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2025

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    進化を続けてきた「サクレレモン」の40年。栃⽊の80年企業はこれからも柔軟で多⾓的に

    進化を続けてきた「サクレレモン」の40年。栃⽊の80年企業はこれからも柔軟で多⾓的に

    スーパーマーケットやコンビニエンスストアの定番かき氷アイス「サクレレモン」は今年で発売40周年のロングセラー。丸ごと入ったスライスレモンとサクサクとした食感が特徴のヒット作は、社員有志の柔軟な発想と会社を挙げた絶え間ない改良が作り上げたものだ。創業80周年、栃木県宇都宮市に本社を置く発売元のフタバ食品株式会社は、多角的な経営姿勢で事業を生み出し育ててきた。

    ロングセラーは、実は細かく改良されていた

    主力商品の「サクレレモン」は、発売から40周年を迎えました。これほど愛されるようになった人気商品はどういった経緯で開発されたのでしょうか。

    サクレレモンを開発したのは大阪事務所の有志でした。40年前、我われは東大阪に営業と工場の生産部門を一緒にした事務所を置いていたのですが(その後三重県に移転)、彼らの中で「もっと売れるアイスを開発しよう」という話が持ち上がったのです。当初は、冷蔵庫から出した際に硬くてスプーンが刺さらない今までのものと違って、すぐに食べられるかき氷を作ろうと開発をスタートしました。当時まだかき氷では珍しかったレモン味にしよう、と方向性が決まり、喫茶店でレモンスカッシュが流行っていたのをヒントに、アイスにスライスレモンを乗せることになりました。発売してみると、レモンが乗ったおしゃれなかき氷として、大阪の女子高生を中心に人気となり、仕様を若干変えた上で全国展開に踏み切ったところ大きな評判となりました。

    独自の観点で新しい要素も取り入れながら、世の中が求めているものをきちんと提供したことがヒットにつながった、ということなのですね。

    そうですね。ただこの商品は、リニューアルをしながら繋いできたものでもあります。当初は無果汁だったものを果汁入りに改良していますし、大きくは変えないながらも毎年少しずつ味の調整はしています。一つの商品をこんなに長い間ブラッシュアップしていくのは我われにとっても難しいことだったのですが、消費者の方々にはたぶんそのところを評価されているのでしょう。

    アイスや中華まん作り、スポーツチームとのコラボまで「多角的に」

    貴社は戦後に製粉工場から創業され、そこからアイスキャンディー事業に踏み切って成功されたそうですが、どのような経緯があったのでしょうか。

    関東地区の鉄道弘済会に我われの商品を納めていたところ、その中の商品としてアイスキャンディーを入れてもらいたいと要望を受けたことがきっかけでした。創業者の見当邦雄は多角的な食品の生産を目指していたので、その足がかりとしてアイスキャンディーの事業に踏み切ることを決断しました。そして栃木県では一番初めに、厚生省(現:厚生労働省)から乳製品製造業者として認定を受けることになりました。

    多角的な事業展開への創業者の志が、今のアイスづくりにつながっているのですね。

    そうですね。多角的に事業を進めることはその後も当社の特色となりました。もちろんその後もアイスキャンディーだけに注力したわけではありません。昔はオフシーズンの冬には機械の整備が入り、一年中工場が稼働できる状況になかったので、中華まんじゅう、マロングラッセ、レストラン、駅そばなどにも事業を拡げることになりました。こうした年間を通した多角的な事業展開でグループとして経営を安定させようという方針は、今も続けているところです。

    多角的と言えば、貴社はバスケットボールB1宇都宮ブレックスやサッカーJ3栃木SCなど、地元栃木のスポーツクラブとコラボしたスポーツ指導や食育事業などにも積極的です。反響はいかがですか。

    当社はアイスや中華まんじゅうを作って販売している会社ですから、お子さん方の健やかな成長を応援したいという想いがありました。特に地元の宇都宮で創業して80年を迎えますので、何か地域の方々にお手伝いできるものがあればと考えていたところ、スポーツクラブでの企画があるという話をいただき参加を決めました。プロスポーツ選手たちと一緒にバスケットやサッカーをプレーするというのは、子どもたちにとってとても嬉しい体験だというフィードバックも得ています。今後も活動を続けて、子どもたちの成長の一助を担うことができればと願っています。

    創業80年の節目に、創業者の理念を次世代へ伝承する

    事業の安定という面では、現代においては環境に配慮した持続可能性も求められます。企業としてどのような対応をされていますか。

    環境問題、温暖化の問題は当社にとっても非常に大きなテーマです。気温の上昇はアイスの売上だけを考えれば追い風なのでしょうが、そんなことばかりを考えているわけにはいきません。地球温暖化の抑制には我われも取り組んでいかなければならないのです。当社の全工場には再生可能エネルギーで発電した電気を導入し、電源から発生するCO2を実質ゼロの状態にいたしました。またサクレを中心とした商品にプラスチック容器を使っている当社にとっては、マイクロプラスチックの問題も責任をもって取り組むべき重要課題だと考えています。環境保全イベントの主催などにも取り組んでいます。

    創業80年を迎えました。この節目で貴社として、また社長として何か企画されていることはございますか。

    当社が今日まで成長し続けてきたその原動力は、創業後間もない1949(昭和24)年に発生した、キティ台風に端を発すると思っています。当時は製粉事業を営んでおり、台風による原料(小麦など)の被害を防ぐため従業員一同が会社に集まり、一丸となってそれらの搬出に全力を尽くしました。しかし、結果として大きな損害を被り、創業者である見当邦雄は私財を投じて復興資金に充当。事業の再興を図りながら、国中が戦後の食糧難と被災とで苦しむ中、貴重な原料を小麦粉にしてお届けしました。現在も脈々と引き継がれている社是「私たちは喜んで社業に励み 進んで社会生活に貢献することを目的とします」は、この時、創業者が想いを込めつくったものです。

    私は、もう一度会社の理念を社員に伝えていくことに取り組んでいます。昨年は専務や常務と一緒に全国の事業所を回って、創業者が作った社是の意味を話させてもらったところなのですが、新入社員にもしていきたい。見当邦雄を直接知るのは我われの年代しかいなくなりました。ですからここでやらないと、創業の理念は伝わっていかないという危機感があるのです。

    事業では、3年後に向けて新工場の計画が進んでいます。アイスや中華まんじゅうの売上が順調に伸び、生産能力がほぼ限界に近づいているのです。しかし、単に最新鋭の工場とするだけでなく、サクレの製造過程などを地域の方々にご覧いただけるような場所にしたいとも考えております。

    また80周年の記念行事に関しては、さまざまなプロジェクトを組んでいます。例えば、これはサクレ初となるのですが、俳優の伊原六花さんを起用し、テレビCMを5月から全国で放映しています。他にも、2024年実施の「サクレ新フレーバー総選挙」で第1位を獲得した40周年記念フレーバー「サクレピンクミックス」の発売開始(2025年4月7日)や、サクレの無料配布イベントの実施、オリジナルのQUOカードが当たるキャンペーンなど、さまざまな企画を進行中です。アニバーサリーサイトでも発信していきますので、今後も楽しみにしていただければと思います。

    #フタバ食品#トップインタビュー#サクレ#創業80周年#サクレ40周年

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