正解のない時代――ニーチェの哲学の活用法
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ミルトン・フリードマン――「自由」の本質でビジネスを変える力
ビジョナリー編集部 2025/09/08
突然ですが、あなたは「規制がなければ、もっと自由にビジネスができるのに」と思ったことはありませんか?
グローバル競争、急速な市場変化、規制緩和の波――。
現代のビジネス環境では「自由」と「規制」のバランスが、業績やキャリアに直結する時代です。
そんな今こそ知ってほしい人物、それがミルトン・フリードマンです。彼の思想を知ることで、ビジネスの本質やチャンスの見つけ方がきっと変わります。
ミルトン・フリードマンとはどんな人物か?
ミルトン・フリードマンは、20世紀後半を代表するアメリカの経済学者です。
1976年にノーベル経済学賞を受賞し、シカゴ大学教授として多くの経済学者を育てました。彼とその弟子は「シカゴ学派」と呼ばれ、政治にも大きな影響力を及ぼしました。
フリードマンの経済思想
新自由主義
新自由主義とは、政府の介入は最小限に留めて、市場原理に任せるべきという考え方です。アダム・スミスが「見えざる手」と表現した自由放任の考え方をさらに徹底し、政府のあり方として2つの原則を提案しました。
- 国防(国を外国の攻撃から守り、国内においては個人を他者からの暴力を受けないようにする)
- 政策はなるべく下の自治体に任せる(国の政策に不満があっても移住は難しいが、地方の自治体の政策に不満があれば、他の地域に移住できるから)
彼の思想はアメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権、日本の中曽根政権など、世界中の政策に影響を与えました。
マネタリズム(貨幣数量説)
フリードマンの経済思想で、もう一つの大きな柱が「マネタリズム」です。
ケインズの「政府による財政政策で景気を操作する」という考え方に異を唱え、「中央銀行が貨幣供給量を安定的にコントロールすれば、経済も安定する」という理論を展開しました。
その根底には「貨幣は取引の仲立ちにすぎず、経済の本質的な成長は市場の力に委ねるべき」という信念があります。
フリードマン理論がビジネス現場に与えるインパクトとは?
「規制緩和」と「自己責任」――自由な市場でどこまで戦えるか?
フリードマンの思想がビジネスに持ち込まれた具体例は数多くあります。
- 日本の民営化政策
中曽根政権下でのNTTやJRの民営化。これにより、競争原理が導入され、サービスの多様化や効率化が進みました。 - 雇用の規制緩和
小泉政権時代の派遣労働の自由化。企業は柔軟な人材活用が可能となり、コスト削減や迅速な事業展開を実現しました。
これらの変化の背景には、フリードマン流「自由な市場こそが最適解」という理念が色濃く反映されています。
フリードマン思想をビジネスで生かすための「3つのポイント」
1. 「小さな政府」=自分で考え、自分で動く
フリードマンは「政府の役割は国防と治安維持、そして最低限の社会制度に限るべき」と説きました。
これをビジネス現場に置き換えれば、「指示待ち」や「過度なルール遵守」から脱却し、自ら課題を見つけて解決する姿勢が求められます。
具体例
- 「トップダウンで決まるまで動けない」ではなく、「現場で最適な判断を即座に下す」
- 市場や顧客の声に敏感に反応し、素早くサービスやプロダクトを改良する
2. 規制緩和の恩恵を最大化するには「競争力アップ」が必須
規制が緩和されることで新規参入や競争が激化します。
フリードマン流の世界では、「強い者が勝ち、弱い者は退場する」。
つまり、ビジネスパーソンとしては「自分(自社)の強み」を明確にし、常に磨き続けることが生き残りのカギとなります。
具体例
- 柔軟な働き方や副業解禁など、個人のスキルアップやキャリアの多様化が推進される
- 企業も社内ベンチャーや新規事業の立ち上げを積極化
3. 「自己責任」と「市場の信頼」――リバタリアンの精神を持て
フリードマンの根底に流れるのはリバタリアニズム、すなわち「人に迷惑をかけない限り、自由に行動してよい」という哲学です。ビジネスにおいても、
- 自分の判断に責任を持つ
- 他者や市場をリスペクトする
- 結果に対して言い訳せず、次の行動に活かす
これが、現代社会で信頼されるビジネスパーソンの条件です。
フリードマン思想にも「落とし穴」がある
格差拡大、弱者切り捨て――「行き過ぎた自由主義」の影
フリードマン流の「自由な競争」は、確かに経済を活性化させ、イノベーションを促します。しかし一方で、
- 格差の拡大
アメリカや日本で見られるように、規制緩和の結果、富める者と貧しい者の差が拡大しました。派遣切りや非正規雇用の拡大など、「強者の論理」が社会に影を落としました。 - 社会的弱者への配慮不足
最低賃金制度や社会保障の否定は、生活のセーフティーネットを脆弱にする危険性もあります。
つまり、「自由」には必ず「責任」と「配慮」が伴うことを忘れてはいけません。
今こそ考えたい「フリードマン理論の現代的活用法」
1. 「自由な発想」をビジネスの源泉に
フリードマンのように「常識」や「前例」にとらわれず、自らの頭で考えることが、新しい価値やサービスを生み出します。
ケーススタディ
- スタートアップ企業が大企業の既存サービスに挑戦し、市場を変革する
- 社内で「これまでのやり方」に疑問を持つメンバーが、新プロジェクトを立ち上げる
2. 「競争と共感」を両立させる
単なる弱肉強食ではなく、競争のなかにも「共感」や「社会的責任」を持ち込むことで、持続的な成長が実現できます。
アクション例
- 企業がCSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む
- 個人もボランティアや地域活動に参加し、社会との接点を増やす
3. 「規制緩和=全て善」ではない。バランス感覚を持て
自由競争の良さと、社会全体の安定や公正さ。このバランスを見極めることが、現代のビジネスパーソンには不可欠です。
まとめ:フリードマンの教えを「自分流」に昇華しよう
ミルトン・フリードマンの思想は、今も世界中の経済政策やビジネスの現場に影響を与え続けています。
- 「規制」や「常識」に縛られず、自分で考え、行動すること
- 市場や顧客を信じ、常に自己変革を続けること
- 自由の恩恵と責任、そして社会的配慮を忘れないこと
これらを心がけることで、どんな環境でも「チャンス」を自らつかみ取ることができるはずです。
今こそ、フリードマン流「自由」の本質を、あなたのビジネスに生かしてみてはいかがでしょうか。


