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海外メーカーが日本で「勝てる」理由。「スペック」よりマクアケが重視する「体験価値」
ビジョナリー編集部 2026/06/11
新商品の大ヒット。それは時に「運」や「バズり」による偶然の産物と思われがちだ。しかし、特に海外メーカーが日本市場へ進出する際に活用する応援購入サービス「Makuake」で生まれる数千万、数億円規模のヒットは、決して偶然ではないという。
そこには、単なる言語の壁を越える作業にとどまらない、日本の文化や商習慣・生活者のインサイトを熟知したキュレーターによる、緻密な「伴走体制」と「戦略」 が存在する。
株式会社マクアケ プロジェクト推進本部 グローバル局に所属するキュレーターの小板橋政名氏と賈蕊(ジャ・ルイ)氏の両名から、海外メーカーが日本進出で陥りがちな罠やデビューだけで終わらせない中長期的な成長支援の舞台裏について話を聞いた。
なぜ海外メーカーは日本市場を目指すのか?
圧倒的なスピードと資金力で新商品が次々と生まれるグローバル市場。その中で、多くのメーカーがあえて厳しい目を持つ日本市場への進出を狙うのには、明確なビジネス上の理由がある。
「特に『Makuake』でヒット事例が多いのは中国メーカーですが、中国国内では類似商品が多く、すぐに苛烈な価格競争に陥ってしまう という課題を抱えています。一方、日本の生活者は信頼するブランドへのロイヤルティが高く、ファンになってもらえれば継続的な利用が見込める のが他国と異なる特徴だと思います」と、賈氏は分析する。日本市場でいち早く「第一想起(真っ先に思い浮かべるブランドや商品名のこと)」を獲得することが、中長期的に安定した売上基盤を築く鍵になるというわけだ。

さらに、先行販売プラットフォームとしての「Makuake」の役割について、小板橋氏は次のように指摘する。「海外メーカーの中には、『Makuake』のプロジェクト単体で黒字化を目指さない企業も多いです。あくまで**『Makuake』を日本市場での確固たる販売実績を作るための戦略的PR手段と捉え** 、プロジェクトの売上に対し赤字も覚悟でプロモーション費用を投下するのです」。
「Makuake」で得た実績と信頼は、その後の日本国内における代理店交渉や量販店・大手ECサイトでの一般販売に向けた「強力な武器」となる。
落とし穴は「訴求軸のギャップ」と「CSレベルの高さ」
一方で、優れたプロダクトを持ちながらも日本市場で失敗してしまう海外メーカーには、共通する「落とし穴」が存在するという。
①必要なのは「顧客にとっての体験価値」の訴求
「中国をはじめとする海外メーカーは、商品の魅力を伝える際に最先端の技術やスペックのみを前面に押し出しがちで、プロジェクトページでもAIで生成された近未来的な画像を使用する傾向があります。しかし、日本の生活者が知りたいのはスペックそのものではなく、『それによって自分自身の生活がどう豊かになるか』という体験価値 なのです」と小板橋氏は語る。
例えば家電のプロジェクトで自宅での利用シーンを訴求する際、海外の広大な邸宅で撮影された写真では、日本の住環境とは乖離があり、生活者が自分の暮らしに役立つイメージを持ちにくい。こうしたギャップを埋めるため、キュレーターは日本向けの写真素材の撮り直しを提案したり、生活者に寄り添った見せ方へと軌道修正を行ったりするという。
②日本の「カスタマーサポート水準」の高さ
海外では「問題があれば返品・返金すればよい」というドライな対応が許容されやすい側面がある。しかし、日本では通用しない。
「日本には、購入者への真摯なコミュニケーションや納期遵守といったレベルの高いカスタマーサポートが当たり前という文化 があります。それを理解しないまま目先の売上を優先し、購入者を軽視していると感じさせる対応をしてしまうと、瞬く間に不信感が生まれます。日本市場で成功するためには、この水準の高さと重要性をメーカーに正しく伝えることが不可欠です」と小板橋氏は強調する。文化や商習慣の違いを理解させることも、キュレーターの重要な任務なのだ。
リスクを低減させファンを作る、「Makuake」の伴走体制
日本市場進出の足掛かりとなるヒットを支えるのは、単なる「価値の翻訳」だけではない。
厳格な審査とエージェントネットワーク
「Makuake」でプロジェクトを実施するには、国内外を問わず厳格な審査が行われる。特に海外メーカーが実行者の場合は、それに加えて 「日本語で確実な対応が可能か」 といった点も精査されるという。
また、マクアケは公式エージェント(プロジェクトコンサルタント)のネットワークを保有している。各国に拠点を持ち、現地の市場特性を知り尽くしたエージェントが、工場の確認から顧客対応、プロジェクト後の一般販売までをサポートすることで、トラブルを未然に防ぎ、成功率を高める体制を整えている。
「中弛(だる)み」をさせないグロース施策とファンコミュニケーション
プロジェクト期間中、開始直後と終了直前の盛り上がりに挟まれた**「中弛み」の期間** をどう乗り切るか。キュレーターは社内外と連携し、細かなプロモーション調整を行う。
さらに、実行者がサポーターへ情報を発信する「活動レポート」の活用についても、細かなアドバイスが行われる。「『活動レポート』は、実行者とサポーターが直接対話し、ファンになってもらうことができる貴重な場所 です。機械翻訳された言葉ではなく、実行者を応援したくなるようなストーリー展開など、サポーターとの長期的なエンゲージメントを築くための工夫を提案しています 」と小板橋氏は明かす。

「ペア体制」による深い異文化理解とコミュニケーション
こうした国を越えた緻密なサポートを可能にしているのが、グローバル局独自の 「日本人キュレーターと現地ルーツを持つキュレーターによるペア体制」 だ。
異なる文化的背景を持つメンバーがタッグを組むことで、言語化しにくい「文脈」の相違を埋めていく。「プロジェクトの伴走には、実行者様との緊密なコミュニケーションが欠かせません。なぜ日本市場ではこの対応が必要なのかという背景を、口頭でも丁寧に伝えるよう意識しています」と二人は語る。
ネイティブキュレーターがメーカー側の微細なニュアンスを汲み取り、日本人キュレーターが日本市場のインサイトを翻訳する。この両輪が機能することで、海外メーカーは納得感を持って戦略を実行でき、再現性の高いヒットを生み出すことが可能になるのだ。
日本進出の「成功の再現性」を高める事業成長パートナー
海外メーカーが日本でヒットを飛ばす背景には、「良いものを作れば売れる」という単純な図式ではなく、両者の連携による高度な戦略があった。
「Makuake」はもはや単なる販売チャネルではない。厳格な審査、エージェントとの連携、そして文化の壁を崩すキュレーターのペア体制。これらが組み合わさることで、海外メーカーのポテンシャルを最大化し、日本における中長期的なブランド構築を支える「事業成長のパートナー」としての役割を果たしているといえる。


