
「我思う、ゆえに我あり」──デカルトの哲学がビジ...
8/13(水)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/08/07
性善説という言葉を知っている方は多いと思います。古代中国の哲学者、孟子は
「人は誰しも生まれながらにして善である」
と言いました。しかし、性善説に関して、誤解や表面的な理解も少なくありません。
この記事では、孟子の哲学、性善説の正しい意味と大切なポイントを解説します。
孟子は、中国の春秋戦国時代に活躍した思想家・儒学者です。父を早くに亡くし、「孟母三遷」という故事にあるように、教育熱心な母によって育てられました。
孟子は孔子の教えを土台に独自の哲学を築き上げ、諸国を巡って理想の政治を説きました。しかし、思うような成果を上げることはできず、弟子たちと共に自らの思想を『孟子』という書物にまとめました。この書は儒教の重要な経典「四書」の一つとなり、東アジアに広がっていきました。
孟子の哲学の真髄は、「性善説」にあります。
「性」とは「生まれつき」、そして「善」とは「倫理的」。つまり、人は誰もが本来、倫理的で善良な心を持って生まれる、という考え方です。
ただし、孟子は「全ての人が無条件に善人である」と言っているわけではありません。人の心に善の芽はあっても、育まなければ枯れ、環境や怠慢によって悪にも染まる。
「性善説」は単なる楽観主義ではなく、「善性を育てる努力こそが人をつくる」という教育の大切さを伝えるものです。
孟子は、人の心には生まれつき四つの道徳的感情があると説きました。
孟子は、「王道政治」――すなわち、君主は徳をもって民を治めるべきだと主張しました。権力や武力で人々を従わせるのではなく、リーダー自身が模範となり、民衆の幸福を第一に考える政治が理想とされ、
「民を重んじるは最も貴く、社稷(国家)はこれに次ぎ、君主は最も軽し」
という言葉を残しました。これは国家や君主よりも民衆が大切であるという、画期的な考え方でした。
孟子が説いた「四端」は、現代で言う心理的安全性やエンゲージメントにも通じます。
孟子の王道政治は、現代のリーダーシップ論にも通じます。上司や経営者が徳を示し、部下の成長に心を砕くことで、自然と組織はまとまっていきます。
「全員が無条件に善人だから、何も管理しなくていい」――こうした極端な考えは、性善説を間違って捉えており、組織を崩壊させかねません。
孟子は、「善の芽はあるが、育てなければ悪にもなる」と明言しています。したがって、
こうしたバランス感覚が不可欠です。
ビジネスの現場は、成果や数字に追われがちです。しかし、組織を本当に強くするのは、「人間をどう見るか」「部下や同僚をどう信じ育てるか」という根本の人間観です。
孟子は「人の善性を信じ、育てよ」と語りました。
私たちが組織や社会に信頼と成長の循環を生み出すには、この哲学が新しいヒントになるはずです。