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2026

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    大学発の米が市場を揺らす──「ゆうだい21」が評価を高める理由

    大学発の米が市場を揺らす──「ゆうだい21」が評価を高める理由

    今、日本全国の米農家や関係者の間で話題を集めているのが「ゆうだい21」という品種です。まだその名前に馴染みがない方も多いかもしれませんが、知れば知るほど、現代の日本の食卓や農業に与える影響の大きさが見えてきます。

    偶然の発見から始まった「奇跡の米」

    「ゆうだい21」は、1990年に宇都宮大学の農学部附属農場で、当時助教授だった前田忠信名誉教授によって、今までにないほど大きな稲穂が偶然発見されたことをきっかけに研究が始まりました。何千株もの中からほんの一株、ひときわ目立つ稲穂を見逃さなかった研究者の直感と努力が、新しい品種誕生へとつながっていきました。

    この「ゆうだい21」は、17年以上もの試験・選抜の歳月を経て、2010年に正式な品種登録に至りました。名前の由来には、宇都宮大学の「宇大(うだい)」、発見時の「雄大」な姿、そして21世紀の未来を作るという意味が込められているとのことです。

    既存のブランド米に挑む大学発の異色品種

    従来、日本の主なブランド米は各県の農業試験場や国の研究機関で開発されてきました。しかし、「ゆうだい21」は県や国主導ではなく、大学発という異色の存在です。この点が関係者の注目を集め、米業界に新たな風を吹き込んでいます。

    宇都宮大学は品種開発だけでなく、種もみの生産や販売、さらには栽培方法の指導にも主体的に取り組み、地道に普及活動を進めてきました。その結果、2024年には全国約1300軒の農家が「ゆうだい21」を手がけるまでになっています。

    見た目も味も「規格外」―その味と特徴

    では、「ゆうだい21」は何がそんなに違うのでしょうか。まず目を引くのが粒の大きさです。コシヒカリと比べても長径が長く、炊き上がりの見た目も迫力があります。口に入れると、ほのかにコーンに似た甘い香りが鼻に抜け、しっとりとなめらかな粘りが舌に残ります。

    特筆すべきはその粘りの強さです。炊きたての粘りはコシヒカリの5.5倍ともいわれ、冷めても柔らかさと美味しさが持続するため、お弁当やおにぎりにも最適です。事実、6時間経っても炊きたての食感がキープされるというデータもあります。

    また、気候変動の影響で夏場の気温が増すなか、「ゆうだい21」はコシヒカリよりも暑さに強く、猛暑年でも白未熟粒が発生しにくいという大きな強みを持っています。2023年の記録的な猛暑でも品質を維持し、コンクールで多くの賞を獲得したことがその強みを物語っています。

    受賞歴が示す「実力」―品評会を席巻

    「ゆうだい21」の実力は、国内最大規模の「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」など各種コンクールでの実績が物語っています。近年では、最高賞に選ばれた18銘柄のうち、12銘柄を「ゆうだい21」が占めました。かつてコンクールを席巻していたコシヒカリの牙城を揺るがす存在として、業界で大きな話題となっています。

    こうした受賞実績が農家のブランド力向上につながり、「ゆうだい21」は農業者の間で「コシヒカリを超えるかもしれない品種」として期待を集めています。特に寒暖差の大きい中山間地では、猛暑年でも食味や等級が安定しやすく、手間をかけた分だけ品質に反映される点が高く評価されています。その希少性やストーリー性も相まって、コシヒカリを上回る価格で取引される例も見られます。

    普及の壁と、これからの挑戦

    「ゆうだい21」が広く一般に流通し、食卓の定番米になるまでには課題もあります。一つは栽培の難しさです。この品種は稲の背丈が高く、生育が旺盛なため、倒伏リスクを抑えるための細やかな肥料管理や栽培技術が求められます。大量生産や効率を重視する平地の大規模農家よりも、手間を惜しまない小規模農家の方が適しているという事情もあり、生産量の拡大には時間がかかっています。

    また、県内スーパーへの卸を始めたことや、ふるさと納税や産直サイトを利用して「ゆうだい21」を購入する消費者が増加するなど、流通や販売網の確立は進んでいますが、県やJAによる大規模なバックアップが足りないという厳しい現状も課題の一つです。

    未来を照らす「ゆうだい21」の可能性

    「ゆうだい21」は偶然の発見から始まり、大学主導の地道な研究と栽培指導、そして生産者の熱意によって今の地位を築いてきました。主要な品評会でその実力を示し、暑さに強く、冷めてもおいしいなど、現代のニーズにも合致した特徴を備えています。今後は「つや姫」や「ゆめぴりか」のような家庭用ブランド米として、さらに市場での存在感を高めていくことでしょう。

    宇都宮大学では、全国の農家と共に地域ごとの栽培マニュアルを作成し、生産と品質の底上げに努めています。「ゆうだい21」を、コンクール向けの特別な米ではなく、日常の食卓に並ぶ米として、より多くの人々にその魅力を届けることが目標です。

    これからお米を購入する際には、ぜひ「ゆうだい21」の名前を思い出してみてください。その粒の大きさ、豊かな甘み、そして冷めても続くもちもち感。食卓に新しい感動が加わるかもしれません。「ゆうだい21」が日本の米市場にどんな革新をもたらすのか、今後も目が離せません。

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