アメックスのDNA──信頼・サービス・挑戦が生む...
SHARE
「出る杭は打たれる」文化からの脱却。森永乳業・大貫社長が語る「質」への追求と、挑戦する「人財」を育む組織改革(後編)
ビジョナリー編集部 2025/11/19
前編はこちら>>「出る杭は打たれる」文化からの脱却。森永乳業・大貫社長が語る「質」への追求と、挑戦する「人財」を育む組織改革(前編)
前編では、森永乳業の大貫陽一代表取締役社長に、コロナ禍という激動期における就任からの歩みや、中期経営計画で掲げた「規模」よりも「質」への追求、そして「森永乳業らしさ」のDNAである「おいしさ」とグローバル戦略について伺った。後編では、それらの戦略を実現するための土台となる「組織風土改革」と「人財育成」に対する大貫社長独自の哲学、そして次世代へ託す想いについて、さらに深く掘り下げていく。
「会社が何とかしてくれないか」の前に。社長が求める「自律した人財」
社長は「人材」ではなく「人財」という言葉を使われています。どのような想いが込められているのでしょうか。
「人が財産なんだ」という想いから、「人財」という言葉を使っています。私が求めているのは、とにかく自律した社員です。「会社が何とかしてくれないか」ではなく、自分自身で考えて行動に移す姿勢が大事だと思います。そういう社員の集合体にしていきたいです。
そのためにもダイバーシティは重視しており、現在、キャリア採用も増えています。キャリア採用の社員の声もとても参考になります。比較的多い声として「硬い」、「承認プロセスの多さ」、「連絡が文書中心」などです。こうした気付きは社内改革に役立ちます。
今の若い世代についてはどうご覧になっていますか。
ここ2、3年の新入社員と話をすると、「これをやりたいからこの会社に入ってきた」という目的意識がかなり明確です。
それはとてもいいことだと思う反面、それができなかった場合、離職する現象も出てきています。
だからこそ、社員に求めたいのは、自分の会社の商品にもっと愛着を持ってほしいということです。以前、他業界から来た方に「生活に密着した商品を扱っているわりに、社員の商品に対する愛情が希薄ではないか」と指摘されたことがあり、ハッとしました。これは食品メーカーとして一番大切なことだと思います。
欠点を是正するより、長所を伸ばす。これまでのキャリアから学んだ「人の見るべき点」
社内表彰制度なども含め、社長ご自身の「人の育て方」についてのお考えをお聞かせください。
前にお話しした「トライアル&エラー賞」もそうですが、挑戦する文化を作るには、挑戦する人たちを応援する会社であることが重要だと考えています。
新しいことに挑戦する際に、腹の中では「どうせ売れない」と思っている社員がいるような組織にはしたくありません。決まるまでは言いたいことを言い合いながらも、決まったらそれに従う、そういう会社にしたい。そして、挑戦したことに対し「よくやった」と言える文化が理想です。
人財の育成について、これは私の個人的な考えですが、欠点を是正したり補ったりすることに時間を使うのであれば、長所を伸ばすべきだと思っています。その人の良いところを徹底的に見ることが大事です。
自分と相性が悪いと思うような人でもどこかしら良いところがあるものです。10のうち1しかないケースもあれば、8、9良いと思えるような自分ととても合う人もいる。その度合いは違いますが、絶対に良いところはみんな持っています。
組織を束ねる時に、そういう良いところをみんなから引き出して、それぞれのモチベーションを引き出せる上司を増やしたいですし、社員にもそういう人になってほしいと強く思います。
私自身もこれまで、合わない人でも良い点はもちろんですが、悪い点も反面教師として見習うべきところは素直に学ぶように努めてきました。
「20年前に戻れたら英会話を」。答えのない時代を生き抜く、次世代へのメッセージ
最後に、次の世代の社員たちにどのような力を育んでほしいか、経営者としての想いをお聞かせください。
今は、ますます先が見えない時代になっています。会社の仕事って、学校の勉強と違って答えがないんですよね。何が正しいかなんて分からない中で、常に自分で考えて選択していかなければなりません。
そのためには、「先見性」が大事です。物事を判断するには、「情報収集力」や「自分自身の研鑽」に基づいて判断する目を養うことが必要になります。そして、「広い視野」を持たないと判断力を養うのは難しいです。これまでの内向きな会社というイメージから脱却するためにも、もっとオープンに取り組める会社にしていきたいと思っています。
また、ダイバーシティの時代においては、様々な人たちと接するわけですから、語学のみならず、相手を知るために必要なコミュニケーション能力が必要です。
私が社長になってから一番痛感したのは「英語力」の重要性です。もし20年前に戻れたら、徹底的に英会話を学びたいと思うほどです。
現在、海外に行く機会も、海外のお客様と接する機会もたくさんあります。もし自分がもっと流暢に話せたら、さらにこの人と近づけただろうな、と考えてしまいます。
これからの人には、英語だけは絶対にやった方がいいと伝えたいです。当社も海外事業に注力しており、海外売上高比率を上げていかないといけませんので、ますますそういう機会は増えていきます。商談などは、少々やった英語力では難しいと思いますが、それ以外の場でコミュニケーションが取れれば全く違う関係性が築けると思っています。
私自身、会食でアルコールが入ると“通じないかもしれない”という心の障壁がなくなり、通じているのかどうかわからない英語で喋りだすのですが、そこからコミュニケーションが取れ、相手との距離感がグッと縮まった経験もあります。
現代は答えがない時代だからこそ、人と繋がるためのコミュニケーション能力を磨いてほしいと思います。


