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「あえて色を見せない」口紅のプロモーション。リップ戦国時代に老舗・伊勢半が仕掛けた“暗闇”の戦略
ビジョナリー編集部 2026/03/31
視覚を捨て「唇」の感覚に全集中。老舗・伊勢半が仕掛けた、異例の“暗闇の口紅店”が狙う戦略
熾烈な競争が続くリップ市場において、キスミー フェルムの口紅「ルージュアクト トリコタッチ」は異彩を放っている。同商品が何よりこだわったのは、スペックや色味以上に「塗り心地」そのものだという。
その魅力を伝えるべく、東京・表参道で実施されたプロモーションが話題を呼んだ。イベント名は「暗闇の中のルージュ店」。本来、色味や仕上がりを鏡で確認しながら選ぶはずの口紅を、あえて「視界を遮る」ことで選ばせるという、前代未聞の試みだ。
意識を唇の感覚だけに集中させ、最適な温度・圧力・角度で施される“人生最高のひと塗り※”を体験してもらう。このユニークなイベントの舞台裏について、同社PR担当の斎藤香氏に話を聞いた。
※キスミー フェルム内 塗り心地のこと
【News Release】キスミー フェルムの新ルージュ 感覚を研ぎ澄ます暗闇で人生最高のひと塗りを。「暗闇の中のルージュ店」期間限定オープン
▲キスミー フェルムPR担当 株式会社伊勢半 コミュニケーション本部 広報宣伝部 斎藤香氏
あえて「見ない」ことで本質を味わう。暗闇で体験する至福のタッチアップ

地下へ続く階段を降りた先にあるのは、口紅の「塗り心地」を五感で味わうための空間だ。来場者はまず、全6色の中から今日の1色を選ぶ。ルーレットに運を委ねるか、自らの直感で選ぶか。その1本を手に、静寂な暗闇へと足を踏み入れる。
▲(左)運を天に任せてルーレットで選ぶ体験も。(右)直感で心惹かれるカラーを選ぶこともできる。
薄暗い空間では、柔らかなベールに包まれ、心地よい音声ガイダンスに従って深呼吸。心身をリラックスさせ、意識を唇に集中させていく。準備が整ったところでメイクアップアーティストが登場し、いよいよタッチアップが始まる。
研究データに基づき、口紅のなめらかさを最も引き出す「温度・角度・圧力」で塗られるひとときは、まさに至福。同商品の最大の特徴である「なめらかさ」を肌で感じ、不思議な没入体験は幕を閉じる。

▲暗闇空間の様子(※撮影のため実際より照明を明るくしています)
現在、化粧品市場は「リップ戦国時代」と呼ばれるほど各社がしのぎを削っている。通常、ユーザーは「発色の良さ」や「色持ち(落ちにくさ)」、あるいは「トレンドの質感」を基準に選ぶことが多い。
しかし、キスミー フェルムはあえてそこに「なめらかさ」という独自の価値を突きつけた。競合との差別化を図るため、徹底的に「塗り心地の良さ」を追求したのだという。
▲「キスミー フェルム ルージュアクト トリコタッチ」全6色 1,650円(税込)
「目に見えない良さ」をどう伝えるか? 抽象的な特長を体験に変えるアイデア
「ルージュアクト トリコタッチ」には、緻密な「ミクロカードハウス構造」や「スムースエモリエントオイル」など、高度な技術が凝縮されている。さらに、伊勢半グループのルーツである日本伝統の口紅「小町紅」の原料(紅花)から抽出した独自の保湿成分も配合。江戸時代から続く紅屋としての矜持が、現代の技術と融合し、この“とりこ”になるような塗り心地を生み出したのだ。
【News Release】江戸時代に紅屋として創業した伊勢半が作る「紅」原料由来のうるおい成分配合、唇を“とりこ”にする至福のなめらかルージュ
しかし、この「塗り心地」という価値は、非常に抽象的で目に見えない。PR担当の斎藤氏は、プロモーションの検討段階で大きな課題に直面したという。
「『塗り心地が良い』と口で言うのは簡単ですが、色や仕上がりと違って伝わりにくい。この特長を理解してもらうには、実際に塗って体感してもらうのが一番だと考えました」と斎藤氏は振り返る。
▲なめらかさを最大限に引き出すため、研究所と協力して導き出した最適な「温度・角度・圧力」で提供。
そこで着目したのが、昨今注目を集める「イマーシブ(没入型)体験」だ。 「感触に没頭してもらうため、あえて視覚を遮るという決断をしました。さらに、研究所の協力のもと、なめらかさを最も感じられる『温度・角度・圧力』を科学的に導き出し、コンテンツに落とし込んだのです」
メイク体験の常識を覆す。開催までの困難と、予想を上回る大反響

「目で見ること」を前提とするメイク体験において、その常識を覆す企画だけに、実現までには多くの苦労があったという。
「五感にフォーカスするというテーマは決まっても、それを具体的にどう空間にするか、細部を練るのに時間を要しました。また、完全な暗闇を作れる場所探しも難航。外光が入らず、かつ集客しやすい会場を求めて、チームで議論を重ねました」
音響や香りにまでこだわり、ようやく迎えた当日。予約制のタッチアップ枠は開始早々に全日満席となり、当日キャンセル待ちは常に100名に達した。新感覚の体験への関心の高さがうかがえる。


▲予約なしで楽しめるメイクコーナーやSNS映えするフォトスポットも用意された。
4日間で約1,200名が来場。悪天候の日もあったが、会場は熱気に包まれた。体験者からは「今まで味わったことのない不思議な体験」「塗り心地にこれほど集中したのは初めて」といった驚きの声が相次いだ。フリーのメイクコーナーでも、「この価格でこの塗り心地はすごい」と、多色買いを検討するユーザーも多かったという。

▲連日盛況を博し、多くのユーザーが新ルージュの感触を堪能した。
大成功を収めた一方で、斎藤氏は「2時間以上お待ちいただいた方もいた。待ち時間を楽しんでいただく工夫など、新たな課題も見つかりました」と、次なる展開への意欲を見せる。
狙うは“パーセプションチェンジ”。伝統ブランドが挑むブランドイメージの刷新
今回のイベントは、単なる商品告知にとどまらない。斎藤氏によれば、ブランドに対する「パーセプションチェンジ(意識改革)」を促すという重要なミッションがあるという。

▲会場の細部にまで、キスミー フェルムの世界観を反映。
「デザインの刷新やSNS活用、そして今回のリアルイベントを通じ、これまで接点のなかった20〜40代の方々にも、購入の選択肢として認識していただきたいと考えています」
「キスミー フェルム」は、1987年の誕生以来、来年で40周年を迎える。時代の変化に寄り添い続けてきたロングセラーブランドは、いま再び、驚きに満ちた体験を通してユーザーとの新たな関係を築こうとしている。老舗のプライドと革新的なアイデアが融合したこの取り組みが、市場にどのような風を吹き込むのか、今後も注目したい。


