
逆境を切り拓くケインズの経済学
9/1(月)
2025年
SHARE
ビジョナリー編集部 2025/08/26
「神の見えざる手」というフレーズを聞いたことはありませんか?
18世紀のスコットランドで活躍したアダム・スミスが生み出した考え方です。
アダム・スミスの思想は、今日のビジネスパーソンが直面する課題や意思決定に、実は直接的なヒントをもたらしてくれるからです。
ビジネスの現場で「どう利益を生み出し、どう組織を機能させるか」を考える際、彼のアイディアは今も色褪せることがありません。
アダム・スミスは、スコットランド出身の哲学者・経済学者です。
「経済学の父」と呼ばれ、現代経済学の土台を築いた人物でありながら、実は道徳哲学者としても大きな足跡を残しています。彼の生涯は、グラスゴー大学やオックスフォード大学での学びと教鞭に始まり、スコットランド啓蒙運動の中心的人物として活躍するものでした。その功績は、代表作『道徳感情論』と『国富論』という2冊の著書に濃縮されています。
スミスが生きた18世紀のイギリスは、産業革命や資本主義の夜明けを迎えた劇的変化の時代でした。政府が経済を厳しくコントロールする「重商主義」体制から、民間主導の産業資本主義へと舵が切られつつありました。
そのなかで、彼は「自由な市場経済」と「個人の自由な行動」が最大の豊かさをもたらすと説いたのです。
スミスの思想を語る上で外せないのが「見えざる手」の概念です。
見えざる手とは、各人が自分の利益を追求して行動することで、結果的に社会全体の富や調和がもたらされる現象を指します。
たとえば、パン屋が儲けるために美味しいパンを作る努力をすることで、消費者も美味しいパンを得ることができ、社会全体が満たされていきます。
スミスは、工場の生産工程を分析し、分業こそが生産性を飛躍的に高めると主張しました。
何でも一人でやろうとするのではなく、各自が得意分野に集中し、チーム全体でアウトプットを最大化する。
こうした働き方が、現代の企業や組織でも生産性を引き上げるコツとなっています。
重商主義とは、国が金銀を蓄積し、輸出を奨励、輸入を抑制することで国力を高めようとする考え方です。その結果、低コストで輸出をするために、労働者に過度な負担を強いる弊害が出ていました。
スミスは、富とは、金銀ではなく、国民が生産し享受する生活必需品や便益品の総量であると考え、だからこそ自由な分業と市場の拡大が必要であると説いたのです。
スミスは「政府の関与は最小限にとどめ、市場のメカニズムに任せるべきだ」と考えました。
これは現代でも「小さな政府」論として、国家の経済介入の是非を考える際の重要な視点となっています。
ビジネスの現場で誤解されがちなのが、「利己心=自己中心的で何をしてもOK」というイメージです。しかし、スミスは『道徳感情論』で「人間には共感の能力がある」と説いています。
人は他人の目や評価を意識し、自分の行動が賞賛されるか非難されるかを判断します。そして、他人の気持ちと自分の気持ちを照らし合わせながら、他人の評価を意識することを繰り返すことで、「公平な観察者」という第三者の視点に立てるようになります。
この「公平な観察者」の意識が、極端な行動や不正を抑え、社会全体の秩序を守るとスミスは考えました。
スミスの自由放任主義は、「ルール無用の弱肉強食」を推奨しているわけではありません。市場には信頼や倫理、法制度が不可欠であり、これらを無視した経済活動は社会的な制裁を受けることになります。
分業は生産性を高める一方で、過度な分業は「全体像が見えなくなる」「やりがいを感じにくい」といった弊害を生みます。
ビジネス現場では、分業のメリット・デメリットをバランスよく管理し、時には「ジョブローテーション」や「越境的な学び」の機会を設けることも重要です。
スミスの理論が主張する「自由な市場」が常に最善とは限りません。
現代社会では、環境問題や所得格差など、市場原理だけでは解決できない課題も多く存在します。
こうした場合には、適切なルールや社会的なセーフティーネットも必要となります。
アダム・スミスが18世紀に示した知見は、現代のビジネスシーンでも通用します。
複雑化・グローバル化する現代社会だからこそ、「自分の強み」「分業の力」「公平な観察者としての自分」を意識し、健全な競争と協力を両立させることが、成功への近道です。
ぜひ、今日からあなたのビジネスにスミスのエッセンスを取り入れてみてください。きっと、組織も個人も、より豊かで持続的な成長を実感できるはずです。