変化の時代を生き抜くための3つの原理
SHARE
#22「お利口さん」より「若者、馬鹿者、よそ者」を
浅見 隆 2025/11/22
イノベーションは具体的にどうすれば起こせるのでしょうか。それはもちろん、多様な経験を持つ人々が「アウト・オブ・ザ・ボックス(箱の外の)」アイデアを出していくことに尽きます。
私は、そのために必要な人材を、分かりやすく「若者、馬鹿者、よそ者」という3つのタイプに分類しています。
一つ目の「若者」とは、単に年齢が若いということではありません。社会で次々にアップデートされていく新しいトレンドや価値観を捉えられる、「若い感性」を持っているかどうかです。
二つ目の「馬鹿者」とは、本当の愚か者という意味ではありません。常識破りな、それこそ「アウト・オブ・ザ・ボックス」な発想ができる人物です。周りがみな「Aだ」「Aダッシュだ」と言っている時に、「いや、私はZだと思います」と主張できるような、破天荒で非常識とも思える感覚を持った人間です。
三つ目の「よそ者」とは、文字通り外部の視点です。多くの企業は、社内という「うちの中」だけで議論を完結させてしまいます。しかし、Aという企業の中から見る景色と、外から見る景色はまったく違う。その外部の感覚をもっと取り入れなければ、イノベーションは生まれません。
私は顧問先の会社でよくこう尋ねます。「あなたの会社に、今言った『若者、馬鹿者、よそ者』がどれくらいいますか?」と。
すると、驚くほど「いない」のです。日本の企業に多いのは、真面目で、成人化された「お利口さん」たち。会社のために長いこと頑張ってきた、貢献度の高い人たちです。
もちろん、過去の貢献は重要です。しかし、我われにとって重要なのは過去ではなく、これからどうしていくかという「未来」です。過去を惜しんでばかりいては、将来が見えなくなってしまいます。その将来をより良くするためには、「若者」の感性、「馬鹿者」の発想、そして「よそ者」の知見が絶対に必要なのです。
私自身、コダック、スポルディング、ジョンソン・エンド・ジョンソン、レブロンと4つの会社を経験しました。それはまるで、それぞれ校風の違う4つの学校に行ったようなものです。一つの学校で学び続けることも良いですが、多様な環境に身を置いたことで、私の視野は格段に広がりました。多様性がなければイノベーションは起こらない。この「若者、馬鹿者、よそ者」という感覚こそが、日本企業が抱える同質性から抜け出す鍵なのです。
これは単なる思いつきの理論ではありません。私が現役の社長時代から社員に対し、そして現役を退任してからも顧問先に対し、一貫して力説してきたことです。
昨日も拙宅に来てくれたレブロン時代の元部下たちと話をしていたのですが、私が辞めて10数年経った今でも、「社長はいつもこう言っていましたよね」という言葉が出てきます。
なぜ彼らが覚えてくれているのか。それは、私がメッセージを「極めてシンプル」にし、「何回も繰り返す」ことを徹底してきたからです。
かつてヒトラーは「大衆は無知である」と言いました。これは頭が悪いという意味ではなく、「大衆は複雑なことをなかなか理解できない」という意味です。だからこそ、「シンプルで分かりやすいことを何回も繰り返すこと」が重要だと彼は説き、その手法で(悪い方向にではありますが)大勢の大衆を動かしました。
私は国を率いてきたわけではありませんが、会社という組織においても、伝えるメッセージが極めてシンプルで、かつ納得のいくものでなければ、人の心には届かないと確信しています。


