
ビームスにかける夢、僕自身の夢
7/2(水)
2025年
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設楽 洋 2025/06/29
ファッションというジャンルにおいては、これまでは「トレンド」という言葉がものすごく重要視されてきました。ファッションやアートをはじめ、さまざまなものに対して、トレンドというものがあります。ただ、50年近くこの業界でやっていると、トレンドであったものが廃(すた)れていったり、あるいはトレンドであったものの要素が少しずつ残って、次の文化を形成したり、ということが見えてきます。僕自身は、トレンドではなく『カルチャー』を作りたいと考えています。トレンドがカルチャーになる瞬間を、見たいのです。
トレンドには、一瞬の「時代のあだ花」というべきものもありますが、中には時代を超えて残っていくものも、必ずあります。それは、50年間原宿を見ていると、すごく面白いものです。例えば「時代のあだ花」でいうと、ローラー族やタケノコ族、ゴスロリ、ギャル文化…といったものがたくさん生まれては、消えていきました。
しかし、若い頃にギャルを経験した人は、30代、40代になっても必ずその要素がどこかに残っている、ということは往々にしてあります。例えば、ビームスではさまざまなスタイルを発信しているので、僕自身モード系のものも着れば、イタリアンな服も着ることがあります。ただ、僕自身は幼い頃からアメリカに憧れ、洋楽や洋画で育ってきました。すると不思議なことに、どんな装いでも、僕が着るとどこかアメリカらしい要素が出てくるのです。思春期にトレンドに触れ、それに染まったとき、それはそのままどこか、その人の中に残っている、ということです。これは、世の中全体でもそういった現象は必ずあるだろう、と思います。
それこそが、トレンドがカルチャーへ、あるいは新しいスタンダードへと昇華する瞬間なのです。そこが、時代の変わり目です。その瞬間を、ビームスが提案したいと考えています。トレンドからカルチャーになり、スタンダードになった時、新たなライフスタイルが生まれます。できることならば、明るくて楽しい社会現象、スタンダードを作ることに、貢献できたらいいなと思います。
少し話はそれますが、よく「昔は良かった」などと言われることがありますが、現代社会には、昔にはなかったさまざまな規制が存在しています。これは、時代によって変わるのは当然のことだと思います。その中でも面白いと感じているのが、これまでのファッションを含むカルチャーというのは『真っ当と不謹慎の境目』で生まれてきたということです。だとすると、そのギリギリの境目を狙うと、新たなカルチャーを生み出していけるとも言える。ただし、その境は、時代によって変わります。こういったことを見極めるのが、とても難しくて面白い。今、真っ当と評価されているものだけを扱うのであれば、ビームスでなくてもいいのです。
例えば、世の中を見れば、真っ当な良いものもあれば、「少しやりすぎかな」と感じるものもあります。ビームスは、そのちょうど境目のところに「面白さ」を見出してきた。その時代に合わせて、「今は、このへんだよね」ということをやれるのが、ビームスなのです。このスタンスが、新しいスタンダードを作っていくためには、すごく大切だと思っています。
時代によって、それぞれのギリギリのラインは変わります。すべての人がいいと思うようなものは、なかなかファッションで実現することは、難しい。だからこそ、どこへ基準を置くのかということが、非常に大事なポイントなのだと思います。
写真引用元:
https://r100tokyo.com/curiosity/in-this-place/211001/
https://www.shibuyabooks.co.jp/post/974/
https://harajuku-pop.com/83385/
https://jp.pinterest.com/yuna2671/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%AB/
https://vancouver.keizai.biz/headline/1228/