「能書きは要らない」——私が日本企業に“知行合一...
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#13戦略の本質とは「切り捨てる勇気」
浅見 隆 2025/11/13
私は今、大げさではなく「このままでは日本はまずい」という強い危機感を持っています。日本企業そのものが、弱体化しているとひしひしと感じるからです。
例えば、私が顧問を務める会社には売上2,800億円・社員4,000人規模の企業や、1,000億円・社員1,600人規模の企業がありますが、そうした規模であっても、世界と戦う上ではまだ「弱い」と感じてしまいます。だからこそ、企業が経営の基本的なことを理解し、より精鋭的に物事に対処していかなければ危ない。
そうした考えを、顧問先や日本能率協会などで20年近くにわたり伝え続けています。日本の会社の現状を見ていると、時にイライラするような気持ちになることさえありますが、彼らを「鍛える」ことこそが、今の私の楽しみでもあるのです。
私のキャリアは、いわゆるオーソドックスな経営者とは少し観点が異なるかもしれません。私は過去を振り返るのがあまり好きではなく、「Yesterday is history(昨日は歴史)」という考え方です。変えられない過去より、もっとエッジの効いたことを表現していきたい。その核となるのが「戦略」です。
マイケル・ポーターの3つの基本戦略(コスト・リーダーシップ、差別化、集中化)は有名ですが、私はこの考え方が好きで、特に「圧倒的な差別化」と「圧倒的な集中化」を、自らのビジネスで実践してきました。
戦略の定義は様々ですが、私は戦略とは「差別化」であり、突き詰めれば「切り捨てること」だと考えています。絞り込んで、集中させる。しかし、多くの人はこの「切り捨てる」ことができません。すべてが大事だと思ってしまうのです。
「すべてが大事」というのは、「何も大事ではない」のと同じことです。「Everybody's friend is nobody's friend(みんなの友達は誰の友達でもない)」という言葉のように、何かを切り捨てなければ、絞り込むことはできません。多くの人が、この単純な事実に気づいていないのです。
例えば、重要な仕事が10個あったとして、「全部重要で、せいぜい9番目と10番目しか切り捨てられない」というのでは、戦略とは呼べません。10個すべてが重要だと理解した上で、あえて「この2番と3番だけに集中的に取り組もう」と決める。これが戦略です。レオナルド・ダ・ヴィンチのような天才ならすべてをこなせるでしょうが、私たちはそうではない。だからこそ、あることに絞り込まなければ、深く進むことはできないのです。
この考え方は、例えば「人脈作り」でも同じです。パーティーで多くの人と名刺交換をし、「今日は10人の素晴らしい人に会った」というだけでは、人脈は作れません。
私は、会った人の中で「この人は面白い、もっと話を聞きたい」と思ったら、必ず1対1のランチミーティングを企画し、2時間ほど深く話し込みます。例えば、私が所属するロータリークラブには190人のメンバーがいますが、その中で顔を合わせた、ある会社の社長である栢木(かやき)さんという方とランチミーティングをしました。彼はALSOKの社長ですが、「うちのような小さな自宅にALSOKを入れたらいくらか」と尋ねたことがきっかけで、実際に自宅に導入することになりました。こうした関係性があるからこそ、次の話に繋がるのです。
190人の名簿から一人を選んで連絡しても、なかなか繋がりはできません。つまり、私の人脈作りも「集中化」と「絞り込み(選択)」、そして「切り捨て」なのです。190人全員と付き合うことは不可能です。素晴らしい方ばかりですが、その中から自分の心に響く人、一緒にいて楽しいと思える人と関係を深めていく。
「この人だ」と思ったら必ず1対1で食事をするか、あるいは私の拠点である高崎に呼んだりもします。そうすることで、親密さが一段階深まるのです。
これこそが、ある意味での「戦略」です。マイケル・ポーターやジョン・コッターなど、様々な戦略論がありますが、結局のところ、この「絞り込み(選択)と集中」、そして「切り捨てる勇気」こそが、物事を前に進めるための一つの大きな要点であると、私は考えています。


