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大人になっても成長できる──ビジネスマンのための成人発達理論
ビジョナリー編集部 2025/08/25
社会人になり、数年経つとふと「自分はもうこれ以上成長しないのでは?」と感じたことはありませんか?実はこの考えこそが、あなたの可能性を狭めてしまっているかもしれません。
「人は成人すると心の成長が止まる」──この常識が今、覆されつつあります。
いま、ビジネスパーソンの間で注目を集めているのが「成人発達理論」です。この理論を知ることで、あなた自身も、そして組織も、今まで想像していなかった新たな成長の扉を開くことができるかもしれません。
本記事では、「成人発達理論とは何か」から、「ビジネスでどう活かすべきか」まで、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
成人発達理論とは?
成人発達理論は、ハーバード大学のロバート・キーガン教授らが提唱した理論です。
その核心は、「人は成人後も、生涯にわたり心や知性、意識を発達させ続けることができる」というシンプルなものです。
かつては「大人になったら成長は止まる」という固定観念が根強くありました。しかし、脳科学や心理学の進歩により「人は何歳になっても成長可能」と科学的にも裏付けられています。
成人発達理論は、社員研修、チームビルディング、リーダー育成など、ビジネスの現場で存在感を増しています。
どのような「成長」があるのか?
「成長」と聞くと「知識が増える」や「スキルが上がる」といったイメージが強いかもしれません。しかし、成人発達理論では「成長」を2つの軸で捉えます。
水平的成長(知識・スキルの拡大)
- 新しい知識を身につける
- 資格を取る
- 業務スキルを磨く
垂直的成長(器・認識の変化)
- 物事の見方が広がる
- 多様な価値観を受け入れられる
- より深いレベルで自分や他者を理解できる
「人間としての器」が大きくなるイメージです。例えば、若い頃は受け入れられなかった意見や価値観が、年齢や経験を重ねることで自然に受け入れられるようになる──こうした質的な変化が「垂直的成長」です。
ポイントは、「どちらか一方」ではなく「両方の成長」が必要だということです。
成人発達理論が示す成長の段階
知性の3段階モデル
成人発達理論では、人の知性は心の成長とともに変化し、3段階に分類されるとしています。
- 環境順応型知性
→自分の考えが未確立で、周囲に流されやすい。いわゆる指示待ちの状態。上司の指示がないと動けません。新しい業務や改善提案にも消極的です。 - 自己主導型知性
→自分の価値観や判断基準を持ち、自律的に動ける。だが、自分の枠にこだわりやすい。自分なりのやり方で成果を出せますが、「自分が一番正しい」と思い込みがちです。 - 自己変容型知性
→自分の軸を持ちながらも、他者の価値観や新たな環境を受け入れ、自分を変化させることができる。リーダーに求められる資質。自分の考えを持ちつつも、状況や相手に合わせて柔軟に変化できます。
成人発達理論の実践ポイント
「水平的成長」と「垂直的成長」を意識する
多くの企業では知識やスキルの向上(=水平的成長)に力を入れがちです。たとえば、資格取得やOJT、セミナー受講などがそれにあたります。しかし、知識やスキルをつけるだけでなく、器の大きさや物事の多面的な捉え方を伸ばすこと(=垂直的成長)も大切です。
例えば、同じ営業スキルを持っていても、「異なる価値観を尊重できる」「失敗も成長の糧にできる」人材は、組織の中核を担う人材として、より期待ができます。成長には、「水平」と「垂直」の両輪が不可欠です。
批判的内省──自分の思い込みを疑う習慣をつける
人は誰しも、思い込みや固定観念に縛られがちです。成人発達理論では成長を妨げてしまう考え方を以下のように定義しています。
- 阻害行動:本来とりたい行動を阻害する行動とは何か
- 裏の目標:阻害行動が生じる理由
- 強力な固定概念:その行動を取らせている固定概念とは何か
自分の潜在意識にある固定観念に気付き内省することが、成長のきっかけとなります。
1on1ミーティングの活用
批判的内省は、必ずしも一人で行う必要はありません。例えば、上司と部下の1on1ミーティングは、内省を深める絶好の場です。
- 振り返りのポイントを明確化
- なぜその行動や感情が生まれたのか言語化
- 「阻害行動」「裏の目標」「強い固定観念」の流れを整理
- そこから成長のヒントや次の行動を見出す
発達の5段階モデル
成人発達理論では、人の成長・発達には「5つの段階」があると提唱しています。
- 具体的思考段階(言語を習得した子ども・未成年)
- 道具主義的段階(自分中心、他人を道具扱い)
- 他者依存段階(自分の基準がなく、他者や組織に従う)
- 自己主導段階(自分の価値観で自律的に行動)
- 自己変容・相互発達段階(自他両方の成長を促すことができる)
段階は優劣ではなく違いと捉える
成人発達理論の段階には優劣はありません。それぞれの段階に、その段階なりの強みがあり、役割があります。
- 他者依存段階の社員は、ルールを遵守し、安定した業務遂行に強みがある
- 自己主導段階の社員は、独自のアイデアや責任感でプロジェクトを引っ張る
- 自己変容段階の社員は、多様なチームをまとめ、変化を先導する
重要なのは「今の自分(または部下)がどの段階にいるか」を把握し、その特性を活かしつつ、次の成長を促すことです。
ビジネスで活用する際の注意点
一足飛びの成長はない
成人発達理論の「段階」は、短期間で簡単に飛び越えられるものではありません。 たとえば、他者依存型の社員が、いきなり自己変容型のリーダーに成長することは簡単なことではありません。
- 一歩ずつ、段階を踏んで成長を促す
- 成長には時間がかかることを理解し、焦らない
地道にやり続けることが、実は一番の近道です。
「垂直的成長」は見えにくい
知識やスキル(水平的成長)は「資格」「成果」として可視化しやすいですが、器の大きさや認識の変化(垂直的成長)は、数字で測れません。
- 定量評価だけでなく、行動や態度の変化も評価する
- 定性的なフィードバックや1on1での対話を重視する
他者との比較ではなく「自分の変化」に着目する
段階や成長には個人差があります。同じ年齢や役職でも、成長のスピードや特性は人それぞれです。
- 他人と比べるのではなく「昨日の自分」や「半年前の自分」と比較
- 部下を評価する際も、成長の軌跡を大切にする
組織全体に「成長文化」を根付かせる
個人が成長しても、組織に「変化を受け入れる文化」がなければ活かされません。経営層やマネジメント層が率先して成人発達理論を学び、実践することが重要です。
まとめ
成人発達理論は、「大人になっても人は成長できる」ことを示した理論です。知識やスキル(水平的成長)だけでなく、器の大きさや認識の変化(垂直的成長)を磨くことが、これからのビジネスパーソンには不可欠です。
- 批判的内省を習慣にする
- 1on1ミーティングを活用する
- 成長の段階は「違い」であり「優劣」ではないと理解する
- 自分の成長に焦点を当てる
この成長のマインドセットが、あなたのキャリアも、組織の未来も、大きく変えていきます。
今日から一歩、新しい自分へ。変わり続ける力を、あなた自身の武器にしてみませんか?


