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    ノーベル賞で再注目!クラスナホルカイ・ラースローと日本文化の意外な関係

    ノーベル賞で再注目!クラスナホルカイ・ラースローと日本文化の意外な関係

     2025年のノーベル文学賞が、ハンガリーのクラスナホルカイ・ラースロー氏に授与されました。この記事では、クラスナホルカイ氏の人物像から作風、日本との意外な接点、代表作の魅力まで紹介します。

    クラスナホルカイ・ラースローとは

     クラスナホルカイ・ラースロー氏は1954年、ハンガリー南東部の町ジュラに生まれました。首都であるブダペストから遠く離れた辺境の地で育った経験が、彼の作品に一貫して流れる“中心から疎外された共同体”というテーマの原風景となっています。

     共産主義体制下のハンガリーという閉塞的な社会で過ごした彼のまなざしは、常に“崩壊”や“救済の幻想”を見つめ続けてきました。

     クラスナホルカイ氏は1985年、長編小説『サタンタンゴ』でデビュー。この作品が文学界を席巻し、以降も国際的な評価を高めていきます。

     主な受賞歴は以下の通りです。

    • 2015年:国際ブッカー賞(英国)
    • 2019年:全米図書賞・翻訳文学部門(米国)
    • 2025年:ノーベル文学賞
       

     ノーベル文学賞の選考理由には「終末的な恐怖の中で、芸術の力を再確認させる説得力と先見性」が挙げられています。現代社会が直面する閉塞感や不安、混乱を、圧倒的な筆致で描ききることで“言葉の力”を再発見させた点が評価されたのです。

    特異な文体

     クラスナホルカイ作品最大の特徴は、なんといってもその文体です。

     例えば、一つの文が数ページにわたることも珍しくありません。句読点や段落分けが極端に少なく、読者はまるで滝のように流れ込む文章に一気に飲み込まれます。また、『最後の狼』という中編小説では、“全体が一つの文章”で構成されています。 このように長い文体から、以下のような効果を生み出しています。

    • 読者は直線的な物語を追うのではなく、語り手の意識の渦に巻き込まれる
    • 眩暈にも似た没入感や催眠的なリズムを体験できる
    • 物語の絶望や混乱、閉塞感がリアルに迫ってくる

    クラスナホルカイの作品と世界観

     ここからは、彼の代表作を通して、その世界観に迫ります。

    『サタンタンゴ』――共同体の崩壊と偽りの救済

     デビュー作である本作は、ハンガリーの大平原にある荒廃した集落が舞台になっています。
    住民たちは希望を失い、互いを欺き合う日々。そこへ“救済”を約束する偽預言者イリミアーシュが現れます。しかし、やがて彼らの小さな共同体は、完全な崩壊を迎えることになります。

     この物語は社会主義体制末期のハンガリーが抱えていた絶望と精神的荒廃を寓話的に描き出し、「希望と絶望の間を往復する、無益で破滅的なダンス」とも称されています。

     この小説は映画監督ベーラ・タル氏によって映画化され、上映時間7時間という異例の長さでも話題となりました。

    『抵抗の憂鬱』――秩序への抵抗と群衆心理の危うさ

     こちらもベーラ・タル監督によって映像化された作品です。
    陰鬱な田舎町に突如現れた巨大なクジラの死骸を積んだサーカス団――この異様な見世物が町の住民たちの不安や不満を掻き立て、やがて群衆は暴徒と化し、町は破壊と混乱の渦へ。

     本作は、人間社会の秩序がいかに脆く、非合理な力に簡単に転覆されてしまうかを鮮烈に描き出しています。

    『戦争と戦争』――普遍的な闘争と滑稽さ、そして救済の希求

     主人公は孤独な公文書保管員コロム。彼は偶然、時空を超えて戦争と破壊から逃れようとする4人の男たちを描いた謎の写本を発見します。
    この写本を“世界の終末から救い出す”ため、コロムはニューヨークへ旅立ちますが、彼の旅もまた暴力と混乱から逃れられない闘争の連続に。

     悲劇的なプロットのなかにも、不条理なユーモアが織り交ぜられている点が特徴です。彼の作品の中では最も喜劇的でありながら、同時に根源的な暗さをたたえた一作と言えます。

    日本との関わり

     クラスナホルカイ氏は日本、とりわけ京都に強い関心を寄せてきました。

     1997年に初来日してから、2000年、2005年にも国際交流基金のフェローとして半年間ずつ京都に滞在しています。日本の伝統文化に魅了され、滞在中は能楽や寺社建築、日本庭園などを研究していました。

     日本での経験をもとに、京都を舞台にした小説『北は山、南は湖、西は道、東は川』を執筆し、邦訳もされています。また、能楽師や世阿弥を題材にした短編集も発表するなど、日本文化から多くのインスピレーションを受けています。

     現時点で日本語に翻訳されているクラスナホルカイ作品は少数です。特に『北は山、南は湖、西は道、東は川』は現在入手困難となっていますが、ノーベル賞受賞を機に今後は邦訳が次々と刊行されていく見込みです。『サタンタンゴ』の邦訳も国書刊行会から来年刊行予定とされています。

    まとめ

     クラスナホルカイ・ラースロー氏は、時代や国境を超えて、「人間社会の閉塞や絶望」を圧倒的な筆致で描きつつ、その中に“芸術の力”と“言葉の再生”を見出す作家です。

     クラスナホルカイ氏の作品を手に取り、私たち自身の“現実”と“希望”について考えるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

    #ノーベル文学賞#ノーベル賞#クラスナホルカイ#クラスナホルカイ・ラースロー#サタンタンゴ#現代文学#海外文学#ハンガリー文学#現代作家

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