Diamond Visionary logo

3/24()

2026

SHARE

    「25億円の既存事業を捨て、ゼロから再始動」――WILLER代表取締役・村瀨茂高氏が語る、40歳での衝撃と“移動”で世界を動かす覚悟(前編)

    「25億円の既存事業を捨て、ゼロから再始動」――WILLER代表取締役・村瀨茂高氏が語る、40歳での衝撃と“移動”で世界を動かす覚悟(前編)

    この記事で紹介された企業

     「移動」というライフラインを通じて、社会に新たな価値をもたらし続けるWILLER株式会社。同社を率いる村瀨茂高氏は、30歳で起業し、40歳の節目にそれまでの全事業を白紙に戻すという大胆な決断を下した。なぜ、25億円もの売上を捨ててまで「交通インフラ」へと舵を切ったのか。楽天・三木谷氏の記事を見て受けた刺激から、ASEANを舞台にした最新のモビリティ戦略、そして「1%の革新」を追求する組織論まで。停滞する日本を飛び出し、ASEANから「リバースイノベーション」を起こそうとする村瀨氏の、揺るぎない志に迫る。

    40歳で味わった落胆。「明日からベンチャーにする」と宣言し、25億円の事業を捨てた

    30歳で起業し、順調に成長していた中、40歳の誕生日に大きな決断をされたそうですね。

     私の転機は、40歳の誕生日でした。30歳で起業した当初は「自分は結構頑張っている」という自負があったんです。初年度で12億円を売り上げ、社員も7人に増えていましたから。しかし、40歳の誕生日の朝、新聞で自分より一学年下の楽天・三木谷浩史さんの記事を目にして愕然としました。そこには「年商1兆円を目指す」と書かれていたんです。

     当時の私の会社の売上は、10年間で倍にはなっていましたが、25億円ほど。1,000億、1兆といった数字は、そもそも目指していなければ到達できるはずもありません。「俺は10年間、こんなことしかできなかったのか」と、猛烈な落胆に襲われました。

     その日、会社へ行って社員全員を集め、こう告げました。 「今日でうちの会社は一度潰しました。明日からベンチャーとして再始動します」 と。部長や課長といった役職もすべて白紙。25億円あった既存の旅行事業を1年かけて完全にやめ、全く新しい「交通インフラ事業」へシフトすることを決めたんです。

    競合は見ない、顧客だけを見る。「女性安心」や「競合企業の半額」を生んだ独自のマーケティング

    交通業界という伝統的な市場で、どのようにして「WILLER EXPRESS」のような革新的なサービスを確立されたのでしょうか。

     私たちは、 「他の交通事業者が何をやっているか一切見るな」 と徹底させています。競合を意識すると、どうしても「あそこに負けないように」という発想になり、既存市場の取り合いになってしまうからです。

     例えば、東京-大阪間の運賃を4,300円に設定した際、業界内からは「大手の半額にして価格破壊だ」と怒られました。しかし、実は当時の大手の運賃が8,600円であることを私は知らなかったんです。私たちがやったのは、ターゲットである学生への徹底的なアンケートでした。「週末、東京に遊びに行って食事をして帰るなら、いくらなら払えるか」という顧客の声からチャーター原価を考えて逆算で導き出したのが、1万円を切る往復運賃、片道4,300円だったのです。

     また、女性客の「夜行バスで隣席が知らない男性だと不安で眠れない」という切実な声から、女性の隣には必ず女性が座るようにシステムで設定するサービスも生まれました。既存のバス会社が「しょうがない」と諦めていた不平不満の中にこそ、 「新しい市場を作る」ためのヒントが隠されている のです。

    志を共にする「1%の変革者」たち。WILLERが定義する“真の仲間”とは

    組織づくりにおいて、どのような人材やチームを求めているのでしょうか。

     私たちの社名「WILLER」は、「WILL(志)」に「ER(人)」をつけた造語です。 「志のある人たちの集まり」 こそが、私たちの会社でありたい。

     日本の企業の99%が、安全・安心を守るための保守的な役割を担っているとしたら、私たちは 「1%の新たな価値を創造するイノベーター」 でありたいと考えています。採用の時点でも「自分たちで市場を作るのはしんどいけれど、それを面白いと思えるか」という、ある種の「ふるい」にかけています。

     ただ、個人の能力以上に大切なのは「風土」です。中途で入った社員が「なぜこの会社の人はこんなに一生懸命考えるんですか?」と驚くことがよくあります。甲子園を目指す強豪校に入れば、自然と自分も練習に打ち込むようになるのと同じです。 「誰もやっていないことを自分たちが形にする」というビジョンに共鳴し、当事者として動ける人。 それが私たちの定義する「仲間」です。

    日本の安全と海外のデジタルを融合。ASEANから起こす「リバースイノベーション」

    ラストワンマイルを担う「mobi」や、ASEANでの展開について教えてください。

     現在、私は拠点をシンガポールに移し、ASEAN全体で事業を捉えています。マレーシアではバスや地下鉄といった公共交通との接続性を向上させるため、ラスト/ファーストマイルを補完するAIオンデマンド交通「mobi」(アプリで呼ぶと、最適なルートで効率よく目的地へ送ってもらえる交通サービス)の実証を行い、単月で10万人以上が利用するまでになりました。これにより、駅までの自家用車利用を大幅に減らし、渋滞解消に貢献しています。

     今の日本は、デジタルの活用において海外に圧倒的に遅れをとっています。例えば、海外では公共交通のオープンデータ化が進み、アプリで「バスが今どこにいるか」がリアルタイムで分かるのが当たり前です。一方で、日本が世界に誇れるのは、高い「安心・安全」のクオリティです。

     これからは、 「世界最先端のデジタルサービス」と「日本の安全・品質」を融合させ、グローバルに使える公共交通プラットフォーム を構築していくつもりです。GrabやUberがタクシーの進化系なら、私たちは「公共交通の進化系」を目指す。それができた時、創業以来のミッションである「世界中の人の移動にバリューイノベーションを起こす」ことが、ようやく達成できると考えています。

    #トップインタビュー#WILLER株式会社#村瀨茂高#「神」サービス#顔の見えるマーケティング#「新しい市場を作る」という志

    この記事で紹介された企業

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    「SIerから“企業や社会の変革パートナー”へ」...

    記事サムネイル

    「まあ、なんとかなるわ」に宿る再登板の覚悟。大阪...

    記事サムネイル

    「フルーツの価値創造企業」へ。社長が語る技術と人...

    記事サムネイル

    「AIを使っている」と意識しない未来へ――ラクス...

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI