報告書では見えない本音――私が店舗の普通の店員と...
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#26「伝統への反旗」こそ成長の源泉
浅見 隆 2025/11/26
トップ・マネジメントには「リーダーシップ」と「マネジメント」の2つが必要ですが、この2つは根本的に役割が異なります。
「マネジメント」とは、もともと『Manage(管理する)』という言葉の通り、会社で日々起こる複雑な状況をうまくまとめて対処することです。これはどちらかといえば管理的な仕事であり、時間をかけて学べば、多くの人ができるようになる類のことです。
しかし、「リーダーシップ」は違います。私が定義するリーダーシップとは、すなわち『Make Change(変化を起こす)』こと。そして『Create Followers(フォロワーをつくる)』ことです。これから起こるであろう地球や国、会社の変化に自ら対処し、牽引していく。それこそがリーダーシップの本質です。
なぜ「変化」がそれほど重要なのか。それは、イノベーションがなければ企業の成長はないからです。マネジメントだけを徹底しても、100億円の会社は今年も来年も100億円のままかもしれません。私の信条は「継続的利益のある成長」ですから、成長を達成するためには、リーダーが先頭に立って「変化」を起こし続けなければならないのです。
私がスポルディングの社長を務めていたとき、まさにこの「変化」を決断した経験があります。
当時の主力事業は、ゴルフボールやテニスラケットといった「ハードグッズ」の販売でした。しかし、この事業をいくら精緻にマネジメントしても、売上100億円のまま停滞してしまうだろうということが見えていました。これを140億、150億へと成長させるにはどうすべきか。
私は、事業の舵を大きく「ライセンスビジネス」の方へと切ることを決断しました。スポルディングというブランドを使い、シューズやアパレル、スポーツウォッチなどを展開する事業です。当時は20億円程度の規模でしかありませんでしたが、これこそが時代の変化に対応する道だと確信し、リソースを集中させました。
結果として、会社は140億円規模にまで成長し、非常に高収益な体質へと生まれ変わることができました。これは、私が起こした「変化」のアクションの一つだったと自負しています。(今思えば、ライセンス売上のパーセンテージを私がもらう契約にしておけばよかった、と思うほどです。冗談ですが。)
なぜ私がそれほど「変化」にこだわるのか。それは理屈や学問以前に、私のDNAに組み込まれている感覚なのかもしれません。
私は若い頃から、良い意味でも悪い意味でも「伝統に反旗を翻す」ような部分がありました。幼少期に貧しかったことも影響しているかもしれませんが、人が「すごい」と称賛することに、素直にうなずかない。少し裏から物事を見てしまう「反骨精神」のようなものが、性格的にあるのです。
悪く出れば「ひねくれ者」や「嫌なやつ」だと思われたかもしれませんが、私自身は温厚そうに見られながらも、心の奥では「今やっていることとは違うことをやりたい」という意識が常にありました。
その精神は77歳になった今も変わりません。先日、顧問を務めることになった27歳の社長に、私はこう尋ねました。「私はあなたの孫と娘の間くらいの年齢だが、大丈夫か」と。彼は「年齢は関係ない」と言ってくれましたが、私はこう釘を刺しました。
「私も年齢は関係ないと思うが、判断基準は“Pay for performance(成果主義)”だ。私があなたの期待するパフォーマンスを出せているかで、顧問を継続するか決めてほしい。ゴマをすってまで顧問でいたいとは思わない」と。
自分の考え方を表現し、パフォーマンスで勝負できるうちは、年齢に関係なく意気揚々と生きていける。そう思っています。
とはいえ、私もそろそろ「店じまい」を、と考え始めていたところでした。しかし、昨日一本の電話をもらい、その考えが吹き飛びました。
相手は、リクルート創業者・江副さんの奥様である江副碧(みどり)さん。彼女はなんと89歳にして、株式会社海洋化学の現役社長を務めているというのです。
正直に言うと、私は昔話ばかりする「年寄り」があまり好きではありません。私ももう年寄りですが、そこには楽しさを見出せない。しかし、89歳で現役バリバリ、車の運転までこなし、スピーキングもヒアリングも全く衰えていない彼女を前に、「バケモノじゃないか!」と衝撃を受けました。
「そろそろ店じまいを、と思っていたところにそんな話を聞かされたら、あと12年(彼女に追いつくまで)は頑張らないといけないですね」。江副さんにはそうお伝えしました。本当にすごい人がいるものです。彼女から、とてつもない刺激と元気をもらいました。


