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ひき逃げに遭ったらまず何をする?──初動対応で「泣き寝入り」を防ぐ完全ガイド
ビジョナリー編集部 2025/12/12
突然、家族や自分がひき逃げに巻き込まれてしまったら——。
多くの人は動揺し、何から手をつければ良いのか判断できなくなってしまいます。ひき逃げ被害は、身体だけでなく心にも深い傷を残す出来事です。しかし、そんな状況でも、最初の対応さえ間違えなければ、その後の治療・生活・補償において大きな差が生まれます。
近年は防犯カメラやドライブレコーダーの普及により、ひき逃げ犯の検挙率は上昇しており、「泣き寝入り」する必要はありません。
本記事では、ひき逃げ事故に遭った直後に取るべき行動から、加害者が見つからない場合の救済制度、加害者が判明した後の手続き、そして弁護士に相談すべきタイミングまでを、わかりやすく整理して解説します。
“もしもの時”に、あなたと大切な人を守るための確かな知識としてお役立てください。
ひき逃げ事件は「泣き寝入り」する必要はありません
近年、ドライブレコーダーや防犯カメラの普及、車両ナンバー自動読取システム(Nシステム)や捜査支援システムの活用が進み、警察による捜査が高度化し、ひき逃げ犯の検挙率は毎年上昇しています。死亡事故に限れば検挙率はほぼ100%に近づいています。
実際、「令和4年版犯罪白書」によれば、全体のひき逃げ事件の検挙率はおよそ7割、死亡事故では98.9%にも達しています。
「どうせ見つからない」「泣き寝入りするしかない」と思い込まず、冷静に、そして正しく対応することが大切です。
ひき逃げ被害の直後、まず何をすべきか
1. 安全の確保と警察・救急への連絡
最初に優先すべきは、ご自身やご家族の安全の確保です。車道にいる場合は速やかに歩道など安全な場所へ移動し、二次被害を防ぎましょう。
そのうえで、すぐに警察(110番)や、けががある場合は救急車(119番)を呼んでください。「大したけがじゃない」と感じても、事故直後はアドレナリンが分泌され痛みを感じにくいものです。後から症状が悪化するケースも多いため、必ず医療機関で診察を受けることをおすすめします。
診断書は保険請求や損害賠償の重要な証拠にもなります。
2. 加害車両や事故状況の記憶・記録
加害者がその場から逃走した場合、できる限り早く、車種や色、ナンバープレート、特徴(傷・ステッカー等)など記憶に残っていることをメモしてください。スマートフォンで写真や音声メモを活用するのも有効です。
人間の記憶は時間と共に薄れてしまいます。少しでも多くの情報が、加害者特定や補償交渉の大きな手がかりとなります。
例えば、あるケースでは、ナンバーの「ひらがな」と下二桁の数字だけを覚えていたことが証拠となり、早期検挙につながった事例もあります。
3. 目撃者や証拠を積極的に探す
事故現場を通行していた人がいれば、できるだけ声をかけ、連絡先を教えてもらいましょう。目撃者の証言は警察の捜査や、後の損害賠償交渉で非常に重要な役割を果たします。
また、現場周辺に設置されている防犯カメラやドライブレコーダーの映像も大きな手がかりとなります。自力での交渉が難しい場合は、警察や弁護士を通じて映像提供を依頼することもできます。
警察への届け出と事故証明書の取得
ひき逃げは、たとえ軽傷であっても必ず警察に届け出る必要があります。道路交通法により、事故の届け出は義務付けられており、怠ると罰則の対象にもなります。
警察に通報すると、現場での実況見分や、後日の事情聴取が行われます。できる限り協力し、事故状況や加害車両の情報を伝えましょう。
ここで発行される「交通事故証明書」は、今後の保険請求や損害賠償交渉に欠かせない公式書類です。この証明書がなければ、補償を受けられない場合があるため注意が必要です。
医師の診断・治療を受けることの重要性
事故直後はパニック状態で痛みを感じにくいことも多く、頭部外傷やむち打ち症、内臓損傷など、後から症状が現れるケースも少なくありません。
「大丈夫そうだから」と安易に自己判断せず、必ず医療機関で診察を受け、異常がなくても診断書を作成してもらうことが大切です。
診断書や治療記録、領収書は、加害者が見つかった際の損害賠償請求や、自身の保険適用時に必要な証拠となります。
また、治療が始まったら医師の指示通りに通院・治療を継続してください。自己判断で通院を減らしたり、早期に治療を切り上げてしまうと、後に補償額が減額されるリスクもあります。
加害者が見つからない場合の補償と救済制度
任意保険の活用
自動車保険(任意保険)に「人身傷害保険」や「無保険車傷害保険」が付帯されている場合、ひき逃げ事故でも一定の補償を受けられます。
- 人身傷害保険は、契約者や同乗者が交通事故で死傷した場合、加害者の有無や過失割合に関係なく、実際の損害額を補償してくれます。
例えば治療費や休業損害、後遺障害が残った場合の補償など、幅広くカバーされます。 - 無保険車傷害保険は、加害者が無保険または不明な場合に、死亡や後遺障害が残ったケースで保険金が支払われます。
ただし、適用範囲や限度額は保険内容によって異なるため、ご自身の契約内容を確認しておくと安心です。
政府保障事業制度の利用
加害者が特定できない場合や、任意保険が適用されない場合でも、「政府保障事業制度」を利用することができます。
これは国が定める被害者救済制度であり、ひき逃げや無保険車による事故の被害者に対し、自賠責保険と同等の基準で損害を補償する仕組みです。
たとえば、治療費や休業損害、慰謝料は「傷害」で最大120万円、後遺障害が残れば75万~4,000万円、死亡事故の場合は最大3,000万円までが支給されます。
この制度の申請は、損害保険会社を通じて行うことができます。
ただし、申請から支払いまでには調査や審査に一定の時間がかかること、また「時効」があるため、できるだけ早めの手続きをおすすめします。
加害者が見つかった場合の対応と損害賠償請求
警察の捜査や証拠収集によって加害者が特定された場合、被害者は加害者または加害者の加入する保険会社に対して損害賠償請求を行うことができます。
損害賠償の対象には、治療費や通院交通費、休業損害、後遺障害が残った場合の逸失利益、そして精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれます。
ここで注意したいのは、加害者側の保険会社が提示する示談金は、あくまで「保険会社基準」で算定されているケースが多いということです。この金額は弁護士が交渉する「弁護士基準」よりも低額になる傾向があります。
ひき逃げ事件で弁護士に相談すべき理由
ひき逃げ事件では、被害者の精神的負担が非常に大きくなります。加害者との交渉や、保険会社とのやり取り、時には訴訟に発展することも珍しくありません。また、多くの自動車保険には「弁護士費用特約」が付帯しており、これが適用されれば 弁護士への相談料・着手金・報酬金などを自己負担0円で利用できる 場合があります。
弁護士に相談することで、刑事告訴手続きや損害賠償請求、示談交渉まで一貫してサポートを受けられます。
また、慰謝料の算定基準が「自賠責基準」や「保険会社基準」より「弁護士基準」の方が高いため、弁護士が介入することでより適切な補償を受けられる可能性が高まります。
さらに、加害者が見つからない場合でも、刑事告訴を「被疑者不詳」で行うことで、警察の捜査を促進し、加害者に厳正な処罰が下される可能性を高めることもできます。
まとめ
ひき逃げ事故は、突然日常を奪い、被害者と家族に深いショックと不安をもたらします。しかし、初動で正しい対応を取り、証拠を確保し、利用できる制度を知っておくことで、治療・補償・生活再建は大きく前進します。
加害者が見つからない場合でも、任意保険や政府保障事業制度といった救済策があり、「泣き寝入り」する必要は決してありません。
また、弁護士費用特約があれば、費用を負担することなく専門家に相談でき、示談交渉や損害賠償請求をより有利に進められます。
もしもの時は、恐怖や怒りに飲まれてしまいがちですが、まずは落ち着いて安全を確保し、本記事で紹介した手順に沿って行動してください。
そして普段から、自身や家族の保険内容を確認しておくことが、いざという場面であなたと大切な人を守る大きな力になります。
※ 記事内の情報は2025年12月時点のものです。


