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2026

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    ブラジルで見た不条理を原点に、日本のコーヒーインフラを支え未来へつなぐ使命感。ユニカフェが挑む「価値経営」と2050年問題への共創

    ブラジルで見た不条理を原点に、日本のコーヒーインフラを支え未来へつなぐ使命感。ユニカフェが挑む「価値経営」と2050年問題への共創

     国内屈指の生産体制を誇り、多くの飲料メーカーやカフェチェーンのコーヒー製造を一手に担う株式会社ユニカフェ。「縁の下の力持ち」として日本のコーヒー文化を支えてきた同社を率いるのが、塩澤博紀代表取締役社長だ。

     商社マンとしてブラジル駐在など世界各国の生産地を渡り歩き、コーヒーの光と影を見つめてきた塩澤氏。なぜユニカフェは「インフラ」を名乗るのか。そして、業界全体に影を落とす「2050年問題」にどう立ち向かうのか。その原点となった生産国での体験から、社員と共に目指す「価値経営」の未来まで、熱い胸の内を語った。

    農作物と工業製品のギャップを埋める。缶コーヒーブームで鍛え上げられた「再現性」の技術

    国内屈指の生産体制を持つ貴社ですが、その競争力の源泉はどこにあるのでしょうか。

     私たちの強みは、農作物であるコーヒー豆と、工業製品である最終商品の間にある「品質のギャップ」を埋める技術力にあります。

     きっかけは2000年頃、缶コーヒー市場が急拡大した時期でした。缶コーヒーはいわゆる「工業製品」ですから、いつでもどこでも同じ味である「均質性」が求められます。しかし、原料のコーヒーは「農作物」です。産地や気候、収穫年度によって品質はどうしてもブレてしまう。この 「品質のブレ」をどう補正し、お客様と合意した風味をいかに正確に再現するか。 私たちはデータの蓄積と分析を徹底し、定性的・定量的なアプローチで試行錯誤を重ねました。

     このプロセスで培われた、風味や香気を科学的に分析・再現するノウハウが、現在のユニカフェを支える大きな基盤となっています。もちろん、近年は豆本来の個性を楽しむ「スペシャルティコーヒー」の需要も増えていますが、一方でオフィスや家庭で手軽に安定した味を楽しむ需要も根強い。この両方のニーズに対し、確かな技術で応えられるのが私たちの強みです。

    銘柄なき「日本のコーヒーインフラ」として。人々の日常と安らぎを黒子(くろこ)として支える誇り

    ユニカフェらしさ、すなわち貴社の存在意義をどのようにお考えですか。

     一言で表現するならば、私たちは 「日本のコーヒーインフラ」 でありたいと考えています。

     インフラとは、電気やガス、水道のように、人々の生活になくてはならない土台のことです。コーヒーもまた、現代社会において人々の生活を潤す「エネルギー」であり「潤滑油」のような存在です。インフラを担うには、一定の規模と安定供給、品質の一貫性、そして公共性が不可欠です。

     私たちは自社ブランドを前面に出す企業ではありません。しかし、OEM(相手先ブランド製造)を通じて、さまざまなお客様のブランドを支え、日本中にコーヒーという活力を供給しています。目立つことはなくとも、生活に根付き、社会に貢献する「ユーティリティ(有用な存在)」であり続けること。 これこそが、ユニカフェの果たすべき使命だと捉えています。

    「2050年問題」は地球規模の縮図。支援ではなく“仲間”として、生産国と共に未来を創る

    気候変動などにより、コーヒー栽培に適した土地が激減する「2050年問題」が叫ばれています。貴社では苗木の寄贈などサステナビリティ活動にも注力されていますね。

     「2050年問題」は、単にコーヒーが飲めなくなるかもしれないという危機にとどまらず、環境、資源、労働、需給の歪みといった地球全体の課題が凝縮された縮図だと感じています。コーヒーは非常にデリケートな植物で、気候変動の影響をダイレクトに受けます。生産者の努力だけではどうにもならない不条理な現実に、私たちは直面しているのです。

     だからこそ、私たちは生産国への関わり方を「一方的な支援」ではなく、 「未来を共に創る仲間(パートナー)としての活動」 にしたいと考えています。例えば、苗木プロジェクトも単に寄贈して終わりではありません。その苗木が育ち、実をつけコーヒーとして私たちの元へ戻ってくるまで取組を発展させたい。その過程で、環境負荷の低い農法を共に模索し、持続可能な関係を築いていく。これは 「CSV(共通価値の創造)」 の考え方そのものです。

     生産国、社員、お客様、株主。すべてのステークホルダーと価値観や責任を共有し、共に課題解決に取り組むことで、コーヒーの未来をつないでいきたいのです。

    原点はブラジル駐在時代の衝撃。生産者の「たくましさ」と「不条理」が原動力になった

    社長のその熱い想いは、どこから来ているのでしょうか。これまでのご経験で影響を受けた出来事はありますか。

     私の原点は、商社マン時代に通算8年間駐在したブラジルでの体験にあります。当時、現地の生産地域を回る中で、貧富の差の激しさや、生産者たちの置かれた厳しい現実を目の当たりにしました。

     彼らは非常にたくましく、コーヒー生産に誇りを持っています。しかし、どれだけ努力しても、経済的な環境や相場の変動によって、その努力が報われないことがある。 「努力と対価が比例しない不条理」 を何度も見てきました。

     一方で、彼らには底抜けの明るさもありました。貧しくても、サッカーボール一つあれば裸足で楽しみ、年に一度のサンバで情熱を爆発させる。苦しみを表に出さず、今を楽しむその精神的な強さに、私自身が救われ、鍛えられた部分もあります。

     だからこそ、彼らの努力が正当に報われる仕組みを作りたい。生産国の人々の顔が常に脳裏にあること が、私がこの仕事に情熱を注ぎ続ける最大の原動力になっています。

    変化を恐れず、過去を捨てる勇気を。「価値経営」で目指す、社員と社会の好循環

    最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

     現在、中期経営計画のテーマとして 「価値経営」 を掲げています。世の中の価値観が急速に変化する中で、私たち自身も過去の成功体験に安住してはいけません。社員には「古くなった価値は捨てる勇気を持ち、小さくてもいいから新しい価値を創造しよう」と伝えています。失敗の責任は私が取りますから、変化を恐れずに挑戦してほしいのです。

     社員一人ひとりが自分の仕事の価値を再認識し、それを社内外に発信していく。そうすることで、お客様からの信頼が高まり、会社の成長につながり、ひいては生産国への貢献にもつながっていく。この 「価値の好循環」 を生み出すことが私の役割です。

     日本のコーヒーインフラとしての責任を果たしながら、次の世代、そして世界中の仲間と共に、コーヒーの持つ可能性を未来へとつないでいきます。

    #コーヒー#ユニカフェ#サステナビリティ#2050年問題#価値経営#経営理念#トップインタビュー

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