「お利口さん」より「若者、馬鹿者、よそ者」を
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#21「金太郎飴」組織に見る成長なき同調圧力の正体
浅見 隆 2025/11/21
私は常々、個人の成長、会社の成長、そして日本の国の成長の鍵は、「イノベーション」と「モチベーション」にあると申し上げてきました。しかし、多くの日本企業を見てみると、イノベーションが決定的に起こりにくい、根本的な構造問題を抱えています。
それは、組織が極めて同質性の高い構成員で占められていることだと、前回も述べました。
私が研修顧問を務めたある大手企業(O社)でのことですが、部長や次長クラスが40人ほど集まる研修がありました。そこで私はいつも3つの質問をします。「この中に、外国籍の方はいらっしゃいますか」「女性の方はいらっしゃいますか」「転職でこの会社に入られた方はいらっしゃいますか」。答えはすべてゼロでした。
彼らは関西の優秀な大学を出てO社に入社したエリートたちですが、見事に「金太郎飴」なのです。AさんもBさんもCさんも、同じようなスペック、同じような入社経緯、同じ日本人、同じ男性、同じ生え抜き。こういう環境の中では、イノベーションは起こり得ません。
対照的に、私がマネジメントを担ってきたアメリカのグローバル企業では、10人の会議にアメリカ人しかいない、などということは一度もありませんでした。そこにはメキシコ出身者もいれば、フランスやイタリア国籍の人もいる。多様性があるのが当たり前なのです。もちろん、女性がマネジメントで大きな位置を占めていることも言うまでもありません。
「生え抜き」という言葉自体が、典型的な日本的発想でしょう。一つの会社に30年勤めることが悪いとは言いませんが、皆がそうである必要はありません。
スポーツの世界を見れば明らかです。例えば、メジャーリーグのドジャースは、9人のうちアメリカ国籍の選手は2、3人しかいないかもしれません。彼らはアメリカ人を選抜しているのではなく、ただ「勝つため(良い成績を出すため)」に、国籍を問わず最高の人材を雇っているだけです。その結果がたまたま日本人であったり、中南米出身者であったりするに過ぎません。
日本もこの文化を本気で取り入れなければ、世界から完全に取り残されてしまいます。
日本の成功者と呼ばれる方々の多くは、もちろん優秀なのですが、私から見ると、「決められた世界の中」で成長し、出世し、功績を残してきた人が極めて多いように感じます。それは悪いことではありませんが、それでは「井の中の蛙(かわず)」となり、マクロで広い視点を持った本当のイノベーションは起こせません。
さらに根深いのは、会議における「同調圧力」です。
日本のミーティングでは、とんでもないことを言わない傾向があります。上の人が「Aだ」と言ったら、部下は「Zだ」とはとても言えず、せいぜい「Aダッシュくらいの意見」しか言えません。これではイノベーションは起こらないのです。
私が日本IBMの研修で経験した「ボールド・アイデア・セッション(大胆な意見を出す会議)」や、私自身がマネジメントで常に求めてきた「アウト・オブ・ザ・ボックス・アイデア(箱の外のアイデア)」のように、あえて非常識と思われる意見をぶつけ合う場が必要です。常識的な話の中からは、イノベーションは生まれないのです。
「日本人だけ、男性社会、そして生え抜き」。この同質性の高い壁を意識的に壊していかない限り、日本企業が世界で再び大きく成長する可能性はなくなっていくのではないか。私はそう強く危惧しています。


