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突然の家賃の値上げは有効?―入居者と貸主、それぞれが知っておきたい落とし穴とトラブル防止策
ビジョナリー編集部 2025/07/23
「突然家賃が2倍に⁉支払わなければ退去命令の通知が・・」
世間を賑わせた記憶に新しいこのニュース。もし自分の身にこのようなことが起きたら、どうしたら良いのでしょうか。
今、インフレや物価高騰の波が私たちの生活を直撃しています。食品や光熱費だけでなく、家賃まで値上げの動きが広がる中、入居者も貸主も「どう対応するべきか」で頭を悩ませる場面が増えてきました。
しかし、このような急な賃上げに値上げは、本当に従わなければならないのでしょうか?
賃上げは入居者だけのダメージではなく、貸主側も、「値上げ=入居者離れ」というリスクを伴います。
今回は、家賃値上げのリアルな現場で起こりやすいトラブルや、お互いが納得できる対応策を、入居者・貸主それぞれの視点から徹底解説します。
そもそも、家賃の値上げはどうして起こる?
まずは「なぜ家賃が値上げされるのか」を知ることが重要です。多くの方が「一度契約した家賃はずっとそのまま」と考えがちですが、実は法律上、家賃は状況によって見直すことが認められています。
貸主が家賃を上げられる“正当な理由”とは?
家賃値上げの根拠となるのは、「借地借家法第32条」。具体的には
- 不動産に対する税金や負担が増えた場合
例えば固定資産税や管理費が上がった時 - 物件の価値や周辺の家賃相場が上昇した場合
エリアの人気や再開発で地価が上がった時 - 近隣の類似物件と比べて明らかに家賃が安すぎる場合
長年据え置きで家賃が相場から大きく下回った時
つまり、単なる貸主の個人的な都合や、収益アップのための値上げはできないように、法律で入居者を守っています。
一方で、昨今のインフレや物価高、都市部の再開発などで「相場が急変した」というケースも増えています。
入居者も「家賃が相場より高い」と感じたら、逆に値下げを交渉する権利があることも覚えておきましょう。
賃上げ通知が来たら?入居者がまず気を付けたいこと
1. いきなり受け入れず、まずは“理由”を確認
もし家賃値上げの通知が届いたとき、焦ってすぐに応じてしまうのはNGです。まずは「なぜ値上げが必要なのか」「どのような根拠があるのか」を貸主や管理会社に丁寧に尋ねてみてください。
- 「固定資産税の上昇」「修繕費の増加」など、具体的な説明を求める
- 近隣物件の家賃データや資料を提示してもらう
- 必要であれば数年分の資料やデータを見せてもらう
2. 周辺の家賃相場を自分でもチェック
納得できる理由かどうか判断するため、自分でも周辺の賃貸物件の家賃をリサーチしましょう。
- 賃貸情報サイトで、間取り・築年数・駅距離・設備などをなるべく現在の物件と揃えて比較
- 周辺エリアの家賃の平均や値上げ動向を参考にする
実際、東京都心部では前年同月比で2〜3%の家賃上昇が報告されていますが、一方で地方都市では下落傾向の県もあります。自分の物件がどちらのケースに当てはまるのか、冷静に見極めることが重要です。
3. 長期入居の意思を伝え、“交渉材料”に
もしその物件に長く住みたいと考えている場合、「家賃が現状のままなら今後も住み続けたい」と貸主に伝えるのは有効な戦略です。
貸主にとって、空室リスクは大きな痛手。
“長期入居の確約”は大きな交渉材料になるため、値上げ幅の縮小や据え置きに応じてもらえることも少なくありません。
4. 値上げ幅や時期など“柔軟な提案”も
値上げを完全に拒否するだけではなく、
- 値上げ幅の減額
- 値上げ時期の後ろ倒し
- 更新料や退去費用の値下げ
など「一部条件の見直し」を提案するのも現実的な選択肢です。
感情的なやりとりや一方的な拒否はトラブルの元。冷静かつ丁寧なコミュニケーションが何より大切です。
「賃上げに納得できない」場合、どう対処すればよい?
1. 従来の家賃を払い続ける
値上げに同意できない場合でも、これまでの家賃を支払い続ける限り、すぐに強制退去になることはありません。
たとえ貸主側から「値上げ後の家賃しか受け取れない」と言われても、家賃滞納で契約解除されないよう、法務局へ供託するという方法もあります。
2. 交渉・調停・相談機関の活用
- まずは書面やメールでやりとりを残しつつ、丁寧に交渉
- それでも合意できない場合は、簡易裁判所で民事調停の申し立て
- 消費者センターや自治体の相談窓口を利用
訴訟になる前に「中立な第三者」を交えて話し合うことで、円満な解決の糸口が見つかる場合も多くなっています。
3. 最終手段は「転居」も視野に
どうしても合意に至らず、今後も納得できる家賃で住む意思がない場合、「契約更新のタイミングで引越しする」という選択肢も検討しましょう。
家賃値上げ+更新料がかかる場合、思い切って新しい住まいに移ることで、家計負担が軽くなるケースもあります。
貸主一方、大家側が気を付けるべき“トラブル回避策”とは?
1. 賃値上げには「正当な根拠」を明確に
- 固定資産税や管理費の増加、物件の修繕内容など“数字や資料”で説明
- 近隣相場や物件の価値向上(設備更新など)も具体的に伝える
「なんとなく値上げ」では入居者の理解は得られません。
2. 「段階的な賃値上げ」や「付加価値」の提案
急激な賃値上げは入居者の反発を招きやすいため、少額ずつ段階的に上げる提案も効果的です。
加えて、「防犯カメラの設置」「共用部のWi-Fi」「省エネ設備の導入」など、家賃アップに見合うメリットを示すことで、納得を得やすくなります。
3. 事前通知と丁寧なコミュニケーション
- 通常は契約更新の2〜3ヶ月前、遅くとも1ヶ月前までに書面で通知
- 増額理由、新旧家賃額、適用時期を明記
- 配達証明付き内容証明郵便で送付し、証拠を残す
「突然の変更」こそトラブルの最大要因です。事前に十分な説明と検討期間を設けることが、信頼関係維持の出発点です。
4. 入居者の意見に耳を傾け、柔軟な交渉姿勢を
賃上げ幅の調整や、入居者の希望に応じた設備改善など「Win-Win」の妥協点を探る姿勢が重要です。
一方的な通告ではなく、対話を重視することで、長期的な入居・安定経営につながります。
起こりやすいトラブルとその“回避法”
【トラブル例1】
「賃上げ通知後、入居者と音信不通に…」
→対策
通知後も連絡がつかない場合、管理会社を通じて再度書面で連絡し、話し合いの場を設ける。それでも解決しない場合は、専門家(弁護士や不動産会社)に早めに相談。
【トラブル例2】
「賃上げに納得できない入居者が家賃を支払わない」
→対策
家賃不払いは契約解除や強制退去の理由になります。入居者は従来の家賃を供託し、家賃滞納扱いにならないよう注意。貸主側も感情的に対立せず、正式な法的手続きを踏むことが大切です。
【トラブル例3】
「賃上げ交渉が平行線、双方に不信感が蓄積」
→対策
第三者(調停委員や専門相談窓口)を交えて話し合うことで、冷静な解決を図る。一方的な主張や感情的なやりとりは避け、事実・データに基づいた対話を心がけましょう。
お互いが納得するための“落とし所”を探る
家賃値上げは、入居者・貸主どちらにとってもデリケートな問題です。しかし、
- 入居者:家計負担・生活の安定
- 貸主:物件価値維持・安定収益
という“お互いの事情”を理解し合うことで、納得解に近づくことができます。
例えば、
- 値上げ分を物件の修繕やサービス向上に充てる
- 長期入居を条件に値上げ幅を抑える
- 必要に応じて段階的な値上げや、他条件での譲歩
こうした「共通利益」を意識することで、トラブルを未然に防ぎ、双方にとって満足度の高い関係を築けるはずです。
まとめ
- 家賃値上げは、「正当な理由」と「双方の合意」が大前提
- 入居者は、まず理由を確認し、相場を調べ、冷静に交渉を
- 貸主は、根拠を明示し、誠意ある説明と事前通知を徹底
- 双方とも、感情的な対立を避け、柔軟な姿勢で落とし所を探る
- トラブル時は、供託・調停・相談窓口など専門機関の活用も
今後、インフレや市場環境の変化で「家賃値上げ」の場面はますます増える可能性があります。ですが、慌てて判断せず、きちんと情報を集め、誠実な対話を重ねることが何よりのトラブル防止策です。

