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2025

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    現在、そして未来の頑張る人たちに向けて

    #30現在、そして未来の頑張る人たちに向けて

    原石からダイヤへ

    今、頑張っている多くの人たち、特に若い世代に向けて伝えたいことがあります。現在世の中には、「こうすれば成功する」といった、マニュアルのような情報が溢れています。それらは、受験、恋愛、就職活動、資格取得、ビジネス…などさまざまな場面で使われています。

    しかし、どの時代においても、本当に生き生きと輝いてきた人たちが実践してきたのは、たった一つの「公式」です。それは、「自分で考え、自分で決め、挑戦し、壁にぶつかり、それでもまた立ち上がる」。この繰り返しに他なりません。

    他人のアドバイスに耳を傾けることも時には必要ですが、根本にあるべきは、自分の心の声です。自分の感覚を信じ、自分の頭で考え抜き、判断する。自分自身にだけは嘘をつかず、その信念を貫き通せば、きっと豊かな人生を歩んでいけるはずです。

    どこかから借りてきた価値観や、他人の評価基準に自分を合わせようとするから、「自分は一体、何をやっているのだろう」と道を見失ってしまうのです。根本にある、自分の感じることや、大事にしていることを、明確にし、丁寧に続けていけばいいのです。正解などありません。どう生きるかは、一人ひとりの自由です。

    つい他人の能力と比べてしまいがちですが、完璧な人間などいません。能力なり、環境なり、誰にだって足りない部分はあるのです。大切なのは、そこを嘆くのではなく、自分が持っている強みを見つけ、それを活かして「楽しい」と思える領域で勝負することです。

    自分にないものを嘆き続けるのではなく、今あるものに目を向けることです。自分に配られた「持ち札」が何かを正確に見極めれば、誰にでも勝負できる土俵は必ずあるのです。

    私自身は、人からよく「話がうまいですね」と言われます。高校時代、生徒会活動で発言するたびに「君は政治家になった方がいい」と勧められたほどです。しかし、当の本人には全くその自覚がありませんでした。しかし今では、それが自分の強みの一つだと認識し、この力を活かせることを楽しんでいます。

    結局のところ、人生は、自分の中の強みを見つけて、活かしながら楽しんだ人の勝ちなのです。そう、楽しむ。それは決して、年収の差で決まるものではありません。必要な分だけ稼ぎ、あとは自分の心が喜ぶことに時間を使う。これ以上に幸せなことはないでしょう。

    話は変わりますが、私の今の夢についてお話しさせてください。それは、私の周りにいる人たちの才能が、花開く瞬間を見届けることです。

    それはまるで、植物を育てる感覚に似ています。どんな花が咲くか分からないからこそ、「おお、こんな見事な花を咲かせたか」という驚きと喜びがあるのです。かつて吉田松陰が松下村塾を開いたのも、きっと同じような想いからだったのかもしれません。私の人生も坂の向こう側が見えてきた今、次の世代の若者たちにどれだけのものを手渡せるか。彼らが活躍する未来に夢を馳せながら、日々を過ごしています。

    そして、夢とは別に、組織のリーダーとして向き合わなければならない大きな課題が「継承」です。どんな組織も、大きくなるにつれて官僚化し、事なかれ主義が蔓延する危険性をはらんでいます。

    先日、まさにその課題を突きつけられる出来事がありました。ある教室長が、「中学生は部活動が始まるとすぐに辞めてしまう。生徒数が減るマイナスの評価につながるから、最初から入会させない方がいい」と考えていることが分かったのです。

    その報告を聞いた時、私は愕然としました。かつては課題を抱えながらも成長し、一人前になったと信じていた社員が、自分の評価を守るために、子どもたちの機会を奪おうとしていたのです。そこには、生き生きとした教育者の姿はありませんでした。

    なぜ、こうなってしまったのか。組織が大きくなる中で、どうしても生まれてしまう淀みのようなものかもしれません。これを防ぐために、私は4年ほど前から、花まる学習会の教室長全員にインタビューをしています。そこで聞いた話を「高濱がタコ(他己)紹介します」と題して、毎月の会員向けのおたよりで紹介するのです。「あなたのお母さんを紹介してください」や「一番熱中したこと」など、テーマは様々ですが、インタビューを通して、社員一人ひとりの人間味あふれる魅力に触れる時間は、私にとってかけがえのないものです。

    件の教室長とは、まさにそうしたコミュニケーションが途絶えてしまっていたのです。私はそのことを深く反省しました。人を放置すれば、組織は淀んでしまう。常に息吹を吹き込み続けなければならないのだと、改めて痛感しました。

    数年に一度、全社員と10分ずつでも話す時間を作る。それは決して不可能なことではありません。これからも続けていこうと思います。

    私たちの現場の多くは活気に満ち溢れています。子どもたちと向き合う社員たちが、幸せそうに、そしてやりがいと誇りを持って仕事に取り組んでいる。その光景は、私にとって何物にも代えがたい「良い眺め」なのです。

    この「良い眺め」を守り、そして未来へ広げていくこと。それが私の原動力であり、この連載を通して、皆様にお伝えしたかったことの核心かもしれません。

    さて、これにて30回にわたり綴らせていただいた連載は終了となります。 長きにわたりお付き合いいただき、誠にありがとうございました。連載はここで一区切りとなりますが、私もまだまだ挑戦を続けていきます。願わくは、これを読んでくださった皆様一人ひとりが、ご自身の人生という舞台で、生き生きとした時間を紡いでいかれますように。

    ― 終 ―

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