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「研修は“やった気”で終わっていませんか?」――カークパトリックモデルの活用法
ビジョナリー編集部 2025/08/18
「せっかく研修をやったのに、なぜ現場で活かされないのだろう?」と感じたことはありませんか?この悩みは多くの企業やビジネスマンが直面しているものです。
「本当に効果があったのか?」と疑問を抱きながら、曖昧なまま次の研修を計画していく……。
“やった気”や“満足感”に頼るだけの研修評価では、投資した時間もコストも無駄になってしまいがちです。
そこで注目されているのが、「カークパトリックモデル」です。
カークパトリックモデルとは?
カークパトリックモデルは、1959年にアメリカの経営学者ドナルド・カークパトリックにより発表された、教育・研修の効果測定理論です。
4つの評価レベル
カークパトリックモデルの特徴は、研修の効果を「4段階」で多面的に評価することです。この考え方が、受講後のアンケートだけで終わらない、実践的な効果測定を可能にします。
レベル1:反応(Reaction)
受講者は満足したか? 研修をどう感じたか?
アンケートやヒアリングで受講者の声を集め、満足度や印象を評価します。ここで得られるのは「研修の手応え」や「講師へのフィードバック」です。
レベル2:学習(Learning)
受講者は何を身につけたか?
テストやレポートで、知識やスキルの習得度合いを測定します。たとえ満足度が高くても、学びが定着していないなら良い研修とは言えません。
レベル3:行動(Behavior)
現場で実践されているか?
研修後、実際に職場で新しい知識やスキルが使われているかを観察・ヒアリングします。
「学んだことが行動として現れるか」が、研修の真価を決めます。
レベル4:結果(Result)
組織や事業にどんな成果をもたらしたか?
売上の増加、コスト削減、顧客満足度の向上など、経営指標へどれほど貢献したかを評価します。ROI(投資対効果)の測定もここに含まれます。
なぜ今、カークパトリックモデルなのか?
ある調査によると
- 新入社員研修で「成果があった」と実感した企業はわずか14%
- 管理職研修では10%未満
- 次世代経営者研修では7%未満
という厳しい現状が明らかになっています。
研修は「自己満足」や「儀式」で終わらせてはいけません。カークパトリックモデルが注目される理由は、本当に投資に見合う成長や成果を生み出しているのかを冷静に見極める指針となるからです。
研修効果を最大化するための具体的プロセス
1. まずは「反応」から――アンケートの工夫で本音を引き出す
レベル1の「反応」では受講者アンケートが中心です。ただし、単なる「楽しかった」「分かりやすかった」だけで終わらせないことがコツです。満足度だけでなく、「現場に戻ったら何をしたいか」「活用できそうな内容は何か」といった自由記述を加えると、次のステップにつながるヒントが得られます。
例:アンケート設計の工夫
- 5段階評価+自由記述欄
- 「今後、業務で活かせそうなシーンを具体的に挙げてください」
- 「改善すべき点は?」など率直な意見を促す設問
2. 「学習」の定着を測る――テストやレポートで理解度を可視化
レベル2の「学習」では、知識やスキルがどれだけ身についたかを評価します。オンラインツールやLMS(ラーニングマネジメントシステム)を使えば、テストやレポート提出を簡単に管理できます。
例:レポートの活用
- 研修後、「学んだこと」と「業務でどう活かすか」を記述させる
- レポート内容をもとに、次回の研修設計や現場フォローに活用
3. 「行動」への転移を追う――管理職や現場の協力がカギ
レベル3の「行動」は、重要かつ評価の難易度が高いステージです。「学び」を「行動」に変えるには、現場のサポートが不可欠になります。
例:行動変容の測定
- 研修から3ヶ月~半年後に、受講者・上司へのヒアリングやアンケートを実施
- 行動チェックリストや自己評価シートを用意し、「どの行動が変わったか」を具体的に確認
ここで大切なのは、「管理職を巻き込むこと」です。受講者が学んだことを実践する場や機会を作り、定期的なフィードバックを行う仕組みが効果的です
4. 「結果」の見える化――ROI指標で経営への貢献を示す
レベル4の「結果」では、研修が事業や組織全体にどのようなインパクトをもたらしたかを測定します。売上アップ、コスト削減、顧客満足度向上など、定量的なKPIと結びつけて評価します。
例:ROIの算出
- 「研修前後の売上」「顧客対応数」「クレーム件数」などを比較
- 研修にかかったコストと成果を対比し、投資対効果を算出
ただし、注意すべきは「結果」には研修以外の要因も絡むため、「研修の評価=業績への貢献」と安易に結論付けないことです。レベル3の行動の変化をしっかり捉えることが、実務的には最も現実的で効果的です。
カークパトリックモデルをビジネスで使いこなすために
1. 「評価は最終ゴールから逆算する」――行動・結果を見据えた研修設計を
研修の目的は「学ぶ」ことではありません。「現場で行動が変わり、最終的に業績や組織文化に好影響を与えること」がゴールです。
そのためには、最初から「どのような行動変容を期待するのか」「どんなKPIで成果を測るのか」を明確にして研修を設計しましょう。
現場の管理職や受講者とゴールのイメージをすり合わせることが、実効性ある研修の第一歩です。
2. 「管理職や現場を巻き込む」――フォローアップの仕組みづくり
研修効果の約7割は、「現場のフォローアップ」で決まると言われています。
管理職が受講者の行動を観察し、研修で学んだことの実践機会を提供し、定期的にフィードバックを行う体制を作ることが不可欠です。
「どのようなスキルが現場で必要か」「どのような課題があるか」をヒアリングした上で、研修設計に反映させると現場の納得感も高まります。
3. 「テクノロジーを活用して測定の手間を減らす」――DX時代のスマートな効果測定
ITの進化により、オンラインテストやレポート提出、アンケート回収などが格段に効率化されています。
データを蓄積し、継続的にPDCAを回すことで、研修の質も効果も着実に向上します。
まとめ
カークパトリックモデルは、単なる理論やフレームワーク以上の意味を持ちます。それは「研修=現場の変化=事業の成果」という「つながり」を見える化し、企業や個人が本質的な成長を実現するための羅針盤です。
「やって終わり」から「成果を生み出すプロセス」へ――カークパトリックモデルを通じて本当の変化を手に入れてみませんか?


