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成果主義の罠に陥っていませんか?――ビジネスマンのための成功循環モデル
ビジョナリー編集部 2025/08/20
「今月も数字が足りない」「なぜ自分ばかり頑張っているのか」――そんな焦燥感や疲弊を感じたことはありませんか?
成果を出すために全力投球しているはずなのに、なぜか組織の空気は重くなり、誰もが口をつぐみがち。その結果、業績も思うように伸びない。このような悪循環に心当たりがある方は、決して少なくないでしょう。
このような問題の根本には「成果至上主義」の落とし穴があります。そこでビジネスシーンで注目を集めているのが「成功循環モデル」です。
このモデルは、単なる仕事術ではなく、組織やチーム全体のパフォーマンスを持続的に高めるための本質を突いた理論です。
この記事では、成功循環モデルとは何か、そしてビジネスで活用する際に押さえておきたいポイントと注意点を解説します。
成功循環モデルとは何か?
成功循環モデルは、MIT組織学習センターの共同創始者であるダニエル・キム教授が提唱した理論です。特徴的なのは、結果だけを追いかけても、本当の意味での成長や持続的な成功を得ることは難しいと説いたことです。成功循環モデルは、組織やチームの状態を「4つの質」で捉えます。
成功循環モデルを構成する「4つの質」
- 関係の質
チーム内の信頼や心理的安全性、コミュニケーションの深さ - 思考の質
メンバーがどのような意識・考え方で仕事に取り組んでいるか - 行動の質
実際にどれだけ自発的・積極的に行動しているか - 結果の質
関係・思考・行動の作用によって生まれる組織全体の結果や成果
成功循環モデルの「グッドサイクル」と「バッドサイクル」
成果を出し続ける組織が実践している「グッドサイクル」
成功循環モデルの「グッドサイクル」とは、「関係の質」から始まる好循環です。
- 関係の質を高める
→ 信頼や心理的安全性が高まる - 思考の質が向上する
→ 自分ごととして考え、クリエイティブな意見や気づきが増える - 行動の質が高まる
→ 自発的・積極的な行動が増える - 結果の質が高まる
→ 業績・成果も上がる - さらに関係の質が良くなる
→ 以降、好循環が続く
悪循環を生む「バッドサイクル」とは?
一方で、結果だけを求めてしまうと「結果の質」から悪循環が生まれます。
- 結果の質だけを追いかける
→ ノルマや指示命令が増える - 関係の質が低下する
→ ギスギスした雰囲気、責任の押し付け合い - 思考の質が下がる
→ 受け身・萎縮し、アイデアも出なくなる - 行動の質が下がる
→ 消極的、最低限のことしかしない - 結果も出ない
→ さらにプレッシャーが強まり、悪循環が加速
成果を求めれば求めるほど、成果が遠ざかる――まさにバッドサイクルです。
成功循環モデルを有効に活用するには?
1. まず「関係の質」を高める――心理的安全性の土壌づくり
どんなに優秀な人材が集まっても、信頼や心理的安全性がなければ、力は発揮されません。Googleの研究でも「生産性の高いチーム」の最大要因は心理的安全性であることが明らかになっています。
- 傾聴の実践 相手の話をさえぎらず、最後まで聴く。アイコンタクトやうなずき、要約などで「あなたを理解したい」という姿勢を示す。
- 感謝を伝え合う習慣 ありがとうカードなど、小さな感謝を日常的に見える化。
- 発言の機会を平等に 会議やミーティングで、全員が意見を述べられる機会を設ける。
2. 「思考の質」を高める――目標と目的の共有
ビジョンや目標を明確にし、チーム内で共有しましょう。
- 定期的な1on1ミーティングでメンバーと目標を再確認
- 会社やチームの「パーパス(存在意義)」を繰り返し言語化し、意識づける
3. 「行動の質」を高める――主体性を引き出すコーチング
思考の質を高めた後は、行動の質を高めて成功循環モデルを改善していきましょう。
- 業務の役割分担を明確にし、個々の得意分野を活かす
- 上司はコーチ役に徹し、部下の強みや課題を一緒に考える
- 定期的なフィードバックで行動を振り返る
4. 「結果の質」を正しく評価する――行動評価とフィードバック
結果の質が向上しても、正しく認識できなければ成功循環モデルは改善されません。プロセスと結果を正しく評価していきましょう。
- 業績だけでなく、プロセスやチャレンジも評価
- バリュー評価(会社の価値観に合った行動を評価)を導入
- 良い行動や成果は積極的に称賛し、改善点は具体的に伝える
「やればやるほど報われる」という実感が、グッドサイクルを加速させます。
成功循環モデル実践の注意点
ぬるま湯組織と厳しすぎる組織はどちらも危険
「関係の質を高める」と聞くと、
“みんな仲良く、叱るのはNG”
“対立や意見の衝突は避けるべき”
と思いがちですが、それは大きな誤解です。
本当の心理的安全性とは、間違いは指摘し合い、意見の違いを率直にぶつけ合える関係です。
“言いたいことも言えずに流されるだけ”の組織は、単なる「ぬるま湯」に過ぎません。逆に、結果だけを追い「ミスしたら即叱責」「失敗は許さない」という組織も、イノベーションや成長は生まれません。
「ストレッチ目標」と「正当な根拠」で、挑戦する組織へ
- 適度なストレッチ目標(簡単すぎず、難しすぎない目標)を設定
- 「なぜこの仕事をするのか?」という正当な根拠やビジョンを繰り返し共有
- 「チームのため」「お客様のため」という共通の目的意識を持つ
この挑戦には価値があると納得することで、自然とチャレンジ意欲が高まります。
まとめ
成果を出すために成果だけを追い続けるのは、実は最も成果から遠ざかる方法です。
関係の質を高めることから始まり、思考→行動→結果の好循環を生み出す――これが、持続的に強い組織をつくる王道です。
そして、注意したいのは「関係が良い=甘やかす」ではないということです。
心理的安全性と適度なストレッチ目標を意識して、「安心して挑戦できる緊張感のある職場」こそが、真に成果の出せるチームをつくります。
あなたの職場でも、ぜひ「成功循環モデル」のサイクルを回し始めてみてはいかがでしょうか。


