対し、株式会社マクアケは「Makuake」実施後の楽天市場やYahoo!ショッピングなど国内大手ECモールでの展開・運用、さらなる物流、カスタマーサポートまでを丸ごと引き受ける「Makuake STORE for ECモール」を展開している。
単なるアドバイザーではなく、マクアケ自身が「小売店」として売上を上げることにコミットする。企業の持続的な事業成長を支える、これからの時代の「製販分離」の合理性について、同社グロース本部責任者の菊地氏が抱く熱い想いとともに紐解く。
新商品が直面する一般販売の壁と、ある悔しさ
ー素晴らしい新商品を開発し、直接一般販売やECに挑戦する企業は増える。しかし、高い情熱を持って生まれたプロダクトであるにもかかわらず、販売面で足踏みをしてしまうのはなぜでしょうか。
菊地:一番の要因は、 「良いものをつくる技術」と「売り続ける技術」が全くの別物 だからです。
多くの中小企業がまずは自社ECサイトを立ち上げますが、自社ECは広告運用やSNS、コンテンツマーケティングなどを自前で行い続けなければ、そもそもお客様に来ていただくことすらできません。ネット上の棚に商品は置いたものの、誰もその前を通らないという寂しい状況が、至る所で起きているのが実情です。
「Makuake」を活用した事業者への調査でも、大半がオンライン上の年間売上が1,000万円以下、かつEC運営にかけている工数は他業務との兼務で月1人月未満というのが浮かび上がっています。リソースが圧倒的に不足している中で、売れつづける仕組みを作るのは構造的に極めて困難だと言えます。
ー菊地氏ご自身も、そうした企業のリアルな葛藤を間近で見てこられたのですね。
菊地:はい。かつて私はキュレーターという「Makuake」のプロジェクト担当者として多くの新商品のデビューをサポートしていました。しかし、一般販売を開始した事業者との対話の中で、「最初の話題化には成功したけれど、その後の販路が続かない」「在庫の山を前に、どうキャッシュに変えるかばかり考えていて苦しい」という声が届いていたんです。
「素晴らしいものができましたね!」とリリースの瞬間だけを盛り上げて、企業の継続的な営みである「その後」に寄り添えていなかった自分を、ある時すごく恥ずかしくなりました。せっかく生まれた素晴らしいプロダクトが、倉庫に眠ったまま埋もれていくのはあまりにも惜しい。情熱を注いでものづくりをする皆さまが、販売の不安で疲弊していく姿を何とかしてなくしたい。これが、今のグロース事業を立ち上げた一番の原動力です。
ーいざ一般販売を拡大しようとした際、原価構造の設計ミスに気づくケースも多いと聞きます。
菊地:そうなんです。ローンチ初期はD2Cのような直販体制で手数料を抑えられても、販路を広げようと卸市場へ展開する際、店舗での4掛け(売上の60%が引き抜かれる)や6掛け(40%が引き抜かれる)という厳しい現実に直面します。この中間マージンや広告宣伝費、人件費を最初から考慮した原価構造になっていないと、売れば 売るほど赤字になるという罠 に陥ってしまいます。
EC運用の膨大な実務と採用の壁。完全内製化がはらむ巨大な固定費リスク
ー販売体制を自前で構築(内製化)しようとしても、高い壁が立ち塞がります。
菊地:ECをマルチチャネルで本格運用できる専門人材を採用しようとすれば、ハイプレイヤーを採用せねばならず採用コストがかかり、自社で育成し続けるのも容易ではありません。
さらに、ECで成果を出すためには、日々のページ修正、モール側との交渉、物流管理、顧客対応など、非常に細かな実務作業が100も200もあります。どれか一部だけできればいいわけではなく、その細かいタスクを毎日100%やり切って初めて成果が出る世界です。リソースが限られた企業がこれらをすべて自前で抱え込むのは、限界があると言わざるを得ません。
ー変化の激しい現代において、すべてを自前で抱えること自体がリスクになり得ると。
菊地:その通りです。しかもECのゲームルールは変わるスピードも非常に早いです。例えば、昨年に日本でローンチされたTikTok Shopのように、従来の楽天市場やYahoo!ショッピングなどの「レビューを貯めて、自然検索順位を上げる」という戦い方とは全く違うゲームルールを持つ新しいプラットフォームが登場するたび、自前でノウハウを構築し直すのは限界があります。
さらに、地政学リスクや急激な市況の変化によって「モノが売れない時期」が来た際、自前で人員やシステムなどの固定費を抱えていると、売れないのにコストだけがかかり続けます。変化の多い時代だからこそ、すべてを内製化するよりも、外部パートナーを上手く活用して経営のフットワークを軽くし、経営の体重を軽くしておくことは、極めて合理的な判断です。
アドバイザーではなく小売店としてコミットする。倉庫に預けるだけで主要モールを網羅する仕組み
ーその「身軽な経営」を実現するソリューションとして、提供する「Makuake STORE for ECモール」は従来のサービスと何が違うのでしょうか。
菊地:最大の違いは、 マクアケ側がコンサルや運用代行のようなアドバイザーではなく小売店として、販売の責任そのものを引き受ける点 にあります。「アドバイスをするから事業者に動いてください」ではなく、「私たちが仕入れて、私たちが売る。売れなかったらマクアケの責任」という構造です。
ー事業者側の実務負担は、具体的にどの程度軽減されるのですか。
菊地:事業者側の実務工数は極めてシンプルで、指定の倉庫に商品を預け入れていただくだけで済みます。楽天市場、Yahoo!ショッピング、TikTok Shopといった国内主要ECモールへのマルチチャネル展開から、365日15時までの注文を当日出荷する物流網の構築、日々の細かな運用作業、カスタマー対応にいたるまで、すべての実務を「Makuake STORE」が引き受ける形です。
ー単独でECに出店する場合と比較して、販売面での強みはどこにありますか。
菊地:通常のECモールでは、商品の名前やブランド名が購入者の頭の中で想起されていなければ検索されないため、認知のない新商品には出会えません。しかし、各モール内に「Makuake STORE」という群(セレクトショップのような形)で出店しているため、「検索以外で新しい商品との出会いを創出できるストア」として機能します。
すでにモールに自社公式店を出されている企業でも、公式店では検索層を、「Makuake STORE」では今まで出会えなかった新規顧客を引っ張ってくるという形で、食い合うことなく全体の売上を最大化できます。楽天市場との取り組みによる「Diggly」のように、モール側との取り組みによって単独出店では掲載できない「特別な掲載枠」を作れていることも強い独自性です。
作るプロである事業者に寄り添う。「製販分離」がものづくりの可能性を高める
ーーこのサービスは、どのような事業者に活用いただきたいのでしょうか。
菊地:「誰もが得意なことを伸ばせる社会でありたい」というのが根本にある想いです。学校のテストでも、すべての教科で100点を取るのが難しいように、事業者が「つくることもできて、売ることもできて、経営もすべて完璧にできる」ということは決して簡単なことではありません。それなのに、苦手な販売実務を無理に頑張ろうとすると、せっかくの強みである「つくること」へのリソースが奪われてしまう可能性があります。
だからこそ、事業者には、自らが一番得意とする領域に100%集中してほしい。得意なことを伸ばす環境構築のパートナーとしてマクアケが一般販売時の煩雑な実務をすべて引き受け、挑戦者に徹底的に寄り添います。
ー一般販売へのサポート(グロース事業)を通して、マクアケは何を目指していきますか?
菊地:私たちがグロース事業として一般販売市場の前線に出ていくことによって、「各モールでは今こんな人がこういう風に買っていますよ」「レビューを分析すると、この領域の市場が空いていますよ」というリアルなデータを収集できます。
この出口から逆算した4Pの設計やマーケットインの情報を、次の新商品のプラン(企画)や「Makuake」でのデビューの段階にフィードバックする。このサイクルが回せるようになると、一発のヒットで終わらせず、中長期的にユーザーの生活に彩りを与える「ロングセラーで売れつづける商品」へと何度もチャレンジしていくことができるようになると思っています。
この共創循環によって、日本のものづくりの可能性をどこまでも大きく広げていきたいですね。


