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10/6(月)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/10/03
「天皇の公務」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
「国会の開会式に出席される」「外国の賓客を迎える」「各地の被災地を訪問される」
ニュースや新聞で目にする機会はありますが、その全体像や年間の実施件数まで把握している方は意外と少ないかもしれません。天皇陛下が担われる公務は、日本の歴史や伝統を守りながら、現代社会の多様なニーズにも応える極めて幅広いものです。
今回は、「天皇の公務とはどのようなものがあるのか?」「年間どれくらい行われているのか?」という疑問を、具体的なデータやエピソードを交えながら、わかりやすく解説いたします。
まず、天皇の公務は大きく以下の3つに分けられます。
この分類は、天皇の役割が「国の象徴」であることに深く関わっています。それぞれの内容を、具体的な事例とともにご紹介します。
「国事行為」とは、日本国憲法に定められた、天皇のみが行うことができる公式な行為です。その多くは内閣の助言と承認に基づき、国家の安定と秩序を保つために極めて重要な役割を果たしています。
これらは、いわば「国家運営の節目」を形作る仕事です。
令和6年(2024年)には、天皇陛下が行われた国事行為の件数は1,033件にのぼりました。
週に2回ある閣議のたびに、内閣で決定された重要書類が天皇陛下のもとに届けられ、一つひとつに目を通され、ご署名やご押印をなさっています。その積み重ねが、1年間で1,000件を超えるという事実には、多くの方が驚かれるのではないでしょうか。
また、そのほとんどが「署名・押印」等の“事務的”な行為にとどまらず、国会開会式や親任式(総理大臣・最高裁長官などの任命式)、勲章の授与式など、多くの公式儀式へのご出席も含まれています。
次にご紹介するのは、天皇の「象徴としての地位」から生まれる公務、すなわち「公的行為」です。憲法や法律に明確な規定があるわけではありませんが、国民との交流や国際親善、社会的な行事へのご参加など、現代の天皇像を形作る上で欠かせない役割を担っています。
これらの行事は、“お務め”の枠を超え、社会のさまざまな分野で努力を重ねている人々を励まし、功績を称える場となっています。
また、被災地へのご訪問や、地方の現地事情のご視察など、国民一人ひとりに寄り添う象徴としての姿勢は、多くの国民にとって心の支えとなっています。
令和6年には、宮殿や御所で行われた儀式・行事(拝謁、ご会見、茶会、午餐、晩餐など)は259件を数えました。
これに加え、地方への巡幸や被災地訪問、国際親善関連の行事なども数多く含まれています。
たとえば、地方巡幸は年間4回程度実施されるほか、災害時には被災地を優先的にご訪問されるケースもあります。
令和6年には能登半島地震や大雨災害の被災地に複数回ご訪問され、復興への励ましや被災者の心のケアに尽力されました。
また、国際親善の一環として、外国からの大使や元首との面会、離任時のご挨拶も重要な公的行為の一部です。令和6年では、11か国の大使とお会いになり、国際関係の強化にも寄与されています。
三つ目は、「その他の行為」と呼ばれる活動です。これは、主に宮中祭祀(皇室伝統の祭儀)や、個人的なご関心に基づく活動が含まれます。
天皇は、古くから伝わる祭祀を大切に受け継ぎ、年間約30件の祭祀を執り行っておられます。代表的なものには、以下のようなものがあります。
これらの祭祀は、国民の幸せ、国家の平安を祈るとともに、皇室が連綿と受け継いできた文化と精神を象徴しています。
「私的な活動」には、天皇皇后両陛下のご家族との時間や、ご趣味・ご研究、健康管理のための静養なども含まれます。特に、天皇陛下が生物学分野で研究を続けてこられたことはよく知られています。
天皇の公務は、儀式や形式的なものにとどまりません。むしろ、「国民統合の象徴」としての役割を実際の行動で体現し、現代社会や国際社会とのつながりを深めています。
たとえば、災害発生時にはいち早く被災地に赴き、被災者の声に耳を傾け、励ましの言葉をかけられます。この姿勢は、心の支えとなり、復興への希望をもたらしています。
また、園遊会や各種式典での交流を通じて、社会の各界各層の人々を労い、顕著な功績を讃えています。
これらの行為は、日本社会に「一体感」や「連帯感」をもたらす重要な機会となっています。
外国賓客を迎えたり、国際的な行事にご出席されることで、日本の国際的な信頼や友好関係の構築にも寄与されています。
また、和歌や稲作、養蚕などの伝統文化を受け継ぎ、次世代に伝えることも、天皇の大切な公務の一つです。
天皇の公務は、国の根幹を支える国事行為から、国民一人ひとりの心に寄り添う公的行為、そして日本の精神文化を受け継ぐ祭祀まで、極めて幅広いものです。その数は年間1,300件以上という膨大なものであり、まさに「激務」といえるでしょう。
普段はなかなか目にすることのない天皇の公務ですが、その一つひとつが私たちの社会や国際関係、そして心のあり方に深く結びついています。
これを機に、ぜひ天皇の公務の意義や役割について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。