Diamond Visionary logo

2/25()

2026

SHARE

    アイス市場は20年で倍増。なぜ「冬の濃厚アイス」が6,000億円超の巨大市場を支えるのか?

    アイス市場は20年で倍増。なぜ「冬の濃厚アイス」が6,000億円超の巨大市場を支えるのか?

    「アイスといえば夏」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、そのイメージはここ数年で少しずつ変わってきています。寒い冬にも関わらず、コンビニやスーパーのアイス売り場は縮小されるどころか、むしろ「冬限定」「プレミアム」といった魅力的な商品で賑わっています。なぜ今、アイス市場は冬にこそ拡大しているのでしょうか。その背景には、消費者の価値観やライフスタイルの変化、さらには製造技術の革新、そしてメーカー各社の巧みなマーケティング戦略があります。

    “冬アイス”が市場を変革した20年

    日本アイスクリーム協会の調査によれば、2024年度のアイス市場は過去最高の6,451億円を記録。冬のアイス売上額だけでも、20年前と比べて約2倍に成長しています。総務省の家計調査でも、冬場(12月~2月)のアイスクリーム・シャーベットへの支出額は着実に伸びており、10年前と比較して1.7倍となっています。この急成長にはどんな理由が隠されているのでしょうか。

    通年販売・コンビニの台頭が生み出した新常識

    ここまで市場が広がった背景の一つに、コンビニエンスストアの存在があります。1990年代以降、店舗数の増加とともに、メーカー各社はコンビニを通年で安定的に販売できる販路として重視するようになりました。

    かつては「アイス=夏」というイメージが強かったものの、コンビニがオープン型ショーケースを導入し、店内の目立つ場所にアイスを並べたことで、季節を問わず手に取りやすい環境が整いました。売り場の設計そのものが、消費者の購買行動を変えていったのです。

    その結果、コンビニ限定のプレミアム商品や、季節ごとの新フレーバーが次々と登場し、消費者の購買意欲を刺激しました。とりわけ冬場のアイスは、「この時期だけ」「ちょっと贅沢」といったキーワードとともにSNSでも話題を集め、“冬の楽しみ”として存在感を持つようになりました。

    冬ならではの体験こそが支持を集める理由

    夏は体を冷やす目的から、さっぱりとした氷菓タイプが人気を集めます。一方、冬になるとクリーム系やチョコレートコーティングタイプ、さらには濃厚な味わいのスイーツ系アイスが売れ筋へと移ります。

    この背景には、人間の味覚が寒さで鈍感になることが挙げられます。そのため、冬はよりリッチでコクのある味、なめらかな食感が求められるのです。実際、同じブランドの商品でも、夏と冬では食感や味わいが細かく調整されています。たとえば、さっぱりとしたヨーグルト風味は、冬になると練乳を加えるなどしてミルク感を強め、よりコクのある仕上がりに変わります。また、氷の粒の大きさを変えることで、夏は清涼感を、冬はなめらかさと濃厚さを際立たせるといった工夫も見られます。

    こうしたきめ細かな商品設計が、冬アイスならではの「特別感」や「ご褒美感」を支えています。

    「限定感」と「イベント消費」が冬の伸長を後押し

    冬アイスの成長を語るうえで欠かせないのが、「この時期だけ」という限定感です。各メーカーは、冬季限定の特別フレーバーやパッケージを次々と市場投入しています。例えばロッテの「雪見だいふく」はその代表格です。かつては冬限定商品として発売され、今も冬になると特別な味わいや形状の商品が登場します。

    また、クリスマスや年末年始、バレンタインなど、冬は家族や友人と過ごすイベントが多い季節です。そうしたシーンに合わせて、「ちょっといいアイス」を買うプチ贅沢が、消費者の間で新たな習慣として定着しています。2023年の市場動向を見ても、12月の高級アイスの購入金額指数は年間で最も高くなっており、特別な日や自分へのご褒美として高級アイスを選ぶ人が増えています。

    製造技術の進化が生んだ「冬の濃厚アイス」

    冬アイスブームのもう一つの背景には、製造技術の進化があります。2000年代以降、各社は濃厚でなめらかなアイスを作るために、氷の粒子を細かくする技術や、原料の配合や製造方法の改良に取り組みました。これにより、従来は難しかった「口どけの良い濃厚アイス」や「冬の暖房でも溶けにくい」品質のアイスが続々と誕生しました。

    国産乳製品、とりわけ北海道産の高品質なミルクを使用し、素材の良さを前面に打ち出す商品も増えています。原料産地を明確に示すことで、品質への信頼感を高め、満足度の向上につなげる戦略です。

    冬アイス市場を牽引する「大人ターゲット」と「プチ贅沢」志向

    かつては「アイス=子どものおやつ」というイメージが強かったものの、現在では大人をターゲットにしたリッチなアイスが次々と登場しています。例えば、森永乳業の「パルム」は、大人が楽しむアイスとしてCMや販促を展開し、冬場を含めて通年で高い売上を誇るヒット商品となりました。

    また、アイス市場を支えているのは40代以上の世代である、という調査結果もあります。特に家族団らんのひとときや、夫婦で楽しむデザートとして、冬のアイスが選ばれるケースが増えています。年齢を問わず「今日はちょっと贅沢しよう」という心理に寄り添う商品展開が、アイス市場全体の底上げにつながっているのです。

    まとめ

    暖かい部屋で濃厚なアイスを楽しむ時間は、日々の生活に小さな幸せとご褒美をもたらしてくれます。冬アイス市場の成長は、消費者のライフスタイルや嗜好の多様化、メーカーの絶え間ない工夫と技術革新が生み出した新たな潮流です。

    今年の冬は「冬アイス」の世界を味わってみてはいかがでしょうか。ひと口ごとに広がる濃厚な幸せが、あなたの日常に彩りを添えてくれるはずです。

    #アイス市場#食品業界#コンビニ業界#フードビジネス#消費者動向#マーケティング戦略#冬アイス#季節限定商品#ハーゲンダッツ#雪見だいふく#パルム#ピノ#赤城乳業#明治アイス

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    「共感」と「感情」がブランドを動かす──TikT...

    記事サムネイル

    マーケターの常識を覆す「勝てる戦場」の見つけ方―...

    記事サムネイル

    「今ならお得」に騙される?行動経済学で解く購買心...

    記事サムネイル

    「買わないで」と言うと売れる?「カリギュラ効果」...

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI