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2016年を懐かしむ人々の急増とその背景──「穏やかで輝かしき日々」はなぜ再評価されているのか
ビジョナリー編集部 2026/02/17
2026年現在、10年前の「2016年」が新しいトレンドとして脚光を浴びる現象が、世界中の若者を中心に巻き起こっています。InstagramやTikTokには、当時の懐かしいフィルターや音楽、そして「あの頃の自分」に戻ったかのようなポストが溢れ、かつての流行が鮮やかによみがえっています。
なぜ、これほど多くの人々が2016年を懐かしむのでしょうか。そこには、現代社会特有の心理的背景と、カルチャーの大きな潮流が見え隠れしています。
2016年の「ノスタルジア現象」はどのように生まれたのか
2016年と聞いて、皆さんはどんな情景を思い浮かべるでしょうか。世界的には、リアーナやジャスティン・ビーバーのヒット曲が街やSNSを彩り、スキニージーンズやチョーカー、太眉メイクが若者文化の象徴となっていました。Snapchatの犬耳フィルターや、VSCO、Instagramの「クラレンドン」フィルターで加工された写真が日常的にシェアされる──そのような特有の空気感が、時代を特徴づけていました。
当時は、今のようにインフルエンサーが溢れていたわけではありません。SNSは「目立つ人が発信する場」というより、誰もが日常の一コマを気軽に共有できるプラットフォームでした。特別な出来事でなくても、何気ない写真やひとことを投稿すること自体が純粋に楽しまれていたのです。
この自由な空気感とポップカルチャーが絶妙に共鳴した2016年。その記憶が、10年の時を経て「幸せだった時代」として再解釈され、多くの人々の心に深く刻まれているのです。
「2016年回帰」が加速するSNS セレブリティも参加するムーブメント
SNS上では「2026 is the new 2016(2026年は新しい2016年)」というキーワードが一大トレンドとなっています。インフルエンサーや一般ユーザーだけでなく、カイリー・ジェンナーやデュア・リパ、リース・ウィザースプーン、チャーリー・プース、ザ・チェインスモーカーズといった世界的なセレブリティも、当時の写真やヒット曲を投稿し、このムーブメントを後押ししています。
例えば、カイリー・ジェンナーは2016年当時のスキニージーンズとリップキットメイク姿の写真をInstagramに投稿し、瞬く間に数百万人の「いいね」を獲得しました。TikTokでは、2016年のメイクやファッションを完全再現する動画が増加し、2016のハッシュタグ投稿は170万件を超えるなど、まさに“ノスタルジアモード”(懐かしさを楽しむ状態)全開です。
懐かしのフィルターやヒットソングが再びチャートを駆け上がり、当時のカルチャーが若い世代にも再評価されています。
変わるSNSの空気、「普通の生活」への郷愁
2016年と現在を比較したとき、多くの人が「SNSの使い方が変わった」と感じています。かつては日常の何気ない風景を気軽に投稿できた場所が、今では特別な出来事や“映える瞬間”が多く共有される空間に変化しました。
ある人気クリエイターは、「2016年は楽しくて自由で、心が軽やかだった」と振り返ります。彼女自身も、今ではプライベートをさらけ出すことに慎重になったと語り、「普通の生活」がどれほど貴重だったか改めて気づいたといいます。
つまり、2016年を懐かしむ現象は、ただ流行をなぞるだけではありません。人々は、何もかもが“普通”に感じられた、当たり前の日常に戻りたい──そんな郷愁を抱えているのです。
なぜ「10年前のあの頃」が今、これほどまでに愛されるのか
心理学的な視点からも、2016年回帰の背景には興味深い理由があります。ノスタルジーに関する心理学研究によれば、「人は、将来の不安や人生の迷いに直面しているとき、かつての自分の“青春時代”に強い懐かしさを感じやすい」と指摘します。
特に、2016年に10代や20代だったミレニアル世代やZ世代にとって、今は人生の転換期や社会的不安の真っ只中です。そのような中で、自由でエネルギッシュだったあの頃の記憶が、心の支えや元気の源となっているのです。
また、コロナのパンデミックや政治的・社会的な分断、経済的不安が続き、2016年という比較的「平和で輝かしい時代」への回帰は、多くの人にとって心の安らぎとして機能しているのも見逃せません。
2016年カルチャーの「リバイバル」が持つ新しい意味
ファッションや音楽の世界では、約10年周期でトレンドが繰り返されることが多く、今また2016年のスタイルが「新鮮なレトロ」として再評価されています。チョーカーやスキニーデニム、赤リップ、太眉メイクが若い世代の間で“新しい流行”として受け入れられ、当時を知らない世代にとっては「初めて出会うトレンド」となっているのです。
さらに、デジタルカメラやガラケー、紙の本など「アナログ回帰」も注目を集め、シンプルな時代への憧れが広がっています。現代のデジタル社会に疲れた人ほど、2016年の「わかりやすくてシンプルだった日々」に心を寄せているのかもしれません。
「2016年回帰」から私たちが得られるもの
2016年を懐かしむムーブメントが世界を席巻しているのは、現代人の心の奥底に“安心できる場所”への憧れがあるからに他なりません。これは、ただの流行ではなく、現代社会への“問いかけ”であり、私たちの価値観や生活スタイルを再確認するきっかけなのです。
当時の写真や音楽、ファッションに心を動かされたなら、それは未来への不安と向き合う中で、自分の内面と対話するチャンスかもしれません。


