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2025

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    渋谷がハロウィンの“聖地”になるまで――歴史・トラブル・そして未来

    渋谷がハロウィンの“聖地”になるまで――歴史・トラブル・そして未来

    10月末が近づくと、テレビやネットで取り上げられる「渋谷ハロウィン」。2023年も渋谷区長自ら「ハロウィン目的で渋谷に来ないでほしい」と異例のメッセージを発表し、駅周辺の路上飲酒禁止やハチ公前広場の封鎖など、厳戒態勢が敷かれました。しかし、その一方で仮装した若者や外国人観光客が集まり、話題になりました。

    なぜ、渋谷はハロウィンの“聖地”となり、騒動が起きるようになったのでしょうか?実は、そこには意外な歴史と社会の変化が絡み合っています。

    渋谷のハロウィンの歴史

    商店街・企業が仕掛けた“秋の新イベント”

    1980年代、渋谷区の恵比寿や代官山周辺の地元商店街が、「秋の名物行事にしたい」とハロウィンの仮装パレードを企画し始めたのがきっかけです。1987年には2,000人規模の仮装イベントが開催され、これが渋谷エリアにおけるハロウィン定着の第一歩となりました。

    百貨店や企業も続々と「ハロウィン商戦」に乗り出し、パーティーグッズや仮装グッズの販売を強化。西武百貨店渋谷店では本格的なSFXメイクサービスまで登場し、仮装文化を拡大していきました。

    1990年代~2000年代:イベント拡大と“騒動”の芽生え

    こうした地元発のイベントは、次第に規模を拡大。1990年代には渋谷駅近くや山手線沿線でも外国人や若者による仮装パレードが行われ、すでにこの頃から“騒動”の兆しが見え始めていました。実際、1992年や1997年には仮装した集団が電車内で大騒ぎし、警察が出動する事態も起きています。

    サッカーW杯とSNS

    2002年日韓ワールドカップと渋谷スクランブル交差点

    2002年の日韓ワールドカップで日本代表が勝利した夜、渋谷のスクランブル交差点には自然発生的に人々が集まり、歓声とハイタッチが広がりました。テレビ報道が一斉にこの光景を取り上げたことで、「渋谷で人が集まって盛り上がる」というイメージが定着しました。

    この時登場した警視庁の“DJポリス”も話題となり、渋谷=お祭り騒ぎの中心地という認識が一気に強まりました。以降、サッカーの試合や年越し、クリスマスなど、イベントごとに自然発生的な集まりが繰り返されていきます。

    SNSの普及が「集合のきっかけ」を拡散

    2010年代に入ると、SNSの普及により「渋谷でハロウィンを楽しもう」「仮装して集まろう」という情報が一気に拡散され、ますます人が集まるようになりました。もはや地元商店街だけでコントロールできる規模ではなくなっていきます。

    “楽しいイベント”から“社会問題”への転換点

    ゴミ問題・暴徒化・治安悪化

    2014年頃から渋谷駅周辺には若者だけでなく、全国・世界中から人が集まり始めました。このころから「街に捨てられるゴミ」や「騒音・暴力行為」などの問題が顕在化していきます。

    2018年には、ついに暴徒化した若者グループが路上の軽トラックを横転させる事件が発生。これにより、「渋谷ハロウィン=危険」「一部の人たちによる迷惑行為」というイメージが社会全体に広がることとなりました。

    路上飲酒・外国人観光客の増加

    新型コロナウイルスによる規制が緩和された2023年以降は、特に外国人観光客の増加が目立つようになりました。「渋谷は路上でお酒が飲める」という情報がSNSで海外に拡散し、2023年6月には週末1日あたりの路上飲酒者数が2.7倍に急増。これを受けて渋谷区は路上飲酒禁止条例を制定し、パトロール体制を大幅に強化しました。

    「ハロウィンの渋谷騒動」はなぜ止まらないのか?

    商店街の“子ども路線シフト”と若者の“自発的集まり”

    もともと地元商店街が主導していた仮装パレードは、2010年代以降「子どもと保護者限定」へと路線を変更しました。しかし、すでに若者たちや外国人観光客の間には「渋谷でハロウィンを楽しむ」という文化が定着しており、主催者不在でも自然発生的に大規模な集まりが生まれるようになっています。

    経済効果と地元店舗の“本音”

    「経済効果があるから良い」という意見もありますが、実際には混雑やトラブルでお客さんが入れず、売上が落ちる店舗も少なくありません。仮装姿のまま着替える場所やゴミ捨て場が確保できず、近隣店舗が対応に追われるケースもあります。むしろ「厄介なイベント」と感じている地元商店主の声も多く聞かれます。

    2024年の渋谷ハロウィン

    2024年も渋谷区は「ハロウィン目的の来街自粛」を呼びかけ、ハチ公前の封鎖や路上飲酒禁止、パトロール人数の大幅増員といった対策を講じました。それでも、ハロウィン当日の夜にはピーク時1万8,000人(前年比20%増)が渋谷駅周辺に集まり、混雑や一部危険行為が見られました。

    一方で、路上飲酒者は約200人と前年より減少。大きな事件・事故もなく、自粛の呼びかけや路上飲酒禁止条例に一定の効果があったと評価されています。しかし、仮装者の大半が外国人観光客に変化しており、外国人への情報発信も新たな課題として浮上しています。

    まとめ

    渋谷ハロウィンは、もともと地域の活性化や商戦目的で始まったイベントでした。しかし、今や主催者不在の「自発的カーニバル」と化しており、コントロールが難しくなっています。

    今後の展望・私たちができること

    • 一人ひとりがマナーとルールを守る意識を持つ
    • 行政・警察・地元商店街・観光業界が連携し、国際的な情報発信を強化する
    • 「騒ぐだけ」のイベントから「安心して楽しめる」文化への転換を模索する
       

    渋谷ハロウィンは、私たち日本社会が「多様な文化イベントとの向き合い方」「観光と地域社会のバランス」を問われる“現代の課題”そのものです。今後、渋谷の街がどのように変化し、ハロウィンというイベントが持続可能な形で共存できるのか――私たち一人ひとりの選択が、その未来を左右すると言えるでしょう。

    #渋谷ハロウィン#ハロウィン#渋谷#渋谷イベント#ハロウィン騒動#社会問題#観光客#インバウンド#外国人観光客

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