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国連が採択した「イコールアース図法」で見る世界の真実
ビジョナリー編集部 2026/09/08
2026年9月4日、各国の実際の相対的な大きさを正確に描く「イコールアース図法」の使用を推奨する決議が、国連総会で採択されました。
この記事では、地図の歴史と構造的課題、そして新しい図法がもたらす未来について分かりやすく解説します。
従来の地図が抱える課題と歴史的背景
私たちがよく目にする世界地図の多くは、1569年にフランドル地方の地理学者ゲラルドゥス・メルカトルによって考案された「メルカトル図法」です。500年近くにわたり世界中で利用されてきました。

航海のために生み出された歴史
これは、大航海時代に「船の進行方向(コンパスの方角)を地図上に直線で描ける」ように作られた航海用図法です。羅針盤を頼りに航行する船乗りにとって、角度が正確に保たれる地図は革新的なツールでした。
赤道から離れるほど肥大化する構造
しかし、球体である地球を正方形の平面に広げる際、緯度が高くなるほど(赤道から離れるほど)上下左右に拡大して描写されます。その結果、高緯度に位置する北米やヨーロッパ、ロシア、グリーンランドなどが肥大化して描かれることになります。
例えば、アフリカ大陸(約3,030万平方キロメートル)はグリーンランド(約216万平方キロメートル)の約14倍の面積ですが、メルカトル図法で見るとほぼ同じ大きさに映ってしまいます。
視覚的な歪みが与える心理的影響
このような面積の歪みは、地理的誤差にとどまらないという指摘が長年なされてきました。北半球の先進国が大きく描かれ、アフリカや南米、東南アジアなどが相対的に小さく表現されることで、「世界における各地域の重要性や影響力」に対する心理的な偏見を補強してきたという批判です。トーゴの外相ロベール・ドゥセ氏は「地図は教育を導き、認識に影響を与える。歪んだ画像は不正確な認識を定着させる」と語っています。
推奨される新しい地図
今回、国連総会で大きな注目を集めた「イコールアース図法」は、2018年にボヤン・シャヴリッチ氏らの研究チームによって発表された比較的新しい地図投影法です。

正確な面積比
最大の特徴は、地球上のあらゆる陸地の「面積の比率」が正しく表現される「等面積性」にあります。
また、過去の等面積図法(ガト・ピーターズ図法など)は、縦に細長く伸びて陸地の形が極端に崩れて見えるという欠点がありました。それに対してイコールアース図法は、視覚的な美しさを取り入れつつ、陸地の形状の歪みを最小限に抑えるよう設計されています。
決議の内容と各国の反応
2026年9月4日の国連総会では、アフリカ連合(AU)の支援のもとトーゴが主導した「Correct the Map」決議案(A/80/L.104)が採択されました。
- 採択結果: 賛成164か国、反対1か国(米国)、棄権6か国(ウクライナなど)
- 決議の趣旨: 教育現場や広報資料、メディア等において、面積比が正確なイコールアース図法などの採用を推奨する
それぞれの主張
共同提案国となったフランスをはじめとする164か国は、「正確な表現への修正は誠実さの第一歩である」として支持を表明し、学校教育などでの切り替えを進める意向を示しました。
一方で、唯一反対票を投じたアメリカの代表は、「気候変動や国際平和といった真の課題に取り組むべき場面で、16世紀の地図プロジェクトを議論するのは国連の信頼性を損ねる」と主張し、イデオロギー的な議論であると批判しました。
なお、この国連決議は「非拘束的(推奨)」なものであり、法的強制力を持つものではありません。航海や航空など、角度の正確性が優先される分野では、引き続きメルカトル図法が重要な役割を果たします。
今後の展望
今回の国連による推奨をきっかけに、世界各国の教科書や出版物、デジタル地図アプリなどでの見直しが進むと予想されます。特に教育現場において「世界の本当の広さ」を教える動きは、次世代のグローバルな視点を育む上で大きな意味を持つでしょう。
完璧な平面地図は存在しない
私たちが知っておくべき重要な事実は、「3次元の球体を2次元の平面に100%正確に描くことは不可能である」という点です。
- メルカトル図法: 「角度」は正確だが、「面積」が歪む
- イコールアース図法: 「面積の比率」は正確だが、「周縁部の形や距離」に歪みが生じる
このように、あらゆる地図には長所と短所が存在します。
終わりに
地図は目的や文脈に合わせて使い分けることが大切です。航海やナビゲーションにはメルカトル図法、世界全体のデータ比較や教育にはイコールアース図法といったように、それぞれの特性を理解した上で活用する「地図のリテラシー」が、これからの時代に求められています。私たちが普段何気なく眺めている世界地図を、一度新しい視点で見つめ直してみてはいかがでしょうか。


