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集中できない・締切が守れないのはなぜ?『隠れADHD』の症状と向き合い方
ビジョナリー編集部 2025/12/02
「会議中に気が散ってしまう」「締切を守れずに悩んでいる」――誰にでも起こりうることですが、もしこうした状態が頻繁に続くようなら、“隠れADHD”の可能性があるかもしれません。
近年、ADHD(注意欠如・多動症)は子どもだけの問題ではなく、大人になってから気づくケースが増えています。“隠れADHD”と呼ばれる、外見や普段のふるまいでは目立たないタイプの方が、職場や日常で困難を感じていることが多いのです。
では、ADHDとはどのような特徴を持つのでしょうか。そして、もし診断を受けた場合、どのように向き合い、どんな工夫を取り入れればよいのでしょうか。本記事では、最新の知見と事例を交えながら、ADHDの特徴と日常でできる対処法をわかりやすく紹介します。
ADHDとはどんな状態なのか
ADHDは「注意欠如・多動症」とも呼ばれ、主に以下の3つの症状が見られます。
- 不注意:集中力が続かず、物事を忘れやすかったり、細かい作業でミスが多くなったりします。
- 多動性:じっとしているのが苦手で、落ち着きなく動き回る傾向があります。
- 衝動性:思いついたらすぐ行動に移してしまい、計画性に欠けることがあります。
これらの症状は子どもの頃から見られることが多いですが、大人になるにつれて多動性は目立たなくなり、不注意や衝動性が主な困りごととして残るケースが多いです。
“隠れADHD”とは?
ADHDといえば、じっとしていられない、授業中に歩き回る、といった“分かりやすい”行動が注目されがちでした。しかし最近では、外見上は落ち着いて見えるものの、集中力が続かない、締切や約束を守るのが苦手といった悩みを抱えるタイプが増えています。
たとえば、成績は良いのに宿題の提出が極端に遅れがち、仕事の細かいミスが多い、といったケースです。
ADHDの具体的な特徴
「誰にでも、うっかりして忘れることや集中できない時はあるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしADHDの場合、それが日常生活や仕事に支障をきたすレベルで継続します。
具体的な症状例
- 忘れ物やなくし物が多い
- 会議の内容や指示をすぐに忘れてしまう
- 興味のない業務には極端に集中できない
- 手帳やメモを何度もなくしてしまう
- 重要な期日を繰り返し失念してしまう
- 人の話を途中で遮ってしまう
- 予定立てや優先順位付けが苦手
- 気が散りやすく、複数タスクを同時に抱えると混乱する
これらの症状は、“うっかり”や“性格”ではなく、脳の働き方に関係している場合があります。
見た目では分かりにくい「隠れADHD」
ADHDの症状は、一見して分かりづらいことが少なくありません。たとえば、周囲からは「普通に見える」または静かにしているけれど心の中では常に不安や焦りを感じていたり、他人には分からない“脳内の混乱”を抱えていることもあります。
女性や大人に多い“不注意型”
特に女性の場合、「不注意型」と呼ばれるタイプが多いことが分かっています。外見上は“しっかり者”や“落ち着いた人”に見えても、実は頭の中では「集中力が持たない」「やるべきことを忘れてしまう」といった悩みを抱えています。
このため、「性格の問題なのか、ADHDなのか分からない」と感じる方も多く、診断までに時間がかかることが珍しくありません。
なぜADHDになるのか?
ADHDの原因は、完全には解明されていません。しかし、脳内の神経伝達物質(主にドーパミンやノルアドレナリン)の働きが関係していることが分かっています。
また、遺伝的な要素も強く、家族や親族にADHD傾向のある人がいる場合、発症率がやや高くなると報告されています。育て方や本人の努力・しつけだけでADHDになるわけではありません。
ADHDの診断基準とプロセス
ADHDの診断は、医師や臨床心理士による面談、行動観察、心理検査などをもとに行われます。
診断基準のポイント
- 症状が6か月以上続いている
- 複数の場面(家庭、学校、職場など)で症状が現れている
- 日常生活や社会生活に支障をきたしている
- 他の精神疾患や病気によるものではない
特に重要なのは、「日常生活でどのくらい困っているか」という点です。たとえば、仕事のミスが続いて職場で注意される、友人や家族との関係がトラブルになりがち、といった実際の困りごとが診断のカギとなります。
ADHDと間違われやすいケース、気づきにくさの背景
ADHDの症状は、うつ病や不安障害など、他の精神疾患でも見られることがあります。また、性格や一時的なストレスと誤解される場合も多く、適切な診断に至らない例も少なくありません。
- 男性は多動性が目立ちやすく、早期発見されやすい
- 女性は不注意型が多く、見過ごされやすい
- 大人になってから困りごとが顕在化し、初めて診断されるケースも多い
社会生活が複雑になるほど、本人や周囲が“何か違う”と気付きやすくなる傾向があります。
日常生活でどんな困難が起こるのか
学業・職場での困りごと
- 課題やレポートの提出期限を守れない
- 会議や授業中、集中が途切れて話についていけない
- 優先順位を付けられず、複数タスクでパニックになる
- ケアレスミスやデータ入力ミスが繰り返される
人間関係での影響
- 無意識のうちに人の話を遮ってしまう
- 衝動的な言動でトラブルになる
- 忘れ物や遅刻で信頼を失う
- 感情の起伏が激しくなりやすい
二次障害のリスク
ADHDによる困難が長期間続くと、自信や意欲の低下、うつ病や不安障害といった「二次障害」を引き起こすことが珍しくありません。
実際の事例
ある女子高生の事例をご紹介します。彼女は小さい頃から忘れ物が多かったものの、成績は良く、周囲からは“しっかり者”と見られていました。しかし学年が上がるにつれて課題や宿題の量が増え、期限が守れずに先生から何度も注意されるようになりました。
興味のあることには徹底的に集中し、時には寝る間も惜しんで没頭。しかし、興味のない課題は全く手につかず、提出期限を頻繁に過ぎてしまう…。やがて、自己否定感やストレスから不眠やうつ症状が現れ、家族とともに医療機関を受診した結果、“不注意型ADHD”と診断されました。
診断されたら、どんなことに気をつければよいか
ADHDと診断されたからといって、すぐにすべてが変わるわけではありません。しかし、日常生活をより快適に過ごすための「コツ」や工夫を知ることで、困りごとを減らすことができます。
1. 自分の特性を知る
まずは、自分がどのような場面で困りごとが生じやすいのかを把握しましょう。
- どんな時に忘れ物をしやすいか
- どんな作業が苦手か、逆に得意なことは何か
- 周囲からどんなことで注意されやすいか
この“自己理解”が、対策の第一歩となります。
2. 日常生活の工夫
- リマインダーやアラームを活用:スマホのアプリや予定表、アラームを使って、予定や締切を“見える化”しましょう。
- 持ち物の定位置を決める:カバンやデスク、家の中で、必ず同じ場所に物を置く習慣をつけます。
- 一度に一つの作業に集中:同時進行ではなく、一つずつ着実にタスクをこなす工夫が有効です。
- 優先順位を“数字”でつける:やるべきことをリストアップし、重要度や締切順に番号を振ってみましょう。
3. 周囲の協力を求める
職場や学校で“合理的配慮”をお願いすることも大切です。たとえば、
- 席の位置を配慮してもらう
- テストや課題の時間延長
- 集中しやすい環境づくり
自分一人で抱え込まず、周囲と相談することで、日常のストレスを減らせます。
4. 医療機関や専門家のサポート
困りごとが強い場合は、医師や臨床心理士のサポートを受けましょう。薬物療法や認知行動療法(CBT)、コーチングなどの治療・支援法があります。
主な治療法
- 薬物療法:ドーパミンやノルアドレナリンの働きを調節する薬(例:コンサータ、ストラテラ、インチュニブなど)
- 認知行動療法:考え方や行動のクセを見直し、ストレスや困りごとに対処する方法を学びます。
- ソーシャルスキルトレーニング:日常のコミュニケーションや対人関係の工夫をロールプレイなどで学ぶ
- 環境調整:集中しやすい空間づくりや、仕事の進め方の見直しなど
5. “無理をしすぎない”ことも大切
ADHDの特性は、“怠け”や“努力不足”によるものではありません。苦手なことを責めるのではなく、できる範囲で工夫しながら、自分を認めてあげることが長期的な安定につながります。
社会全体として求められる理解と工夫
ADHDは「個人の問題」だけではなく、社会全体が理解とサポートを広げることが重要です。
- 正しい知識の普及:ADHDに対する偏見や誤解をなくし、多様な特性を認め合う社会づくりが求められます。
- インクルーシブな環境整備:柔軟な勤務形態や学習プログラム、合理的配慮の導入が、本人の力を最大限に発揮する土台となります。
まとめ
ADHDは、見た目だけでは分かりづらい“特性”を持っています。困りごとを感じているなら、それは「怠け」や「甘え」ではありません。
- まずは“自分の特性”を知り
- 日常生活での工夫を取り入れ
- 周囲や専門家の力も借りながら
- 無理せず、自分らしいペースで過ごす
こうした積み重ねが、ADHDとともに前向きに生きていく力になります。
もし「自分もそうかもしれない」と感じたら、独りで抱え込まず、一度専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、あなたの毎日を少しずつ軽くし、生きやすさにつながるきっかけになるはずです。


