Diamond Visionary logo

1/23()

2026

SHARE

    成人式の歴史と変化──なぜ私たちは「大人になる日」を祝うのか

    成人式の歴史と変化──なぜ私たちは「大人になる日」を祝うのか

    「成人式」と聞くと、振袖やスーツに身を包んだ若者たちの晴れやかな姿を思い浮かべる人が多いでしょう。

    一方で、その由来や歴史、そして現代に至るまでの変化については、意外と知られていないかもしれません。

    なぜ日本では、このような特別な式典が行われてきたのでしょうか。

    時代とともに姿を変えながら受け継がれてきた成人式の意味と、その舞台裏を紐解いていきます。

    「大人になる」ということの重み──古代から続く通過儀礼

    人生にはいくつかの大きな節目があります。冠婚葬祭の「冠」が象徴するように、「成人になる」という出来事は、古来より日本社会で特別な意味を持っていました。奈良時代以降、男子は12歳から16歳で「元服」と呼ばれる儀式を行い、それまでの幼名を改め、大人の髪型と装いに変わりました。身分や時代によって細かな違いはあったものの、幼い子どもから一人前の大人へと成長することを、社会全体で祝福するのが日本の伝統だったのです。

    一方、女子には「裳着(もぎ)」という儀式がありました。こちらも12歳から16歳で行われ、腰から下にまとう「裳」を身につけることで大人の女性の仲間入りを果たします。髪型を大人仕様に結い上げる「髪上げ」も同時に行われ、見た目にも大きく成長を感じさせるものでした。

    興味深いのは、これらの儀式が必ずしも一律ではなく、庶民の間では地域ごとの独自ルールが存在していた点です。例えば、一人で鹿を狩れるようになったら、あるいは米俵を運べるようになったら「大人」と認められるなど、実生活の中での成長が大人への通過儀礼として機能していたことがうかがえます。

    成人式、現代のかたち──「20歳」の意味と戦後の変化

    現在のように20歳で成人式を祝うスタイルは、太平洋戦争後に制度として整えられたものです。日本全体が大きな転換点を迎えるなかで、若者に希望と自覚を持ってもらいたいという願いから、埼玉県蕨市で「青年祭」が1946年に開催されました。これが全国に広まり、1949年には1月15日が「成人の日」として正式な国民の祝日となります。

    実は、この1月15日という日付には深い意味があります。古来、元服の儀式(古代から中世の日本で行われていた、男子が「子ども」から「大人」になることを社会的に認められる通過儀礼)を新年最初の満月に合わせて行う風習があり、その名残がこの日取りに反映されています。その後、2000年の「ハッピーマンデー法」によって成人の日は1月の第2月曜日へと移され、三連休の一部として多くの人が参加しやすい日程へと変化しました。

    なぜ「20歳」のまま?──成人年齢引き下げ後の成人式

    2022年4月1日、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。しかし、多くの自治体では変わらずに20歳で成人式を開催しています。なぜでしょうか。

    まず、18歳はちょうど高校3年生で、受験や進路選択の真っ只中にあります。精神的にも経済的にも、まだ「社会に出る」準備が整っていないと感じる方が多いのではないでしょうか。加えて、酒やたばこ、公営ギャンブルの解禁は今も20歳のまま。法的には大人になったとはいえ、社会的な責任や自覚を求められるタイミングとしては、やはり20歳が適切だと考えられています。

    実際、法務省の調査でも、全国の自治体のうち18歳で成人式を開催しているのはほんのわずかです。自治体によっては『成人式』という名称を「はたちの集い」などと変えて工夫しつつ、20歳の若者を対象に成人を祝う会を開催しています。ここには、地元を離れて進学した人も参加しやすい、同窓会的な役割も大きく影響しているのです。

    地域ごとに広がる多様性──「私たちらしい」成人式へ

    成人式の姿は、地域によっても大きく異なります。例えば、千葉県浦安市では東京ディズニーランドを会場にし、キャラクターたちとともに新成人を祝う独自のスタイルが注目を集めています。大学生の春休みに合わせて3月に開催するところや、夏休みに成人式を行い、参加しやすさを重視する動きが見られます。

    また、職場で「社内成人式」を行う企業も増えています。祝日が営業日にあたる業界では、新成人となった社員の門出を職場全体で祝うことで、結束力やモチベーションの向上にもつながっているようです。

    こうした工夫の背景には、「より多くの新成人に参加してもらいたい」という自治体や地域社会の願いがあります。式典の内容も多様化し、自治体の首長や来賓からの祝辞だけでなく、地元中高生による演奏や演劇、さらにはビンゴ大会など、地域色を生かした企画が増えてきました。

    振袖に込められた意味──「晴れの日」を彩る伝統と願い

    成人式といえば、やはり振袖姿の女性たちが主役です。なぜ振袖を着るのでしょうか。

    振袖は未婚女性の「第一礼装」として、格式の高い場面で着用されてきました。袖が長く、動くたびに華やかさが際立つこの衣装は、特別な日の「晴れ着」として明治時代以降に定着したものです。実はこの長い袖には、「振る」ことで魔除けや厄払いの意味が込められており、子ども時代から病気や災いを遠ざける願いが込められていました。成人式で振袖をまとうことは、大人になる自覚を促すだけでなく、親や周囲の人々への感謝と、これからの人生の門出にふさわしい厄除けの意味も持っているのです。

    男性はスーツで参加する人が多いものの、礼装は袴羽織です。このスタイルは江戸時代の武家社会で略礼装として使われていたスタイルが、明治時代以降に庶民にも広がったものです。こうした伝統は、人生の節目には日常とは異なる装いで臨むという考え方として、現代の成人式にも受け継がれています。

    成人の通過儀礼は世界中にありますが、日本のように伝統衣装で式典を彩るスタイルは珍しいといわれています。海外で例を挙げるとケニアのマサイ族ではライオンと戦う、バヌアツ共和国では高さ30mものやぐらからジャンプするなど、厳しい試練を乗り越えて一人前と認められる例もあります。華やかな振袖やスーツで集い、家族や地域とともに祝う日本の成人式は、海外からも独特な文化として注目されているのです。

    成人式は「自分を見つめ直す」機会

    成人の日は、「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます」日とされています。多くの人が地元に戻り、同級生と再会し、家族に成長した姿を見せる。普段とは違う装いに身を包み、「自分はこれからどう生きていくのか」を考える──そんな人生のターニングポイントでもあります。

    この日を迎えた新成人は、誇りと責任を胸に、次の一歩を踏み出します。そして、彼らを見守る家族や地域社会もまた、それぞれの思いを新たにするのです。

    これからの成人式──変わるもの、変わらないもの

    今後、成人式はどのように変化していくのでしょうか。社会の多様化が進む中で、開催日や内容、参加のスタイルはますます多様になることが予想されます。オンラインでの式典や、地域色を前面に出した企画、さらにはジェンダーや多文化共生に配慮した取り組みも増えていくでしょう。

    しかし、その根底に流れる「大人になることを社会全体で祝福し、自覚と責任を促す」という精神は、これからも変わらないはずです。形式は変わっても、人生の一大イベントとしての重みは失われません。

    成人式は私たち一人ひとりの「人生の節目」であり、社会が次世代に託す希望そのものです。伝統と革新が交錯するこの行事が、これからも多くの人にとって特別な日となることを願っています。

    #成人式#成人の日#はたちの集い#振袖#スーツ#袴#成人年齢#通過儀礼#人生の節目#日本文化#伝統行事

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    丙午(ひのえうま)の年とは何か――迷信が社会を動...

    記事サムネイル

    「片づけの魔法」のメカニズム――なぜ、部屋を整え...

    記事サムネイル

    太陽光発電の功罪――導入するメリットと見過ごされ...

    記事サムネイル

    Mr.ビーンを演じた男、ローワン・アトキンソンと...

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI