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2025

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    星座の起源と歴史:夜空を彩る“宇宙の地図”の物語

    星座の起源と歴史:夜空を彩る“宇宙の地図”の物語

    多くの方が「星座」と聞いて、オリオン座など、星を線でつないだ形を思い浮かべるでしょう。
    しかし、星座とは、厳密には実際の「星の並び」や「線で結んだ形」そのものではありません。星座とは、天球上に定められた“空のエリア”のこと。言い換えれば「宇宙の地図に記された区画」のようなものなのです。
    星座の歴史はいったいどこから始まったのでしょうか?今回は、星座の起源と歴史、その背後にある人類の営みを紹介していきます。

    星座の始まり

    星座のルーツは今から約5000年前、メソポタミア文明にまで遡ります。メソポタミアの人々は、夜空の明るい星の並びを、神話や動物、伝説の英雄になぞらえて表現しました。

    紀元前1000年頃の「ムル・アピン」と呼ばれる粘土板には、多くの星座や星の記録が残されています。この時代、星座は季節の移り変わりや農作業のタイミング、方角を知るための“生活の道しるべ”でもありました。

    星座と星占いの誕生

    メソポタミアでは、星や惑星の動きが王や国家の運命を左右するとされ、神官たちが天体の動きを詳細に観測し、占いに活用していました。これが「占星術(星占い)」の始まりでもあります。

    バビロニアからギリシャ、そして世界へ

    古代メソポタミアで生まれた星座の知識は、やがてバビロニア人に受け継がれ、さらに地中海沿岸のフェニキア人を通じてギリシャへと伝わりました。

    ギリシャ時代には、星座の物語がギリシャ神話と融合し、より豊かなストーリーとして広がっていきます。たとえば、オリオン座が悲劇で命を落とした勇敢な狩人オリオンの姿に見立てられたり、ペルセウス座が妖怪メドゥーサを退治した英雄ペルセウスの伝説と結びつけられたりしています。

    星座の体系化に大きく貢献したのが、2世紀のアレクサンドリアの学者、クラウディオス・プトレマイオスです。彼の著作『アルマゲスト』には、黄道(太陽の通り道)に沿った12星座を含む48星座が記載されました。

    この「プトレマイオスの48星座」は、後のヨーロッパの天文学の礎となり、ルネサンス期や大航海時代にも受け継がれていきます。

    星座の“乱立”と“整理”――大航海時代から現代へ

    16世紀以降、望遠鏡の発明とともに天体観測が急速に発展しました。大航海時代には、南半球の星空を観測する機会が増え、ギリシャやローマ時代には知られていなかった星座が次々と提案されるようになりました。

    たとえば、カメレオン座やくじゃく座などの珍しい動物、さらには望遠鏡やコンパスといった新しい道具までが星座のモチーフとなりました。

    夜空には多くの星座が乱立し、同じ場所に複数の星座が重なって描かれる混乱が起こります。星座の境界もあいまいになり、「この星はどの星座に属するのか?」と天文学者たちの悩みの種となりました。

    88星座への統一

    20世紀初頭、星の位置を正確に記録し、新しい天体を命名する必要性から、「星座とその境界を世界共通にしよう」という動きが高まります。

    1919年、世界中の天文学者が集まって国際天文学連合(IAU)が設立されました。最初の大きな課題が「星座の整理と統一」だったのです。

    • 1922年:第1回IAU総会で、整理された88の星座名と略号について合意。
    • 1925年:第2回総会で、星座の境界線案を提出。
    • 1928年:第3回総会でこの境界線が正式に採択され、全天を88星座に区分。
    • 1930年:ウジェーヌ・デルポルテによって、88星座の境界が“赤経・赤緯”に沿った直線で科学的に定義される。
       

    こうして、長く混乱していた星座は、世界共通の“宇宙の地図”として整理されました。

    このとき決められた星座の境界は、地球上の国境にたとえることができます。恒星や新しい天体は、必ずどこか一つの星座に「所属」するようになりました。

    星座を作った人々の物語――偉人たちの挑戦

    星座の歴史には、世界の各地で活躍した天文学者や探検家たちの熱意が詰まっています。彼らはどのようにして今の星座体系を築いたのでしょうか。

    プトレマイオス

    2世紀のアレクサンドリアの学者。天動説を唱えたことで知られますが、彼の『アルマゲスト』で定めた48星座は、「トレミーの48星座」と呼ばれ、現在の88星座のうち多くがここに由来しています。

    バイヤー(バイエル)

    17世紀のドイツの法律家・天文学者。星の明るさ順にギリシャ文字を当てる「バイエル符号」を考案したことで有名です。『ウラノメトリア』では、南天の新しい星座も紹介されました。

    ラカイユ

    18世紀フランスの天文学者。南アフリカで17個もの南天の星座を創案し、「観測器具」など当時の最先端テクノロジーをモチーフにした星座が特徴です。

    このように、星座の形や名前の背後には、時代ごとの人間の想像力や技術、冒険心が色濃く反映されています。

    星占い(占星術)と星座

    星座の歴史と切っても切れない関係にあるのが「占星術」です。

    紀元前2000年代の古代バビロンでは、星や惑星の動きを神々のメッセージととらえ、神官が王や国家の行方を占いました。星占いは神聖な儀式であり、一般の人々には許されていませんでした。

    ギリシャに伝わった占星術は、ギリシャ神話や哲学と融合し、「おひつじ座」から「うお座」までの12星座(黄道十二宮)が生まれました。やがて個人の運命を星で占う、よりパーソナルな占星術へ発展していきます。

    14世紀のヨーロッパでは、占星術師が王室に仕えることも一般的でしたが、魔女裁判や科学革命によって一時衰退しました。しかし20世紀になると、新聞や雑誌の「今日の運勢」コーナーなど、星占いが再び注目され現代の“エンタメ”として広く親しまれるようになったのです。

    まとめ

    • 星座は5000年前のメソポタミアで誕生
    • ギリシャ・ローマ時代に体系化され、神話と結びつく
    • 大航海時代以降に新しい星座が増え、混乱も
    • 20世紀に国際天文学連合が88星座に統一
    • 星占いと星座は、古代から現代まで人々の営みと共に発展
       

    星座を知ることで、夜空がより身近になり、私たちのルーツや世界とのつながりも感じられるのではないでしょうか。星空を見上げる時に「この星座はどんな物語をたどってきたのだろう?」と想像してみてください。星座がもっと面白く、そして深く身近に感じられるはずです。

    #星座#天文学#宇宙#星空#占星術#星占い

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