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圧倒的な吸水性と肌触り!今治タオルの始まりと歴史について
ビジョナリー編集部 2025/10/22
「今治タオル」と聞いて、どんなイメージをお持ちでしょうか?ふわふわ、やわらかい、そして高級感。多くの人が“特別感”を感じているブランドですが、その歴史や普通のタオルと何が違うかはご存知でしょうか?
今回は、今治タオルの始まりから品質の秘密、時代とともに進化し続ける理由まで紐解いていきます。
今治タオルの始まり――挑戦者たちの物語
明治時代、1枚のタオルとの出会いから
今治タオルの歴史は、明治時代までさかのぼります。
当時の今治地域は、すでに「伊予木綿」として綿織物が名を馳せていましたが、時代とともにその勢いは衰えていました。そんな中、転機となったのは1894年(明治27年)。一人の人物――阿部平助氏が大阪で偶然タオルに出会い、その将来性を直感します。
「この柔らかくて吸水性の高い布、今治でも作れないだろうか?」
阿部平助氏は、当時主流だった綿ネル用の織機をタオル用に改造し、今治でタオル生産を始めました。実は、今治タオルの原点には“危機感”と“好奇心”があったのです。
その後、英国製の最新タオル機械も導入し、肌触りや吸水性にこだわった製造方法を確立。このチャレンジ精神が、今治タオルの礎となりました。
消滅の危機からブランド再生へ――今治タオルの“復活劇”
安価な海外製品の波――最大のピンチ
戦後の高度経済成長期、海外からの安価なタオルが大量に流入し、今治のタオル産業は存亡の危機に直面しました。
かつて600社あったメーカーは、100社以下にまで減少。今治タオルの名も、かつてないほど影が薄くなった時期があったのです。
ブランド戦略で再び脚光――“今治タオル”の再出発
しかし、地元メーカーや行政が一丸となり、「品質」と「ブランド力」強化への大改革を断行。「JAPANブランド育成支援事業」を活用し、著名なクリエイティブディレクター・佐藤可士和氏を招いてロゴやパッケージを刷新しました。
さらに、タオルソムリエ制度や厳格な品質基準を整備することで、消費者からの信頼を取り戻し、現在では国内生産の約6割を占めるまでに回復しています。
「普通」とは違う、今治タオルの“圧倒的な違い”
1. 吸水力――「5秒ルール」が生み出す安心感
今治タオルの最大の特徴は、その吸水力にあります。
検査方法もユニークで、「5秒ルール」と呼ばれる基準を採用しています。
具体的には、タオルの一部を水に浮かべて、5秒以内に沈むかどうかをチェック。普通のタオルでは60秒近くかかることも多い中、今治タオルは一瞬で水を吸い込みます。
この違いは、日常のシーンでも実感できるはずです。顔や手を拭いた瞬間、余計な水分が残らず、すぐにサラッとした感触に。
2. ふんわり感――やわらかさの秘密は“水”と“手間”
「ふわふわしていて気持ちいい」。この感覚にも理由があります。
今治地域には、石鎚山系から流れる軟水が豊富に存在します。この水は、硬度成分や重金属が極めて少なく、繊細な繊維を傷つけることなく洗い上げることができます。
また、今治タオルは綿を染める工程を工夫し、綿そのもののやわらかさを最大限に活かしています。普通のタオルよりも手間をかけ、何度も水に通して丁寧に仕上げることで、独特のやわらかさが生まれるのです。
3. 高い安全基準――赤ちゃんも安心して使える
今治タオルは、乳幼児用製品の法定基準よりもさらに厳しい独自基準を設けています。
たとえば、ホルムアルデヒド(アレルギーの原因となる有機物質)などの残留量を徹底管理。敏感肌や赤ちゃんでも安心して使える安全性が、今治タオルの大きな魅力となっています。
ブランドを守る“誇りとこだわり”――今治タオルの認定制度
合格率わずか、12項目の厳しい検査
今治タオルとして認められるには、12項目にも及ぶ厳格な検査をクリアしなければなりません。
吸水性、毛羽落ち、パイルの強度、染色の堅牢度――細部にわたる基準を設け、どれか一つでも基準を満たさなければ「今治タオル」のロゴマークは冠せません。
タオルソムリエ制度――品質と誇りを伝えるプロフェッショナル
2007年からは「タオルソムリエ」認定制度もスタートしました。
この資格を持つ人は、タオルの知識や使い方、選び方を消費者に伝える役割を担います。百貨店の販売員から一般の愛好家まで、3,500名以上の有資格者が全国で活躍しています。
また、製造現場では「タオルマイスター」制度も導入され、熟練職人が技術と知識を次世代へと受け継いでいます。
今治タオルは今、どんな進化を遂げているのか?
新たな挑戦――アート・ファッション・グローバル展開
今治タオルは“生活用品”の枠を超え、アート作品やファッションアイテムなど新たな分野にも挑戦しています。
たとえば、著名デザイナーとのコラボレーションや、海外高級ホテルのアメニティとしての導入など、世界中で「JAPANクオリティ」の象徴として評価が高まっています。
サステナビリティへの取り組み
環境に優しい製造工程や、オーガニックコットンの積極的な採用も進んでいます。
また、地域の水資源を守るための取り組みや、廃棄タオルのリサイクルプロジェクトにも力を入れています。
今治タオルを選ぶ「価値」とは?
長く愛せる――コスパの良さ
「少し高い」と感じるかもしれませんが、実は長持ちするため結果的にコストパフォーマンスが良いのも特徴です。
日々の暮らしの中で、肌触りや吸水性、耐久性の違いを実感できるのは、毎日使うアイテムならではの価値だと言えるでしょう。
ギフトとしても人気
今治タオルは、その信頼性と高級感から贈り物としても人気です。
お祝い事や出産祝い、企業の記念品など、「本当に良いものを贈りたい」というシーンで選ばれています。
まとめ――今治タオルは“進化する伝統”である
今治タオルは、明治時代の一人の挑戦から始まり、困難と改革を経て、今なお進化を続けています。
「世界に誇るブランド」へ――その裏には、水・技術・誇り・そして絶え間ない挑戦がありました。
もし、まだ今治タオルを体験したことがないのであれば、ぜひ一度手に取ってみてください。その心地よさと品質は、日常の“ちょっとした幸せ”を運んできてくれるはずです。

