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自治体や産院からも信頼を寄せられる理由とは。ミキハウスが推進する、地域と連携した「産み育てやすい社会」づくり
ビジョナリー編集部 2026/01/28
AI時代にこそ求められる「手触りのある安心」。のべ19万人が体験したミキハウス流・子育て支援の真髄
インターネットが最も身近なメディアとなり、誰もが瞬時に情報を得られる現代。その一方で、真偽の定かでない情報が溢れ、受け手側には高いリテラシーが求められるようになった。特に出産や育児という、正解のない問いに直面したとき、初めての経験に戸惑う親たちが「検索の迷路」で不安を深めてしまうケースは少なくない。
核家族化が進み、孤立した育児が社会問題となる中、新たな「相談相手」として台頭しているのがAIだ。対話型AIは膨大なデータから素早く回答を提示し、時には優しい言葉で寄り添ってくれる。孤独な親にとって、AIは一時の救いになるかもしれない。
しかし、出産や子育てはまさに「十人十色」。画面越しに得られる情報だけで、現実の赤ちゃんを迎える準備を整えるには限界がある。そんなデジタル全盛の時代にあって、あえて「体験」というアナログな価値にこだわり、圧倒的な支持を得ている取り組みがあるという。
一人の父親の「苦労」から始まった、18年前の挑戦
「ミキハウス プレママ・プレパパセミナー」の原点は、今から18年前に遡る。きっかけは、一人の男性社員の個人的な実体験だった。
初めての子育てを前に、不安を解消しようと申し込んだ自治体の両親学級はすべて落選。当時は父親が産婦人科に立ち入るハードルも高く、何を準備すべきかも分からないまま子育てがスタートした。結果、待っていたのは苦労の連続だったという。
「自分と同じように、情報が得られずつらい思いをしている人がいるのではないか」。そんな想いに突き動かされた彼は、2008年、有志の先輩ママたちと共に「ミキハウス プレママ・プレパパセミナー」を立ち上げた。
当初は百貨店の催事スペースなどで細々と始まった活動だが、医師や有識者が監修した信頼性の高い内容は、口コミで瞬く間に広がった。「自信がついた」「具体的にイメージが湧いた」という高い満足度に支えられ、今や年間受講者数は1万9,000名に達する。

セミナーが徹底しているのは、スマホ1台で完結する時代だからこその「リアルな体験」だ。参加者一人一人に赤ちゃん人形が用意され、抱き方から肌着の着せ方、沐浴の手順までを実際に手を動かして学ぶ。講師を務めるのは、1年間の専門研修を受けた「ミキハウス 子育てキャリアアドバイザー」だ。
特筆すべきは、その場限りの関係で終わらない点だろう。全国の店舗に所属するアドバイザーが参加者の周りで手厚くサポート役を務めているため、受講者は後日、最寄りの店で再び相談することができる。「全国展開するブランドならではのアフターフォロー体制」が、親たちの安心感を支えている。
▲一人一体ずつ赤ちゃん人形を使い、講義と体験で理解を深める
▲ママ・パパが揃って参加しやすいよう、夜間もセミナーを実施
時代の変化に合わせた柔軟なアップデートも欠かさない。コロナ禍ではいち早く動画配信セミナーを導入。事前に練習用のおむつを送付し、自宅のぬいぐるみやティッシュ箱を使って練習できる環境を整えた。「外出は怖いが、準備はしっかりしたい」という切実なニーズに応えた形だ。
累計受講者数は19万人を突破。主要都市の開催では定員を大きく上回る応募が殺到しており、父親が有給休暇を取得して参加する姿も珍しくないという。「正しい情報を得て、納得して備えたい」という切実な願いが、人々を会場へと向かわせている。

垣根を越えて広がる「子育て支援」の輪
この圧倒的な集客力とノウハウに、多くの企業や自治体が注目している。現在、ミキハウスとの共同開催に踏み切る企業は39社を超えているという。
例えば東洋ライス株式会社とのタイアップでは、米粉を使った離乳食作りがプログラムに加わった。最新の栄養学を学びながら、キッチンスタジオで実際に調理体験ができ、「これならできる」と自信を持ったママ・パパの姿も。
▲米粉を使った離乳食づくり体験
ミキハウスみらい推進室の加藤浩二氏は、活動の意義を次のように語る。「『商品を売りたい』ではなく、『子育ての不安を解消したい』という想いに共感してくれるパートナーと共に、社会に根付いた活動を継続していきたい。自治体や産院とも垣根を越えて繋がり、子どもを産み育てやすい社会を一歩ずつ作っていきたいのです」。
その言葉通り、自治体との連携も深化している。岡山県との共催では、育休を取得した「先輩パパ・ママ」によるトークセッションを企画。リアルな体験談を聞く場を提供することで、夫婦が育休取得や家事分担について具体的に話し合うきっかけを生み出している。
▲先輩パパ・ママによるトークセッション
さらに、医療現場である「産院」からの依頼も増えているという。出産という安全管理に心血を注ぐ産院側にとって、産前産後のフォローまで十分に行うのは容易ではない。名古屋バースクリニックのように、ミキハウスのスタッフを招いて定期的にセミナーを開催することで、利用者の満足度を高め、病院としての付加価値を向上させるケースも出てきている。
国も認めた「一社員の熱意」が社会を変える
こうした草の根の活動は、ついに国をも動かした。2024年11月、こども家庭庁が推進する国民運動「健やか親子21」において、ミキハウス プレママ・プレパパセミナーは企業部門の優秀賞を受賞したのだ。一社員の提案から始まり、10年以上にわたって直接的なコミュニケーションを重視してきた独自性が高く評価された結果である。
表彰を受け、同社は今後、防災対策や食育、口腔ケアなど、産後の課題にも対応していく姿勢を示している。「子どものいる生活が楽しく明るいものであることを伝えていきたい」という信念のもと、取り組みはさらに加速しそうだ。
▲令和7年度 健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰式
ミキハウスはセミナー以外にも、専門家による記事を発信する「ミキハウス妊娠・出産・子育てマガジン」や、オンライン座談会「ミキハウスCAFÉ」、コミュニティサイト「ミキハウスパーク」など、多角的に親たちをサポートしている。
これらすべての活動に通底するのは、単なる情報の提供ではなく「つながり」の提供だ。子育てに正解はない。だからこそ親たちが求めているのは、完璧な答えではなく、日々を少しだけ楽にするアイデアであり、何より「自分は一人ではない」という安心感なのだ。
一社、一自治体で抱え込むのではなく、手を取り合い、持続可能な形でサポートを繋いでいく。そんな社会全体の姿勢こそが、出産や育児にまつわる不安を解消する、唯一の処方箋なのかもしれない。


