
再生医療の扉を開いた医師 ― 山中伸弥とiPS細...
9/30(火)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/09/25
予期せぬ病気や失業――人生には、誰しも困難な局面が訪れます。
日本には「健康で文化的な最低限度の生活」をすべての国民に保障する仕組みが用意されています。それが「生活保護制度」です。
本稿では、生活保護の基本原理から受給の流れ、具体的な支援内容、活用時の注意点まで、わかりやすく解説いたします。
※掲載の内容は2025年9月時点のものです。また生活保護の申請や受給にあたっては、お住まいの自治体の公式ホームページ等から最新の正確な情報を確認の上、行なってください。
生活保護は、経済的な困窮に陥った方に対し、国が「最低限度の生活」を保障し、自立を支援するための公的制度です。日本国憲法第25条に定められた「生存権」を具体化したものであり、誰もが平等に利用できる“最後のセーフティーネット”ともいえます。
生活保護法には、次の4つの「基本原理」が定められています。
「最後の砦」と呼ばれるのは、この補足性の原理があるからです。生活保護は、他の支援策や自助努力を尽くした“その先”に位置する制度なのです。
お住まいの地域の福祉事務所や民生委員に、生活に困っている旨を相談します。役所の窓口も利用可能です。ホームレスなど住所不定の場合は、最寄りの福祉事務所が対応します。
「生活保護申請書」や「収入・資産申告書」など、必要書類を用意して申請します。書類は、わからない部分があっても正直に記入し、虚偽の申告は絶対に避けましょう。
担当のケースワーカー(地区担当員)が、生活状況や資産・収入の有無、親族による扶養の可能性などを調査します。必要に応じて金融機関や保険会社に照会が入ることもあります。
調査をもとに、受給の要否や支給額などが決定されます。原則として、申請から14日以内に結果が通知されますが、状況によっては前後することもあります。
「保護開始決定通知書」または「却下通知書」が届きます。受給が決まれば「生活保護受給者証」が発行されます。
指定された支給日から、保護費の支給が始まります。地域によって支給日や金額が異なる点には注意が必要です。
もし決定内容に不服があれば、都道府県知事や厚生労働大臣に審査請求が可能です。
「自分は条件を満たしているのか不安…」という方は、まず福祉事務所に相談してみることをおすすめします。
生活保護は「生活費」がもらえるだけではありません。受給者の状況に応じて、以下8つの「扶助」が用意されています。
食費や光熱費、被服費など、日常生活を送るために必要な費用を支援します。
家賃や地代など、住居にかかる費用を補助します。上限額は地域や世帯人数によって異なります。
医療機関での治療費は、医療券の提示で自己負担ゼロ。現金支給ではなく、福祉事務所から直接医療機関に支払われます。
小・中学校の義務教育に必要な教材費や給食費などを補助します。高校進学時は「生業扶助」となります。
要介護認定を受けた40歳以上の方に、介護サービスの自己負担分を支援します。
出産時の分娩費や入院費など、不足分を補助します。
就職活動や職業訓練、資格取得の費用、または高校の就学費用などを支援します。
葬儀を行うために必要な費用(直葬など最低限のもの)を補助します。
一定の条件を満たす場合、基本の生活扶助に「加算」されるケースもあります。代表的なものは以下の通りです。
これらの加算で、個々の事情に応じた支援額が決定されます。
Q:生活保護を受けても国民健康保険証は使えますか?
A:生活保護を受給すると、国民健康保険証は使えなくなります。医療扶助で医療券が発行され、指定医療機関で無料診療が受けられます。
Q:支給された生活保護費に税金はかかりますか?
A:生活保護費は非課税です。
Q:ペットの飼育はできますか?
A:法的に禁止されていませんが、ペットの費用は生活扶助から工面する必要があります。医療扶助は適用されません。
Q:借金があると生活保護は受けられませんか?
A:借金があっても受給は可能ですが、生活保護費で返済することは禁止です。借金は債務整理など他の制度で対応します。
生活保護は、人生の困難を乗り越えるための制度です。「いざという時のために、知っておいてよかった」という声も聞かれます。
近年では、ケースワーカーや就労支援員が一人ひとりに寄り添い、再就職や社会復帰をサポートする体制も強化されています。大切なのは、一人で悩みを抱え込まず、まずは相談することです。
生活保護は、生活が立ち行かなくなったとき、あなたや大切な人の生活を守る“最後の砦”です。
そうした疑問や不安があれば、まずは最寄りの福祉事務所や相談窓口に足を運んでみてください。制度を正しく知ることが、人生の安心につながります。