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産後ママの8割が経験する「マミーブレイン」──物忘れ・集中できない原因を徹底解説
ビジョナリー編集部 2025/12/19
「物忘れが激しくなった」「何かをしようとしても、ついぼーっとしてしまう」。出産を経験した多くの女性が口にする感覚。それは「疲れ」や「気のせい」ではないかもしれません。
実は、こうした産後特有の現象は「マミーブレイン」と呼ばれ、出産した女性の約8割が経験しているとされています。では、この「マミーブレイン」や出産による心身の変化には、どんなメカニズムが隠されているのでしょうか?
出産は「全治2ヶ月の事故」と同じ?身体へのダメージの実態
出産は「全治2ヶ月の交通事故」と同等のダメージを体に与える、と言われています。新しい命を迎えるという大きな喜びの裏で、母体は想像以上の負担を受けているのです。
主な身体的ダメージ
1. 会陰や産道の損傷
- 自然分娩の場合、赤ちゃんが産道を通る際に会陰(膣と肛門の間)が大きく伸ばされ、裂傷や切開(会陰切開)が必要になるケースもあります。
- 傷の回復には時間がかかり、痛みや違和感がしばらく続くこともあります。
2. 骨盤のゆがみと痛み
- 妊娠・出産を通じて骨盤はホルモンの影響で大きく開きます。
- 産後は骨盤が元に戻ろうとしますが、歪みが残ると腰痛や姿勢の崩れ、尿漏れなどのトラブルにつながることも。
- 骨盤ベルトや産後体操によるケアが推奨されます。
3. 子宮の回復と後陣痛
- 出産後、子宮は元の大きさに戻るために強く収縮します(後陣痛)。
- この回復には6~8週間かかり、その間は出血(悪露)が続きます。
4. 帝王切開の場合
- 帝王切開は腹部と子宮を切開するため、傷の回復にはより長い時間を要します。
- 術後の痛みや体力低下も大きな負担となります。
産褥期の過ごし方
産後の体が妊娠前の状態に戻るまでを「産褥期」と呼び、体が回復するまでに6~8週間かかることが目安です。この時期は無理をせず、休養を取ることを優先しましょう。激しい運動、長時間の外出などは避け、身の回りの最低限のことだけにとどめましょう。どうしても外出しなければならない用事などがある場合はパートナーや身近な人を頼りましょう。
ポイント
- 産後3週間までは徹底して休む
- 3~4週間目から徐々に家事を再開
- 5~8週間で体調に合わせて元の生活へ
脳の機能は本当に低下するのか?
脳の変化を示す科学的エビデンス
近年、『Nature Neuroscience』などの権威ある学術誌で発表された研究によると、妊娠~出産にかけて女性の脳は大きな変化を遂げていることが明らかになっています。
- 妊娠中、脳の灰白質(知覚・記憶・判断を担う部位)が最大7%ほど一時的に減少
- 大脳皮質の厚みが広範囲で薄くなる
- こうした変化は出産後も半年~2年程度続く場合がある
つまり、脳の「萎縮」とも言える現象が、妊娠・出産を通じて実際に起こるのです。
「母性脳」への進化という側面
一方で、脳の全領域が機能低下するわけではありません。最近の研究では、共感や愛着、赤ちゃんの泣き声への反応といった「母性行動」に関わる部分はむしろ発達すると判明しています。
- 赤ちゃんとの絆形成、巣作り本能(家を片付けたくなる、など)、危険察知能力の向上
- 育児に集中しやすくなるよう脳回路が「再配線」される
つまり、脳の一部の機能は一時的に低下するものの、母親としての新しい役割に適応するための進化と言えるでしょう。
マミーブレインの症状と日常生活への影響
よくある症状
- 物忘れが増えた
- 会話の途中で言葉が出てこない
- 時間管理が苦手になった
- 同時進行の作業が難しくなった
- ぼーっとして家事の手順を忘れる
経験談の一例
- 「買い物に行ったのに、何を買うか全部忘れてしまった」
- 「家事の途中で何をしていたか分からなくなった」
- 「赤ちゃんのミルクをあげた時間がどうしても覚えられず、アプリで記録していた」
これらの症状は、仕事や家事、育児に直接影響を与え、時には思わぬミスや事故につながることもあるため、適切な対処が必要です。
マミーブレインの原因
マミーブレインが起きる背景には、主に次の3つの要因が挙げられます。
1. 一時的な脳の萎縮ともいえる現象
妊娠中のホルモン変化により、脳の一部が一時的に変化します。これが、記憶力や集中力、判断力の低下につながると考えられています。
2. 睡眠不足と慢性的な疲労
赤ちゃんの夜泣きや頻回授乳で、産後ママは慢性的な睡眠不足に陥りやすいもの。十分な睡眠が取れないことが、脳の働きの低下に拍車をかけます。
3. ホルモンバランスの急激な変動
妊娠・出産を通じてエストロゲン、プロゲステロンといった女性ホルモンが急増・急減します。これが、気分や記憶、感情コントロールなど脳機能に大きく影響します。
マミーブレインはいつまで続くのか?
多くの場合、半年~1年程度で症状は和らぎ、2年ほどで脳の構造も元に戻ると言われています。アンケート調査でも「2ヶ月以内に改善した」方が最も多い一方で、1年以上続いたというケースも2割程度存在します。産後の心身の回復と同じく、マミーブレインの期間にも大きな個人差があるのが現実です。
マミーブレインと上手に付き合うためのヒント
1. メモやスマホを活用する
- やるべきことは紙やアプリに記録
- アラームやリマインダーで予定を管理
2. 周囲にサポートを求める
- 状態や必要なサポートを家族やパートナーに伝える
- 家事や育児の負担を分担
3. 睡眠・休息を最優先
- 赤ちゃんが寝ている間は一緒に昼寝
- 1日合計8時間程度の睡眠を目標に
4. コミュニケーションで脳を刺激
- 家に引きこもらず、できる範囲で人と話す
- 時には赤ちゃんと離れてリフレッシュ
5. 栄養バランスと水分補給を意識
- 食事は「回復」と「母乳」のためにしっかりと
- 無理なダイエットや過度な運動は避ける
マミーブレインと産後うつの違いに要注意
マミーブレインは一時的な現象ですが、以下のような症状が2ヶ月以上続く場合は「産後うつ」の可能性もあります。
- 何もやる気が起きない
- 赤ちゃんがかわいいと思えない
- 食欲がない、眠れない
- 涙が止まらない、絶望感が続く
- 「消えてしまいたい」と考えてしまう
こうした場合は、早めに産婦人科やメンタルクリニックに相談しましょう。地域の保健所でもサポートを受けられます。
まとめ
出産は、体だけでなく脳や心にも大きな変化をもたらします。「マミーブレイン」は決して“怠け”や“気のゆるみ”ではなく、赤ちゃんを守り育てるために脳が新しい役割へ適応している証拠です。
一時的に記憶力や集中力が低下したように感じることがあっても、多くは時間とともに自然に回復していきます。
大切なのは、無理をせず休むこと、周囲に助けを求めること、そして自分を責めないこと。もし不安が続く場合は専門家に相談することで、より早く安心を取り戻すことができます。
赤ちゃんと同じように、あなた自身の体と心もゆっくり回復していきます。焦らず、自分のペースで“産後の毎日”を乗り越えていきましょう。


