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THE CIO LOUNGE 第12回——個人から大企業、国家規模まで、巧妙化するサイバー攻撃。セキュリティの脆弱性は日本を孤立させる?
ビジョナリー編集部 2026/04/30
FM大阪で放送中のラジオ番組『THE CIO LOUNGE』。前回は、株式会社システムズの代表取締役、小河原 隆史氏より、レガシーシステムを新しい環境に再構築して再利用する「マイグレーション」という手法が提示された。3月21日(土)オンエアの第12回では、個人、法人それぞれに最適化されたセキュリティソリューションを提供するトレンドマイクロ株式会社 取締役副社長、大三川 彰彦(おおみかわ・あきひこ)氏が登壇。高度化・巧妙化する昨今のサイバー攻撃について詳説し、サイバーセキュリティに関する危機意識の向上を訴えた。コメンテーターは矢島 孝應(NPO法人 CIO Lounge理事長)氏が務める。
グローバルにビジネスを展開する日本発のセキュリティベンダー
矢島: 唐突ですけれど、家に泥棒が入ってきて、お金を盗まれたとします。その家の人をどう思いますか?
珠久: 盗まれた人はかわいそう、大変だと思いますね。
矢島: そうですよね、それが普通の世の中です。ところがコンピュータの世界は逆で、盗まれた被害者がバッシングされるんです。「お宅の金庫が悪かったから盗まれたんだ」と。最近システム障害のあった、アサヒビールさん、アスクルさんは、経営陣の方が頭を下げていました。今日はそういうことがないように日夜働いておられる、素晴らしい方に来ていただきました。
珠久: パソコンを買ったら、必ずセキュリティソフトを入れますけど、私はウイルスバスターにとてもお世話になりました。それを開発しているのがトレンドマイクロさんですね。
大三川: 一般的なイメージとして外資系セキュリティベンダーだろうと思われることが多いですが、実は弊社は38年目を迎える日本企業です。企業系、個人系のサイバーセキュリティをまんべんなく網羅し、日本を含む44の国と地域でビジネスを展開しています。
矢島: このIT業界って、本当にいろんなソフトウェアがありますよね。ただ、ここまでグローバルに展開しているソフトウェア企業を見ると、本社が日本にある会社は本当に少ないんです。日本で会社を立ち上げて、世界展開を目指すケースももちろんあるんですが、実際には途中で難しさに直面して、方向転換したり、海外展開を断念してしまう企業が多い、というのが実態のようです。
詐欺電話ブロックアプリを無償提供、警察庁とタッグを組んで詐欺防止に貢献
珠久: サイバーセキュリティに長く携わる中で、どのような変化があったでしょうか。
大三川: 20年前は、パソコンなどのデバイスを守ることがセキュリティの中心でした。その後、企業がサーバーにデータを集約して活用するようになり、今度はサーバーを守る必要が出てきました。さらに、サーバーがネットワークにつながってクラウドの利用も広がり、今は自動車やロボットなど、IT技術の進化によってセキュリティが必要な領域はどんどん広がっています。全体を可視化して把握すること、事前に対処すること、そして何かあったときにどうリカバリーするかが問われています。
珠久: 高市首相がサイバーセキュリティの抜本的強化を政策の柱の一つに据えておられますよね。一般の私たちがこれから直面する脅威は何でしょうか。
大三川: 個人については、金銭の窃取を狙ったフィッシング犯罪ですね。広告をクリックしたことで個人情報を奪われて、そこから詐欺メールがきてしまう。投資詐欺、ロマンス詐欺など詐欺の被害額は昨年1年間で3,200億円以上、スマホから来るものも多く、新しい手口として急増しているニセ警官詐欺では10代、20代の相談も多いそうです。「以前の○○の件で」など、なりすましの語り口も巧妙です。ひどいことになると、スマホを乗っ取られそのまま盗聴されます。
珠久: 詐欺電話をブロックできる「詐欺バスターLite」が、警察庁から推奨アプリとして認定されたそうですね。ありがたいです!
大三川: もともと弊社では、「詐欺バスター」というアプリを出していたのですが、警察庁から「国民のために無償で配りたいので協力してほしい」と要望を受けてそのような運びとなりました。詐欺バスターの機能の1つを流用し、詐欺電話をブロックするアプリです。弊社では詐欺電話に関する膨大なデータベースを構築し、情報収集をしています。

国家を揺るがすサイバー攻撃——脆弱な国は世界のサプライチェーンから外される?
珠久: 国や企業が晒されている脅威についてはいかがですか。
大三川: 2024年末から翌年の始めにかけて、たくさんのアクセスでシステムに過剰な負荷をかけて動かなくするDDoS攻撃が相次ぎ、航空会社や金融機関が止まったりしましたよね。最近のニュースでは、ランサムウェア被害の6割ぐらいが中小企業だと報道されていました。これは、セキュリティの甘い中小企業にまず潜り込んで、そこに繋がっている大企業を狙う目的が大きいようです。さらに近年はAIを活用した攻撃も増えており、国レベルになれば、サイバー攻撃で電気やパイプラインなど他国のインフラを止めることもあります。政治的な動きもあるので非常に厄介です。
矢島: 今や戦争でも、まずテクノロジーによる攻撃が行われる時代になっています。最初にサイバー攻撃をかけて、次に実弾を撃つという形になってきているんです。
大三川: 高市首相のおっしゃる通り、国としてIT意識を高めることは、絶対に必要です。サイバーリスクに対する危機管理ができなければ、友好国同士での情報交換で仲間外れにされる恐れもあります。アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドはサイバー脅威について情報共有の枠組みを作っていますが、日本も入ることを希望すると、国としてまず信頼されないといけません。だから経営者は、サイバーセキュリティにおいて各国がどう動いているかも意識しないと、世界で戦えません。場合によっては、世界のサプライチェーンから外されてしまいます。
矢島: SDGsの観点から欧米を中心に「環境対応ができてない企業とは取引しない」とする流れがあります。同様に「セキュリティに問題がある企業とは取引しない」ということですよね。日本にいくら製品力、技術力があっても、サイバーセキュリティの足かせで欧米と取引できなくなるおそれがあるのです。
珠久: トレンドマイクロさんが果たす役割が一層大きくなっていきますね。
大三川: 弊社では脆弱性を発見した研究者に対して金銭的インセンティブを与える取り組み、Zero Day Initiative(ZDI)を行っています。20,000人以上のホワイトハッカー(情報システムやセキュリティの問題を特定・解決する専門家)から、常時、脅威情報を収集しており、世界中で発見される脆弱性の73%をZDIが発見し、リスクへの対応を行っています。また、長年AI技術を活用しており、こうした人の知見とAIツールを組み合わせて、最適なソリューションを提供しています。あらゆる手段を用いてシステムのリスクを事前に想定・可視化し、継続的に守っていくのが弊社のサービスです。
珠久: 気になるサービスの具体的な内容、来週是非詳しくお聞かせください。
【第13回に続く】
※番組収録時のディレクターカット版をポッドキャストでお聞きいただけます。
https://www.fmosaka.net/_ct/17830362
※収録の雰囲気も楽しめるYouTube動画をご覧いただけます。 https://www.youtube.com/watch?v=eDnTDB-DWhY
<番組情報>
番組名:「THE CIO LOUNGE」
放送日時:毎週⼟曜⽇ 7:00〜7:25
放送日:2026年3月21日(土) 7:00〜7:25
放送局:FM大阪
ゲスト:大三川 彰彦(おおみかわ・あきひこ トレンドマイクロ株式会社 取締役副社長)
1982年、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現・日本ヒューレット・パッカード合同会社)に入社、営業としてキャリアをスタート。
1992年、日本マイクロソフト株式会社に入社し、2000年、同社執行役員に就任、ビジネスインターネット事業部長、エンタープライズ営業本部長、ゼネラルビジネス統括本部長を歴任。
2003年、トレンドマイクロ株式会社に入社。日本国内における個人ユーザならびに企業ユーザ向けビジネスの総責任者として活動。2012年に取締役副社長に就任。現在、国内ビジネスに加え、グローバルビジネスや新規ビジネス開発にも携わる。
また2019年、トレンドマイクロがMoxa社と設立したOTセキュリティソリューションを提供するTXOne Networksでも会長を務める。
2025年6月、アステリア株式会社 社外取締役に就任。
コメンテーター:矢島 孝應(特定非営利活動法人 CIO Lounge理事長)
元ヤンマー株式会社取締役CIO。パナソニック、三洋電機、ヤンマー3社で情報システム責任者を経験。現在理事長を務めながら、数社の社外取締役や顧問等の立場で活動。趣味はゴルフとワイン。
パーソナリティー:珠久 美穂子(FM大阪DJ)
大阪府出身。2000年にFM大阪の『Hit Street Midnight Special』でDJデビュー。趣味はドローン、ゴルフ、テニス。珠算検定2級、暗算検定2級、秘書検定2級。


