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床下20年、1万件を調査したプロが語る「シロアリ防除」の壮絶現場。水没、倒壊寸前……住まいを守る技術者の執念
ビジョナリー編集部 2026/08/18
シロアリ対策を軸に、総合的なハウスメンテナンスサービスを展開する株式会社アサンテ。同社には、シロアリ防除の最前線で高度な専門性を発揮する技術者集団 「シロアリバスターズ」 が存在する。
普段、住まい手が目にすることの少ない“床下”の世界。しかしそこには、建物の寿命や安全性を左右する深刻な異変が潜んでいることもある。現場経験豊富な技術担当者の言葉から、シロアリ防除という仕事の知られざる奥深さと、住まいを守るプロとしての誇りが見えてきた。
床下を知り尽くしたベテランが語る、現場のリアル
アサンテ本社 HA営業推進部 技術課に所属する栗澤寛之氏は、床下歴20年を誇る大ベテランだ。
千葉県佐原営業所の技術職からキャリアをスタートさせ、総合研修センターや本社部門など全国7拠点を渡り歩いてきた。これまでに手掛けた調査・施工件数は、実に1万件を超えるという。現在は本社を拠点に、難易度の高い現場への対応や、全国の技術員に対する指導・現場同行にも奔走している。
その守備範囲はシロアリにとどまらない。ネズミやハクビシンといった害獣対応にも精通し、住まいのトラブル全般に目を光らせてきた。
栗澤氏は「現場に入ると、まず家の状態が気になります。シロアリだけでなく、湿気や水漏れ、害獣の痕跡まで、床下にはさまざまなサインがあるのです」と、プロの視点を明かす。
▲床下で作業する栗澤氏
床下が“湖”に変わった現場も。想像を超える過酷な環境
栗澤氏がこれまでに経験した現場の中には、過酷を極めたケースも少なくない。特に印象的だったのは、水漏れによって床下全体が水没し、あたかも湖のようになっていた住宅だ。
「感電を防ぐために電動工具は一切使えず、ヘッドライトの明かりだけを頼りに作業しました。全身びしょ濡れになりながら、泳ぐような格好で施工を完了させたことがあります」と、当時の壮絶な状況を振り返る。
また、シロアリ被害が深刻化し、わずかに体重をかけただけで木材が折れてしまいそうな住宅に遭遇することもある。こうした現場は空き家とは限らず、実際に人が暮らしている家でも起こり得る。
シロアリは、木材が崩壊する直前の“ギリギリ”の部分を残して食い進める性質がある。そのため、施工中は常に落下や倒壊の危険と隣り合わせになるという。現場の緊張感は、外部からは計り知れないものがある。
「職業病かもしれませんが、シロアリや害獣の気配を“ニオイ”で感じることがあります。4月から5月のスウォーム(群飛)の時期は、通勤中に住宅の前を通っただけで、被害の有無が分かることもあるほどです」と栗澤氏は語る。
「1ミリの気遣い」が信頼になる。直接お客様と接する仕事の手応え
過酷な環境での作業を強いられる一方で、現場で得られるやりがいも大きい。
特に印象に残っているのは、和歌山県にある道幅の極めて狭い現場での出来事だ。
大型の作業車で向かった栗澤氏は、近隣住民への配慮から、顧客の敷地内で何度も慎重に切り返しを行い、細心の注意を払って車を出し入れした。
その一連の様子を見ていた顧客から、後日、本社に一本の電話が入ったという。「無断で敷地に入ることなく車を出してくれた。迅速・丁寧・常識ある対応でうれしかった」との感謝の言葉だった。
「本当にうれしかったですね。直接お客様と接する仕事だからこそ、ほんの少しの気遣いが信頼につながると実感しました」と栗澤氏は目を細める。
訪問販売というサービスの性質上、技術力はもとより、現場での立ち居振る舞いや細かな配慮が、そのまま企業の評価に直結する。栗澤氏の言葉には、現場第一主義を貫いてきた重みがにじんでいる。
シロアリは日本中どこにでもいる。築年数にかかわらず必要な点検
栗澤氏の指摘によれば、シロアリ被害は木造住宅に限った話ではない。
コンクリート造の住宅であっても被害が生じるケースがあり、さらには築10年未満の比較的新しい住宅で見つかることもある。
「シロアリは日本中どこにでも生息しています。だからこそ、定期的にプロの目で点検してもらうことが、何よりの防衛策になるのです」
目に見えない床下の異変を早期に察知すること。それが、大切な住まいを長持ちさせるための欠かせない第一歩となる。
「入ってみたいのは海外の床下」難しい現場ほど、探究心が刺激される
20年のキャリアを経てもなお、栗澤氏の探究心は衰えることがない。今後入ってみたい床下について尋ねると、「海外の家」という意外な答えが返ってきた。
「日本国内でも、関東と関西では畳のサイズが異なり、それに伴って床下の構造も変わります。国内でさえこれだけの違いがあるのですから、シロアリの種類も建築構造もまったく異なる海外の床下がどうなっているのか、この目で確かめてみたいですね」
難易度の高い現場であればあるほど、むしろ闘志が湧く。これまでの経験をすべて注ぎ込みたいという飽くなき探究心が、その仕事を支えているのだ。
地震などの災害報道で倒壊した家屋を目にするたび、職業柄「自分たちに何かできたのではないか」と考えてしまうこともある。住まいの安全を長年守り続けてきた専門家ならではの切実な視点だ。
住まいを守る、その先にあるもの
アサンテは1970年、三洋消毒社として東京都府中市で産声を上げた。以来半世紀以上にわたり、シロアリ対策を核とした総合ハウスメンテナンスサービスを提供し続けている。
同社は「人と技術を育て、人と家と森を守る」という経営理念を掲げ、木造家屋の長寿命化や環境保全、さらには日本の“木の文化”の継承を目指しているという。
床下という、人目に触れにくい場所にこそ、住まいの未来を左右する重要な職務がある。「シロアリバスターズ」の現場には、不動の使命感と、日々の研鑽によって磨き抜かれた確かな技術が息づいている。


