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「共感」と「感情」がブランドを動かす──TikTok発・2026年マーケティング最前線
ビジョナリー編集部 2026/02/24
スマートフォンを開けば、次々と表示される広告。気づけば、どこか冷めた感覚のままスワイプしている——そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
情報が過剰な時代において、広告は「届く」ことと「響く」ことが必ずしも一致しなくなりました。目には入っている。けれど、心に残っているとは限らない。そんな状況が生まれています。
では、この環境の中で、企業はどのようにして人々の記憶に残る体験を設計すればよいのでしょうか。その問いに対し、新たな可能性を提示しているのがTikTokです。
「認知」や「効率」だけでは選ばれない時代へ
かつて、広告の価値は「どれだけ多くの人に届けられるか」「いかに効率的に売上につながるか」で測られてきました。しかし、情報があふれる環境では、“広告らしさ”そのものが回避されやすくなっています。視認はされても、共感や記憶には結びつきにくいのです。
この背景には、SNSの浸透とともに、ユーザーが「体験」や「共感」を重視するようになった価値観の変化があります。
TikTokが2026年のトレンドをまとめた「TikTok Next 2026」は、この潮流を象徴するレポートです。そこでは、ユーザーはもはや受動的に広告を受け取るだけの存在ではないと指摘されています。自ら意味や価値を見出し、共感できるストーリーを主体的に選び取る——そんな行動の変化が浮き彫りになっています。
「ファンタジー」の終わりと「現実」への回帰
かつてSNS上では、非現実的な理想や完璧なライフスタイルがもてはやされてきました。#romanticizingや#digitalescapismといったハッシュタグが象徴するように、現実を忘れさせてくれる“ファンタジー”な世界観に人々は惹かれていました。
しかし、世界的な不安定さやリアルな課題を前に、「どこか現実離れした美しさ」への憧れは徐々に薄れつつあります。代わりに今、多くのユーザーが求めているのは、“等身大のリアリティ”です。
TikTok上では「#lockedin(自己鍛錬のための集中)」「#hygiene(清潔感の向上)」「#joblife(仕事のリアル)」など、ありのままの日常や失敗談、未完成な努力の過程を共有する投稿が急増しています。
TikTokが指し示す「次世代マーケティング」
こうした価値観の変化を踏まえ、TikTokは2026年に向けて、マーケターに3つの重要なキーワードを提示しました。それは、今後のブランド戦略のあり方を再考するための明確なシグナルでもあります。
1. Reali-TEA──「飾らない本音」がブランドの武器になる
「Reali-TEA」とは、「Reality(現実)」と「Tea(ぶっちゃけ話)」を掛け合わせた造語です。これまでのような作り込まれたCMや、非現実的なビジュアルではなく、「正直な本音」や「ちょっとした失敗談」「努力の裏側」といったリアルな語りが、多くの共感を集めています。
たとえば、あるコスメブランドが「寝不足の朝、どうしてもこれだけは頼りになる」と担当者の実体験を語ったところ、従来のモデルカット以上に大きな反響を呼びました。
また、飲食やD2Cブランドでは、新商品が完成するまでの試行錯誤や、社員の日常、ちょっとしたハプニングさえもコンテンツ化することで、ブランドの「人間味」がユーザーとの距離を縮めています。
今、ユーザーは「正しいこと」よりも「共感できること」にブランドの価値を見出しているのです。
2. Curiosity Detours──「好奇心の寄り道」が新たな接点を生む
次に注目すべきは、「Curiosity Detours」──つまり“好奇心の寄り道”です。
TikTokは、ユーザーが能動的に検索し、気になるキーワードから予想外の世界へと“寄り道”していくプラットフォームへと進化しています。
たとえばホテルチェーンや旅行予約サービスでは、「#韓国ホテルおすすめ」といった検索を通じて公式アカウントの動画が視聴される機会が増えています。
また、コメント欄が“第2のメディア”として機能し、「どこで買えるの?」「他の使い方も知りたい」といった声にブランドが即座に返信動画で応えることで、コミュニケーションが連鎖的に広がる現象も見られます。
さらには、家電ブランドが「掃除ルーティン」文化に溶け込んだり、文房具ブランドが「勉強Vlog」コミュニティに自然と受け入れられたりするなど、接点が次々と生まれています。「探索されるブランド」こそ、現代のマーケティングにおける新しい競争力と言えるかもしれません。
3. Emotional ROI──「感情的価値」が購買の決定打に
最後のキーワードが「Emotional ROI」です。従来のROI(費用対効果)では、価格や機能が重視されてきました。しかし今、ユーザーが商品やサービスに求めているのは、「それを使うことで得られる感情的なリターン」です。
たとえば、シャンプーであれば「保湿成分が豊富」であることよりも「これを使うと自分を大切にしている気分になれる」、家具であれば「サイズ」や「機能」よりも「家に帰った瞬間ちょっと嬉しくなる」といった体験が重視されます。
スターバックスが“自分の時間を過ごせる場所”として愛されているように、ブランドが「どんな感情を提供できるか」が、選ばれる理由になっています。さらに、ブランドがコミュニティを築き、「好きな人同士がつながる場」となれば、そのEmotional ROIはより強固なものとなるでしょう。
企業に求められる「透明性」
こうした潮流を受けて、TikTokは2026年1月に大きな仕様変更を実施しました。従来、広告主がアカウントを持たずに広告配信できた「カスタムアイデンティティ」機能を完全廃止し、今後は実在アカウントとの連携が必須となりました。
この背景には、「誰が発信しているのか」を明確にすることで、ユーザーからの信頼性やプラットフォーム全体の透明性を高めたいという意図があります。企業はこれまでの「顔の見えない宣伝」から、「担当者が語る」「開発者の想いを伝える」といった“人格あるブランド運用”へと転換を迫られています。
また、広告からプロフィールへ誘導できるようになったことで、フォローやオーガニック投稿への回遊が生まれ、単発の広告運用では得られなかった“継続的なブランド接点”を築けるようになりました。
TikTokで成果を生むための新しい視点
2026年以降、企業がTikTokを活用する上で意識すべきポイントが見えてきます。 第一に、「誰が、どんな想いで発信しているのか」を見せること。担当者や社員の本音、開発の裏話、失敗から学んだことなど、人間味あふれるコンテンツが共感を呼びます。
第二に、「検索される言葉」を戦略的に設計し、ユーザーの寄り道や探索行動の中で自然と出会える仕掛けを作ること。動画のキャプションやハッシュタグ、テロップなどにユーザーの課題や興味に沿ったキーワードを盛り込むことで、偶然の出会いが生まれやすくなります。
第三に、商品の機能訴求だけでなく、「それを使うことでどんな気持ちになれるか」「どんな体験が待っているか」をクリエイターやユーザーの声を交えて発信すること。UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用やクリエイターとのコラボレーションによる、リアルな体験談が商品の感情的価値を一層高めます。
「広告」から「文化」へ──TikTokが描く未来
2026年のTikTokは、単なる広告プラットフォームから「文化の発信地」へと進化を遂げています。企業に求められるのは、小手先のテクニックや一時的なバズではなく、「共感される物語」を持ち、「コミュニティの一員」としてユーザーと対話し続ける姿勢です。
TikTokのデータによると、月間4,200万人以上の日本ユーザーが1日あたり80分、15回もアプリを開くなど、日常の一部となっています。この巨大な“文化圏”の中で、どれだけ深く、愛着を持って選ばれる存在になれるかが、今後のブランドの成否を分ける鍵となるでしょう。
まとめ──「共感」と「感情」がブランドを動かす時代へ
これからのマーケティングで問われるのは、「なぜそのブランドが選ばれるのか」という感情の根拠です。
TikTokが示しているのは、広告技術の高度化ではなく、意味と共感の設計です。共感される物語を育み、探索の中で自然に出会われ、感情的価値によって選ばれる存在になること——それこそが次世代マーケティングの本質と言えるでしょう。


