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2026

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    若者はSNSから離れていない──進む「クローズド化」が変えるつながりの形

    若者はSNSから離れていない──進む「クローズド化」が変えるつながりの形

    SNSで「友達を増やす」ことに夢中になった時期はありませんか。それとも今は、限られた親しい人とだけやり取りする使い方をしていますか。実は、若者のSNSの使い方は大きく変わり始めています。

    「SNS離れ」と言われることもありますが、実態はその逆です。SNSはすでに生活インフラとして定着し、使い方だけがアップデートされているのです。その変化を象徴するのが「クローズド化」です。つまり誰と、どこまで繋がるかを自分自身で選ぶという動きが広がっているのです。

    「広く浅く」から「狭く深く」へ

    SNSは「フォロワー数=価値」という時代がありました。InstagramやX(旧Twitter)でたくさんの人とつながり、日々の出来事や自撮り、そして「映える」写真を投稿するのが主流でした。しかし今、Z世代や10代・20代の若者たちの間では、「誰とでも繋がる」ことより、信頼できる少数の友人とだけ親密にコミュニケーションを取るスタイルが主流になっています。

    たとえば「BeReal.(ビーリアル)」は、その象徴的な存在です。このアプリは、1日1回、予測不能なタイミングで通知が届き、2分以内に内カメラと外カメラで“ありのまま”の瞬間を撮影して投稿する仕組みです。加工もできなければ、ストック写真の投稿も不可。結果、作り込まれた“映え”とは無縁の、リアルな日常が並びます。現在、世界で月間数千万人規模のアクティブユーザーを抱え、日本国内でもZ世代を中心に利用されています。

    こうしたクローズドSNSは、「フォロワーの数」よりも「つながりの深さ」に重きを置き、親しい人だけが見られる空間で、本音や素顔を共有する場になっています。

    位置情報共有──「今どこ?」の一言すら不要な新しいつながり方

    もうひとつ、若者のSNS文化を大きく変えているのが「位置情報共有アプリ」の存在です。

    代表的なサービスが「whoo your world(フーユアワールド)」です。whooは日本発のリアルタイム位置情報共有アプリとして、リリース直後から累計1000万〜3000万件以上のダウンロードを記録しているとされ、Z世代を中心に使われている存在感のあるサービスです。登録した友人や家族とリアルタイムで位置情報を共有でき、待ち合わせの際に「今どこ?」と尋ねる必要がありません。地図上に友人のアイコンが現れ、バイト中なのか、大学にいるのか、どこに向かっているのかが一目で分かります。

    特筆すべきは「プライバシーコントロール」の進化です。whooには「ゴーストモード」や位置情報の詳細度調整機能があり、自分の居場所を誰にどこまで見せるか、細かく設定できます。こうした機能は、個人情報の流出やストーカー被害といったリスクへの対応でもあります。若者たちは「信頼できる現実世界の友人」にだけ厳選して繋がることで、便利さと安全の両立を図っています。

    学生生活の中で進化する「親密圏」──クローズド化がもたらす新たな人間関係

    今の若者たちは、大学進学時にX(旧Twitter)で「#春から○○大」といったハッシュタグを使い、同じ入学予定者同士で早期につながりを作ります。しかし、これらのアカウントは匿名、顔写真もなし。個人情報はガードしつつ、必要な情報だけを交換する“合理的な付き合い”が定着しています。

    その後、実際に会って信頼できると感じた相手だけが、Instagramの非公開アカウントや鍵付きグループで繋がる。さらに、その中でも本当に親しい友人だけに「ストーリーズ」や「親しい友達」限定の投稿を公開する。こうして、SNSの中に「親密圏」が重なっていくのです。

    炎上や個人情報の漏洩といったリスクを身をもって学んできた世代だからこそ、公開範囲を細かくコントロールし、「見せる相手」と「見せない相手」を明確に分けるのです。

    「SNS離れ」ではなく「SNSの再編」──データが示す新しい現実

    メディアでは「若者のSNS離れ」が取りざたされることも多いですが、実際にはまったく異なる現象が進行しています。

    総務省の『情報通信白書』によれば、SNSの利用率は全世代で右肩上がり。LINEの利用率は94.9%に達し、X(旧Twitter)やInstagramも幅広い世代で利用されています。 若者の間で「投稿頻度」が減っているSNSもありますが、実際には、ストーリーズやDM、クローズドグループでのやり取りが主流化し、「公開」から「限定公開」へのシフトが起きているのです。

    この流れは、日本に限ったものではありません。アメリカやイギリス、韓国でも、公開型SNSでの投稿は減少する一方、友人限定のチャットやストーリーズ、コミュニティ、グループ通話といった“密度の高い交流”が増えています。「SNS離れ」ではなく「SNSの生活への組み込み」が進行中です。

    クローズドSNS時代の課題と未来──「深いつながり」の裏側

    「位置情報を共有するなんて危険では?」と感じる大人世代も多いでしょう。実際、whooなどの位置情報アプリでは、安易な友達追加によるストーカー被害や、個人情報の流出といった事件も報告されています。

    しかし若者たちは、「現実世界で信頼できる人」にだけ厳選して繋がる、怪しい申請は即ブロックするなど、リスク管理のもとでアプリを使いこなしている面もあります。

    また、BeRealでは写真のスクリーンショットが誰に何回撮られたかが分かる、whooでは「ゴーストモード」で一時的に居場所を隠せるといった、プライバシー保護機能が進化し続けています。

    このクローズド化の先にあるのは、「狭くて深い」関係への回帰です。

    SNSを通じて誰とでもつながれる時代だからこそ、「信頼できる少数の友人」と濃い時間を過ごすことに価値を見出す若者が増えています。一方で、趣味や学業、推し活など目的ごとに複数のグループを使い分け、その時々で最適なつながり方を選ぶ柔軟性も備わっています。

    結論──「離れる」のではなく「選ぶ」時代へ

    「若者のSNS離れ」とは、表層的な現象にすぎません。実際には、SNSは生活の中に深く組み込まれたまま、その使い方だけが変化しています。

    誰と、どこまで、どんな距離感で繋がるか。若者たちは「繋がること」そのものを目的にするのではなく、自分が安心できる範囲を選び取る方向へと舵を切っています。 その感覚に違和感を覚える人がいるのも、自然なことです。流行に合わせてSNSの使い方を無理に変える必要もありません。

    重要なのは、繋がる友人の「広さ」や「深さ」を他人に決めさせないことです。SNSをどう使うかは、自分にとって心地よい距離感をどう保つかという個人の選択なのです。

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