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2025

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    リーマンショックとは何だったのか?:世界を揺るがせた金融危機の真相

    リーマンショックとは何だったのか?:世界を揺るがせた金融危機の真相

    株価の暴落、企業の倒産、ニュースで繰り返された「未曾有の金融危機」という言葉。2008年9月、アメリカの名門投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことが報じられ、世界が金融危機に直面していることを多くの人々が知ることになりました。

    その背景には、サブプライムローンと、それを取り巻く複雑な金融商品、そして過熱した住宅バブルがありました。本稿では、リーマンショックで起きていたことを分かりやすく解説いたします。

    リーマンショックとは

    2008年9月15日、アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界中の金融市場は大混乱に陥りました。日本でも株価が暴落し、その後多くの企業が経営危機に直面、失業率も急上昇しました。

    ちなみに「リーマンショック」という表現は日本独自のもので、海外では「2008 financial crisis」などと言われています。リーマン・ブラザーズが経営破綻する前から、金融危機は顕在化しており、日本での破綻報道がその名称定着につながったものと思われます。

    アメリカの一企業の破綻にとどまらず、世界中に大きな影響をもたらした金融危機は、なぜ発生したのでしょうか?

    ITバブル崩壊とサブプライムローンの拡大

    2001年、アメリカではITバブルが崩壊し、さらに9月11日の同時多発テロが発生しました。経済は一気に不況へ突入し、政府は景気回復のために大規模な金融緩和政策を導入します。

    この時期、アメリカ政府はマイノリティや低所得者の住宅取得を後押しし、「サブプライムローン」と呼ばれる、信用力の低い層向けの住宅ローンが爆発的に普及します。住宅価格は上昇を続け、住宅を担保にすることでお金が借りやすくなる時代が到来しました。

    しかし、それは、全体として信用力に見合わない融資枠を供与することになり、結果的に、住宅購入資金の返済が出来ない層を大量に生み出すことにつながっていたのです。

    サブプライムローンとは?

    • 「プライム」層:信用が高く、通常の住宅ローンが組める層
    • 「サブプライム」層:信用情報に傷があったり、年収が低いなど、通常はローンを組めない層
    • サブプライムローンは通常のローンより高金利ですが、低所得者でも住宅購入が可能となりました

    サブプライムローン債権の証券化

    一方で、こうした信用の供与拡大を事業機会としたのが、利益追求に貪欲な金融業界でした。

    サブプライムローンの拡大を後押ししたのが、債権の証券化です。住宅金融会社や銀行が貸し出したサブプライムローン債権は、投資銀行によって「住宅ローン担保証券(MBS)」や「債務担保証券(CDO)」として証券化され、世界中の投資家に販売されていきました。

    さらにリスクをヘッジする目的で「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」という債権の元本や利息を保証する契約も誕生しました。これにより安心感が広がり、サブプライムローン債権の証券化商品は、世界中の年金基金や銀行、投資ファンドに大量に組み込まれていきました。

    住宅バブルの陰り

    2004年にはFRB(米連邦準備制度理事会、日本での日本銀行に相当)が景気過熱を抑えるために金利を引き上げ始めます。住宅価格の上昇は徐々に鈍化し、2006年をピークに住宅市場は転換点を迎えます。

    • 住宅価格が上昇している間
      住宅を担保として新たなローンが組める
      ローンが返せなくても、住宅を売れば損失を回避できる
    • 住宅価格が下落し始めると
      ローンの借り換えができなくなる
      返済不能に陥る人が急増

    サブプライムローンの延滞率急増と証券化商品の暴落

    2007年、サブプライムローンの延滞率が上昇していきます。これにいち早く気付いたヘッジファンドなどの一部のプロ投資家は、逸早く証券化商品の売却を始めました。しかし、証券化商品の仕組みがあまりにも複雑だったため、多くの機関投資家などは「格付け会社の高評価」を信じて保有し続けました。

    証券化商品の価格は下落し始め、信用度が低い債権が複雑なかたちで組み込まれているため「適正な価格が分からない」「担保価値が疑わしい」状態に陥ります。こうして金融市場は徐々に混乱を増していきました。

    投資銀行の経営悪化とリーマン・ブラザーズの破綻

    金融業界全体が、適正水準をはるかに超える額の貸し出しを行い、それを複雑な金融商品、金融手法を通じて、金融業界に拡散していました。購入した住宅価格が上昇から下落に向かうと返済は滞り始め、すべてが逆回転に向かい始めました。

    サブプライムローンの証券化商品を大量に抱えていた投資銀行は、多額の評価損を計上するようになります。なかでもリーマン・ブラザーズは「安値で買えば儲かる」と信じて買い増していましたが、住宅市場の回復は見込めませんでした。

    2008年9月15日、リーマン・ブラザーズは経営破綻しましたが、すでに多くの大手投資銀行が同様に深刻な危機に陥っており、大規模なリストラや金融機関の傘下入り、経営破綻につながりました。

    世界中に波及した金融危機

    リーマン・ブラザーズの破綻は、世界中の金融市場に大きな影響をもたらしました。レポ取引市場(担保付き短期資金調達市場)が麻痺し、あらゆる金融商品や資産の価格が暴落。資金調達ができなくなった企業が次々と経営危機に陥り、実体経済にも大きな影響が波及しました。

    主な影響

    • 世界の株価が軒並み暴落
    • 資本移動が90%減少
    • 主要国政府による巨額の公的資金注入
    • 日本でもトヨタが60年ぶりの赤字、派遣切りや内定取り消しが社会問題化

    リーマンショックの教訓とは?

    リーマンショックは、金融技術の進化と証券化が「リスク分散」という名のもとに過剰に活用され、実体経済とかけ離れた金融バブルを生み出した結果でした。複雑な金融商品を「安全」と信じて市場に流通させ、世界中を未曾有の危機に陥れてしまいました。

    金融業界では、リーマン・ブラザーズなど破綻した企業がある一方で、破綻が更なる大規模な破綻や混乱を回避するため、巨額の財政資金の投入が行われる対象となる企業もあり、モラルハザードではないかとの大きな批判にもつながりました。

    各国政府が迅速な資本注入など異例の対応をとったことで、「世界大恐慌」の再来は回避できました。日本でも過去の金融危機の経験を活かし、金融システムの安定化や雇用対策が進められました。

    まとめ

    リーマンショックを引き起こした原因は、サブプライムローンという「新しい住宅ローン」と、そのリスクを複雑な証券化で世界中に拡散したことにありました。住宅バブルの崩壊から証券市場の混乱、そして大手投資銀行の破綻へと至る流れは、「金融は社会全体と密接に結びついている」ことを改めて示しています。

    もしもあのとき、金融商品を「安全」と信じて疑わなかった多くの人々が、もう一歩リスクに目を向けていたら。あるいは、住宅価格の永続的な上昇を当然と考えず、歴史の教訓を見直していたら。

    100年に1度の危機とも表現されたリーマンショックですが、今現在進行中の事象は本当に問題ないと信じてよいものなのか、私たちは今後も「金融の進化」と「リスク管理」のバランスを問い続ける必要がありそうです。

    #リーマンショック#金融危機#株価暴落#サブプライムローン#経済危機#証券化#リスク管理#投資銀行#住宅バブル#経済ニュース

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