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2025

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    経営観を教えてくれた優良申告法人会の出会い

    #12経営観を教えてくれた優良申告法人会の出会い

    原石からダイヤへ

     優良申告法人として表敬されたことは、私のビジネスにとっても大きな転機となった。それを通して、様々なつながりが生まれたからだ。

     昭和50(1975)年、渋谷優良申告法人会がスタートした。すると当時の税務署長から「制度ができ、渋谷も100社くらいになったので、優良申告法人会という会を作るから、年齢も若い八木原さんに役員をやってもらいたい」と打診を受けたのだ。最初は、何もわからず末席に加わらせていただいた。

     その時の会長は、イワキメガネの創業者・岩城二郎さんだった。当時の年齢で84歳とご高齢だったのだが、岩城さんからはたくさんの教えを受けた。経営者としての数字の捉え方や、小売店経営の基本となるさまざまなノウハウを教えていただいた。

     優良申告法人になった縁からファッション業界以外の先輩方との交流ができ、そこからお金の使い方や経費の使い方、また利益の上げ方などを学んだ。彼らは非常に堅実な経営をされていたのだ。そういうものがどれだけ大切なのかということを、彼らの付き合いを通して身に染みて理解することができたことは、その後の人生に大きな影響を与えたのではないかと今にして思う。つまり私にとって、渋谷優良申告法人会は経営実務を学習する場でもあったのだ。

     そのような経験を経て平成15(2003)年には、私は渋谷優良申告法人会の3代目の会長に就任した。最初は役員の末席に身を置き下積みの仕事をしていただけだったが、理事となり、そのうちに副会長となり、前会長から指名されて会長を務めた。

     ファッション業界は人の入れ替わりが激しく、流行になるのも早ければ潰れるのも早い。私はそこにずっと疑問を抱いていたのだが、その答えは優良申告法人との交流から見えた。経営の難しさや厳しさなどのポイントを勉強させていただき、企業内での内部留保を高め、目先の売り上げを追わずに資金力を高めていかなければ事業は継続しないという考えを固めた。これも、岩城さんからご指導いただいたことだ。今や、私の事業の原点となっているといっても過言ではない。

     私がもし、税務署から評価を受けて優良申告法人として表彰されていなかったら、有頂天になって成功を台無しにする未来もありえた。事実、ファッション業界で優良申告法人になったのは、渋谷では3社ほどしかない。堅実な先輩方と知り合えたことで、地に足のついた経営観を持つことができたことは、私にとってとても幸運な出来事だったと思う。

     またアパレルとしてトレンドを追うばかりではなく、しっかりとした理念を持って会社経営をしていかなければ企業として持続していけないという考えは、企業は地域に根差した発展をしていくべきだという意識にも結び付いていると思う。先にも述べたことだが、地域のことは地域に住んでみなければわからない。自分たちの街だという意識があるからこそ美化や防犯へ、また地域の発展へといった意識にもつながるのだ。原宿でさまざまなブームを仕掛けたのも、そのような意識があってのことだ。

    #ジム#八木原保#ニット業界#経営#ファッション業界#ニットメーカー
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