パーソナリティの核心――世界のVIPに「もう一度...
SHARE
#24サッチャーを変えた「声」の戦略――勝敗を分けるパーソナル・ブランディング
植山 周一郎 2025/12/24
パーソナル・ブランディングを世界で最も意識しているのはアメリカ人でしょう。特に大統領選挙において、これは最重要課題です。候補者が自身のイメージをどう構築し、どう伝えるか。専門家の分析に基づき、戦略的に自分を演出しなければ勝負になりません。
私が提唱するパーソナル・ブランディングには大きく3つの柱がありますが、まずは1つめの「外的要素」からお話ししましょう。
「外的要素」の一つが、「視覚的な信号」です。服装、表情、視線、そして笑顔がナチュラルで感じが良いか。髪型を含め、目から入ってくるあらゆる情報をいかに最大限に好感の持てるものにするか。これは、私たちが思っている以上に大切です。
「外的要素」のもう一つは、「聴覚的な信号」です。耳に届く声の大きさ、質、滑舌。そして、自分の言葉にどれだけ配慮しながら話せるか。私が10年間お仕えしたマーガレット・サッチャーさんは、まさにこの「聴覚的な信号」を武器にした人でした。彼女はゆっくり、はっきり、大きな声で自信を持って話す。それが選挙民の心に深く響いたのです。
実は、彼女も若い頃は、甲高い声で早口にまくしたてるように話していました。しかし、それでは思いが伝わらず、一度は落選を経験しています。そこでアドバイザーから「もっとゆっくり、トーンを低くして話しなさい」と助言を受け、彼女はそれを忠実に実行しました。
「I am Margaret Thatcher. I am very happy to meet you.」
落ち着いた低い声で、自信に満ちた話し方に変えたことで、有権者は彼女の政治哲学を100%理解できるようになり、ついに当選を果たしました。パーソナル・ブランディングの成否が、政治家としての運命を分けたのです。
これはビジネスやプライベートでも全く同じです。周囲から「あの人は感じが良い」「親身になって話を聞いてくれる」と思われる人は、パーソナル・ブランディングが上手い。必然的に信頼が集まり、チャンスも増えていきます。しかし、残念ながら日本の教育現場では、この極めて重要な技術が完全に無視されています。
そして、外的要素に加え、2つ目の大きな柱が「内的要素(内的資質)」です。
いくら外見や声を整えても、中身が伴わなければ意味がありません。自分の心の中に、揺るぎない人生哲学や経営哲学を持っているか。深い思索を繰り返し、自分なりの意見を確立しているか。そして、幅広く深い知識を蓄積しているか。
「チャラチャラとした軽い人間ではない」という重みは、この内面から滲み出るものです。外側の信号と、この深い内側の信号が合致したとき、初めて強力なブランドが完成します。
次回は、これらに続く「3番目の柱」についてお話ししましょう。


