
「時代のあだ花」で終わるか、スタンダードへと昇華...
7/3(木)
2025年
SHARE
設楽 洋 2025/06/30
私は、来年のビームス50周年を見届けたら、後進に譲り、自分は社長を退任しようとずっと前から決めてきました。今は、社長ゆえの“雑務”がものすごくあります。中には名誉職のような、社を代表しての会合や行事への参加といった仕事もあります。もちろんそれらは社長の役割として大切な仕事ではあります。しかし、そういったものはある程度後進に譲って、本当の意味で、ビームスが取り組んでいる『ハッピーを作る』ことに、アドバイスできるようになりたい、という想いがあります。
僕がスタッフによく伝える言葉に、「AIより愛」ということがあります。これからいよいよAIの時代になってきたという中で、いかにしてこれを具体的に伝えていくか。僕は、感性と美意識があれば、人間はAIに追いつかれないと思っています。これからそれをどのようにして大切にするかということを伝えていきたいし、ずっとそれを考えていきたいと思っています。
僕は以前も述べた通り、直感型の経営者ですが、今後、この直感がもっと重要になる時代が来るのではないかと思っています。それは、マネジメントや数字、データといったものは、AIが正解を導き出す時代になるからです。そのときに重要なのが、鋭い『直感』です。AIが何かを返してきたとしても、「ここは違うのではないか」というように嗅ぎ分けていく嗅覚が非常に重要となるため、僕自身もここを追求していきたいと考えています。
僕のビームスにかける夢は、「世界一みんなを笑顔にする会社」というものです。ビームスという集団の仲間になりたいという人たちが、社員ではなくても、いろいろな形で増えていき、どんどん増殖していくといいと思います。それによって新しいビジネス、新しいハッピーが出来上がっていく。『ビームスに来れば何かが起こる』という集団になりたいのです。
また引退後は、僕個人の夢である、今まで出来なかったクリエーションに割く時間を作りたいと思っています。自分の作業部屋のような場所に閉じこもって、ゴチャゴチャした中で何かを作る。小さい頃から、そういうことが大好きでした。親から「入っちゃいけないよ」と言われていた隣の工場から、ダンボールと輪ゴムを拾ってきて、おもちゃを作ったりしていました。そういうことを、またこれからやってみたいと思っています。何かを作る、絵を描く、写真を撮るといった具合に、クリエーションに関わることをしていきたい。そこから、何か新しいことへのヒントが生まれるかもしれません。
これからどんどん年齢を重ねていく中で、心は童心にかえり、当時の工場のような場所に忍び込むのです。それはそれで、凄い喜びだなということを、ささやかな夢として考えたりもしています。そこから、悟ることもあるのではないかと思います。「AIより愛」に向けても、何かが見つかるかもしれません。
また、新宿のビームスジャパンには「Bギャラリー」という小さなギャラリーがあります。50周年記念イベントの最後に、そこで『設楽洋コレクション』を開催したいと思っています。まだ構想中ではありますが、もし実現すればギャラリーに自分のコレクションを展示するイベントを開催し、そこには写真や絵、模型、ずっとコレクションしているものが一堂に会することになります。
そんなビームスに託した夢と、僕個人の夢をこれからは叶えていく人生にしていきたいと、今から考えています。
30回にわたる連載も、これで最後となります。これまでお読みいただきありがとうございました。最後に、私が日常の中で発見してビームス社員へ伝えてきた言葉、通称「タラちゃん語録」と、かつてビームスが40周年を迎えるタイミングで、スタッフへ向けてのメッセージをしたためた「NEXT BEAMS」より、一部の言葉をご紹介して、本連載の締めくくりとさせていただきます。
「努力は夢中に勝てない。」
「直感はデータで検証し、データは直感で疑え。」
「AIより愛」
「NEXT BEAMSの掟10か条」
1 接客のプロになるのは、当然だ。集客のプロになれているだろうか。
2 「売る人」から、「仕掛ける人」へ。BEAMSは、発信者集団になれているか。
3 カッコよく着るだけじゃなく、カッコよく生きているか。
4 アップルストアより、ディズニーランドより、行きたい場所か。居たい場所か。
5 成功したら、ヒーロー。失敗しても、チャレンジャー。挑戦を楽しんでいるか。
6 売れてるものを、売っていないか。売りたいものを、売っているか。感動・感激・感謝を売っているか。
7 学校で、会社で、街で、Twitterで、Facebookで、BEAMSは、ウワサになっているか。
8 店のベテランになっていないか。街のベテランになれているか。
9 丁寧なだけがサービスか。買ってもらうだけがセールスか。接客にこそ、心を動かすアイデアが必要だ。
10 今日のBEAMSは、昨日のBEAMSを超えているか。
MORE HAP, MORE LEGEND.
BEAMSの成功の歴史は、
優れたHAPを生み出し続けた歴史。
あなたたちの創る、ひとつひとつのHAPが、
新しいBEAMSの歴史、伝説となる。