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2025

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    アメックスのDNA──信頼・サービス・挑戦が生む『世界最高の顧客体験』(前編)

    アメックスのDNA──信頼・サービス・挑戦が生む『世界最高の顧客体験』(前編)

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    現金などを輸送する運送業から始まり創業175年。トラベラーズ・チェックの発行や会員向け旅行サービスなどを経て、現在はクレジットカード決済を中心としたライフスタイルやペイメントサービスを提供する会社としてグローバルな信頼を得ているアメリカン・エキスプレスは、徹底した顧客本位のサービス提供を強みとする。そのビジョンとは、『日々、最高の顧客体験を提供すること』。同社に脈々と受け継がれる企業精神について、須藤靖洋日本代表/社長に話を伺った。

    社員が自発的に動いた被災者支援とその原動力

    東日本大震災の時、貴社は被災地にいる顧客の支援へ積極的に動かれたと伺いました。

    当時、マーケティング部門や顧客サービス部門の社員たちが自発的に、被災地に住所登録のあるお客様全員をリストアップし、1軒1軒電話をしてお困りのことはないか尋ねて回りました。あるお客様からは、『入学式を楽しみにしていた娘のランドセルが流されてしまった』というお話を聞きました。そこで、私たちは新しいランドセルを購入し、担当者が気を利かせてお子さんに喜んでもらえそうなぬいぐるみも一緒に入れて送ったところ、大変感謝されました。

    物資が不足する中、タバコを買い求め、宅配便で送ることもありました。その旨をお客様にお電話でお伝えしたところ、当初は「なぜ電話を?」「どういう意味ですか?」と驚かれました。しかしすべて無償で、お客様の困っていることを少しでもサポートさせていただきたいという意図をお知らせすると、非常に感動していただけました。

    なぜ貴社の社員は、このような行動を進んでとることができたのでしょうか。

    誰かが指示するまでもなく、社員一人ひとりがリーダーシップをとって自分たちで考えて行動する文化は、ずっとアメリカン・エキスプレスの中に根付いています。実は3.11の前のスマトラ沖地震の際も、私たちは海外で同様の支援を行っていました。私たちの175年の歴史の中には、『トラスト(信頼)』『サービス』『セキュリティ(安心)』という3つの柱があり、それが社員全員のDNAとして受け継がれているのだと思います」

    「世界最高の顧客体験」を支える、独自の評価制度

    そのような企業文化はどのようにして醸成されているのでしょうか。

    当社には『日々、世界最高の顧客体験を提供する』というビジョンがあり、それが社員の頭の中に深く浸透しています。当然、上司もチームメンバーに対してそれに基づいて対話を進めます。特徴的なのは年に複数回行う人事評価で、掲げた目標に対する成果の達成度合いでみる『ゴール』と、目標に対してどのようなリーダーシップを発揮して行動したかを見る『リーダーシップ』を50対50の割合で見ます。そのため、どんなに素晴らしい数字を達成しても、行動が私たちの求める規範から外れていれば、評価は平均レベルにとどまります。この『リーダーシップ』は管理職だけに求められるものではなく、全社員同様に対象となります。アメリカン・エキスプレスでは、社員一人ひとりがリーダーであるという考えのもと、リーダーシップの重要性や求められるリーダーシップがどのようなものかを入社時から繰り返し共有しています。特に『お客様への向き合い方』は、アメリカン・エキスプレスならではの顧客サービスの提供において重要な項目となっており、こうしたリーダーシップの徹底とともに社内の仕組みを通して、企業の価値観が自然と全社員に浸透していくのです。

    貴社のお客様本位の姿勢は、ネット・プロモーター・スコア(NPS)という顧客満足度指標を重視していることからもうかがえます。

    私たちは提供するサービスや商品に対するお客様からのフィードバックを非常に重要視しており、その測定の1つにNPSの考え方を取り入れています。例えば、お客様対応の最前線の役割を担うコールセンターにおいては、上司はチームメンバーの電話応対をモニタリングすることに加え、お客様からのフィードバックに基づいたデータを使ったコーチングを行います。また品質だけではなく、お客様のご要望を理解しその解決策を提示するまでの効率も追求します。お客様からのお問い合わせ対応に対して、さまざまな指標から多角的にチェックしております。また、こうしたNPSを活用した考え方は例えば商品開発や督促業務なども含め、全部門でも同様に取り入れられております。『督促業務で顧客満足度調査』ということに違和感を覚える声があるかもしれませんが、ありとあらゆる業務において、私たちアメリカン・エキスプレスならではの顧客サービスに向けた徹底した精神、常にお客様に真摯に対応するという姿勢が貫かれています。これこそが、当社の強みではないかと考えています」

    運送業から始まった歴史と、日本での飛躍

    175年前にアメリカで創業した当初、貴社は現金などを輸送する運送業を営んでいたとききます。業態はどのように変化をしたのでしょうか。

    創業当時は、今でいう宅配便のようにお金を輸送していました。そこでは何よりも安心していただける『セキュリティ』や、お届けする『サービス』、そしてアメリカン・エキスプレスなら任せられるという『トラスト』(信頼)が不可欠です。業態はその後、時代やお客様のニーズに応じてトラベラーズ・チェックの発行や旅行業、そしてクレジットカードビジネスへと変わってきましたが、そのコアとなる考え方の部分は創業以来、実は一切変わっていません。

    その後アメリカン・エキスプレスは日本市場でも飛躍しますが、どのような歩みがあったのでしょうか。

    日本市場における大きな転換点は、1980年のゴールド・カードの日本初導入に始まります。まさにプレミアム・カード市場の先駆けと自負しておりますが、その後、1985年には法人カード事業、1997年のクレディセゾンさんとのネットワーク・提携カード事業、そして2000年のJCBさんとの加盟店業務における提携が、日本におけるアメリカン・エキスプレスブランドの拡大を後押ししました。特にJCBさんとの提携は大きく、これによりアメリカン・エキスプレスのカードが使える場所が飛躍的に増えました。パートナーとなって25年になりますが、日本のお客様の利便性を高める上で、非常に重要な一歩でした。

    #アメリカン・エキスプレス#AMEX#トップインタビュー

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