精神論では会社は変わらない。「マインドセット」と...
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#14「能書きは要らない」——私が日本企業に“知行合一”を説く理由
浅見 隆 2025/11/14
企業革新を実現するためには、「マインドセットの変革」と「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」が不可欠です。
精神論も重要ではありますが、「頑張れ」「諦めるな」といったマインドだけでビジネスが成功するなら、こんなに簡単なことはありません。まず、凝り固まった考え方そのものを変革しなければなりません。
そして同時に、ビジネスのプロセスを再構築する必要があります。これがBPRです。我々は結果をコントロールすることはできませんが、プロセスはコントロールできます。日本の多くの企業は結果に一喜一憂しがちですが、結果をもたらすのはプロセスです。プロセスが良ければ、結果は必ずついてきます。「プロセス・エクセレンス(卓越したプロセス)」を追求することこそが重要なのです。
私はレブロン時代、社員のマインドセットを変えるために、あえてワンワードやツーワードといった短い表現を好んで使いました。長い言葉は、誰も覚えていないからです。
その一つが「Better than yesterday(昨日より良く)」です。常に昨日より今日を良くしていこう、と。もう一つが「早く、速く」です。これは、早めに着手する「早く(Early)」と、実行を迅速に行う「速く(Quick)」の二重の意味を込めています。
そして、「知行合一(ちこうごういつ)」。もともとは儒学の言葉ですが、「知っていることは、行わなければ意味がない」ということです。
なぜ、このようにシンプルな言葉を繰り返したのか。それは、私のロジックが「大衆は無知である」という前提に基づいているからです。これはヒトラーが用いた手法と同じで、シンプルなことを効果的に、何回も伝えることが大衆を動かす唯一の方法です。私はこれを批判的に活用しているのです。長く小難しい演説をしても、誰も覚えてはいません。「早く、速く」「Better than yesterday」「知行合一」——こうした言葉を繰り返し伝えることで、社員の頭に刷り込んでいきました。
特に「早く、速く」は、アメリカのグローバル企業で学んだ経験が色濃く反映されています。日本には、能書きは立派でもアクションが遅い人が多い。しかし、アメリカのビジネスは違います。能書きは要らない。「Show me the money(金を見せろ)」です。「お前の計画は立派だが、それで来月いくら稼げるんだ?」と、常にキャッシュフローを問われます。
そして何より、決断のスピードが違います。日本の企業では、社長が専務に、専務が部長に、と稟議を上げて検討する「合議制」が主流です。
有名な話があります。あるグローバル企業のトップが日本の社長との会議で、「我々の意見はこうだ。どう思うか?」と尋ねたところ、日本の社長は「ちょっとお時間いただけますか」と答え、部下全員を引き連れて会議室を出ていき、30分後に戻ってきて「我々の意見はこうです」と答えたというのです。
外資系では考えられない光景です。トップに振られたら、トップがその場で答えなければなりません。「基本的にはこれでいく。ただし、ここの部分だけは検討して追って連絡する」といった即答が求められます。
私の妻は、トランプ大統領を見て「あんな人じゃ困るわよね」と言っていましたが、私は「何言ってるんだ。アメリカの会社のトップなんか、あんなのが何人もいるんだぞ」と答えました。「よく頑張ってきたわね」と返されましたが、まさにその通りなのです。
外資系企業の意思決定は、マル(○)かバツ(×)かが即座に出ます。日本の企業のように、何日もかけて検討した結果が「三角(△)」だった、というような曖昧さはありません。私も性格的に「またいつか会いましょうね」という曖昧な返事はせず、「それは難しいです(×)」か「早速来週やりましょう(○)」か、その場で決めるようにしています。


