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2026

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    生成AIは受験勉強をどう変え始めているのか――高校生に広がる活用実態と、見落とされがちな落とし穴

    生成AIは受験勉強をどう変え始めているのか――高校生に広がる活用実態と、見落とされがちな落とし穴

    「勉強のやり方が分からない」「時間をかけているのに成果が出ない」

    受験を経験した人なら、一度は感じたことのある悩みではないでしょうか。近年、この悩みに対する“新しい選択肢”として、生成AIを受験勉強に取り入れる動きが広がっています。チャット形式で質問でき、理解できるまで何度でも説明してくれる存在。一見すると、塾や参考書を置き換えるようにも見える生成AIですが、その実態はもっと現実的で、そして複雑です。

    生成AIは受験を本当に変えるのか。それとも、学力低下という新たなリスクを生み出すのか。本稿では、調査データや教育現場の事例をもとに、生成AI時代の受験対策の現在地を整理します。

    高校生の間で進む「生成AIの常態化」

    生成AIの受験活用は、すでに一部の意識が高い生徒だけの話ではありません。2024年に実施された高校生対象の調査によると、全体の約8割が生成AIを学習に活用した経験があるという結果が示されています。もはや「使ったことがあるかどうか」ではなく、「どう使っているか」が問われる段階に入ったと言えるでしょう。

    利用目的として多いのは、授業や参考書の復習、テスト対策、分からない問題の解説といった、極めて日常的な学習行動です。

    ある調査では、「授業内容の復習」に使っていると答えた生徒が3割超、「テスト対策全般」が約3割、「分からない問題の解説」がそれに続くという結果が出ています。注目すべきなのは、生成AIが「裏技」や「不正手段」としてではなく、あくまで学習を前に進める補助ツールとして位置づけられている点でしょう。

    生成AIを使って良かった点として最も多く挙げられているのは、「短時間で必要な情報が得られる」ことで、回答の6割前後を占めています。次いで、「24時間いつでも使える」「人に聞かずに質問できる」といった声が続きます。質問する相手が常にそばにいるという感覚は、これまでの受験勉強にはなかった環境です。

    一方で、懸念がないわけではありません。

    同じ調査では、約4割の生徒が「情報の正確性」に不安を感じていると回答し、3割超が「使いすぎによる依存」への懸念を挙げています。それでもなお、「今後も生成AIを使い続けたい」と答えた生徒は9割近くに達しており、不安を感じつつも手放せない存在になっている実態が浮かび上がります。

    これらの数字が示しているのは、生成AIがすでに「試しに使う新技術」ではなく、学習環境の一部として組み込まれ始めているという現実です。

    なぜ生成AIは受験勉強と相性が良いのか

    生成AIがここまで急速に受け入れられている背景には、受験勉強そのものが抱えてきた構造的な問題があります。

    多くの受験生は、授業を聞いている間や解説を読んでいる間は理解した気になります。しかし、いざ一人で問題に向き合うと手が止まり、どこが分からないのかも曖昧なまま、次へ進んでしまう。

    この「分からないままの積み重ね」が、成績が伸びない大きな要因になってきました。

    生成AIは、この詰まりをその場で解消します。途中式だけを切り出して聞くこともでき、英文の構造だけを詳しく説明させることもできます。しかも、何度同じ質問をしても心理的な負担はありません。

    教育現場を取材した報道では、生成AIは「教える存在」以上に、「考えを言語化させる存在」として機能していると指摘されています。自分でも気づいていなかった理解のあいまいさ――いわば「何が分からないのか分からない状態」を解決してくれるという点で、大きな役割を果たしているのです。

    予備校・教育事業者に広がるAI前提の学習設計

    生成AIの活用は、個人の工夫にとどまりません。予備校や教育事業者の間でも、「AIがあること」を前提にした学習設計が始まっています。そこでは、生成AIを使うか否かではなく、「どう使えば思考力につながるか」が中心テーマです。

    オンライン予備校や個別指導塾の現場では、生成AIを質問対応や復習支援の補助として組み込み、人間の講師は理解度の確認や学習戦略の設計に注力するという役割分担も進みつつあります。

    見落としてはいけないデメリット

    生成AIの受験活用が進む一方で、課題もはっきりしてきました。最大の懸念は、「分かったつもり」になる危険性です。生成AIの説明は分かりやすく整理されているため、理解した感覚は得やすい。しかし、それを自分の言葉で再現できるか、自力で解けるかは別問題です。特に記述式や論述問題では、この差が結果に直結します。

    もう一つの問題は、情報の正確性です。生成AIは誤った内容を含む可能性があり、入試制度や出題傾向など、年度ごとに変わる情報については注意が必要です。

    この点は、教育関係者の多くが共通して指摘しています。つまり生成AIは、勉強の力を伸ばしてくれることもあれば、考えずに答えを頼ってしまう原因にもなり得るということです。

    「AIに任せる勉強」と「AIを使う勉強」の分岐点

    生成AI時代の受験対策で最も重要なのは、主語をどこに置くかです。AIが考えるのか。それとも、自分が考え、AIを使うのか。

    模範解答をそのまま受け取るだけでは、学力は蓄積されません。一方で、自分の解答を見直すために問いを投げ、別の視点を得る使い方は、思考を深めます。

    生成AIを「答えを出してくれる存在」として使うのか、それとも対話しながら理解を深める参考書のように扱えるか。その姿勢の違いが、結果を大きく左右します。

    生成AIは受験の“近道”ではない

    生成AIは、受験勉強の風景を確実に変え始めています。質問のハードルを下げ、自学自習を止めにくくし、個々の弱点に寄り添う。その価値は確かです。

    しかし、生成AIは考える力を代わりに育ててくれる存在ではありません。むしろ、自分の理解の浅さや思考の癖を映し出す「鏡」のような存在と言えるでしょう。 生成AI時代の受験対策で大切なのは、何でも任せることでも、使わないと決めつけることでもなく、自分で考えながら問い続ける姿勢です。

    その姿勢を失わない限り、生成AIはこれまでになかったほど心強い学習パートナーとなるでしょう。

    #生成AI#ChatGPT#受験#大学受験#高校生#教育#学習法#自学自習#AI時代#思考力

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