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2026

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    東京アプリとは何か――「都民向け公式アプリ」が東京の暮らしをどう変えるのか

    東京アプリとは何か――「都民向け公式アプリ」が東京の暮らしをどう変えるのか

    2026年1月、東京アプリを活用した生活応援ポイント事業がニュースになりました。年明けの報道を通じて、「東京アプリ」という名称が広く知られることになりました。

    ただ、このアプリはポイント事業のために作られたものではありません。東京都が構想しているのは、都民向けの行政サービスを一つの入口に集約し、東京という巨大都市における行政の届け方そのものを組み替えることです。

    本稿では、東京アプリの概要と、東京都がそこに込めた狙いを整理してご紹介します。

    東京アプリとは何か――2026年に示された全体像

    東京アプリは、東京都が提供する都民向けの公式アプリです。2025年2月17日にリリースされ、行政サービスをスマートフォン上で扱うための基盤として公開されました。

    2026年1月の発表では、防災や子育て、健康、各種手続き案内といった、都民生活に直結する分野から段階的に統合していく方針が示されています。

    これまで東京都の行政サービスは、分野や部署、サイトごとに分散しており、必要な情報にたどり着きにくいという課題を抱えてきました。制度は用意されていても、探しにくく、十分に活用されない状況が続いていたのです。

    東京アプリは、こうした構造を見直すための取り組みです。都が提供する行政サービスの「入口」を一つにまとめ、スマートフォンを起点に都民と行政をつなぎ直す――東京都が掲げるスマートシティ構想を、日常の行政サービスの中で具体化する役割を担っています。

    なぜ今なのか――東京都が「公式アプリ」に踏み切った理由

    今回の動きの背景には、東京都が抱える構造的な課題があります。人口は1400万人を超え、行政サービスの量も複雑さも年々増している一方で、窓口対応や個別案内を人手だけで支え続けるには限界が見え始めています。

    こうした現実を受け、東京都は明確に舵を切りました。紙や窓口を前提とした行政から、スマートフォンを前提とした行政へ。行政サービスの設計思想そのものを切り替えようとしているのです。

    この方針転換を技術面から支えているのが、GovTech東京(東京都の行政DXを推進するために設立された専門組織で、デジタル施策の企画から実装までを担う。)です。東京アプリは単発の施策ではなく、行政DXを進めるための基盤として位置づけられています。

    東京アプリで何ができるのか――まずは“生活に近いところ”から改善

    今回の発表では、東京アプリの考え方がはっきり示されました。最初から何でもできる万能アプリを目指すのではなく、利用頻度が高く、生活に直結する分野から順に統合していくという方針です。

    象徴的なのが防災分野です。地震や台風などの災害時には、正確な情報をいかに早く届けられるかが、生死にも関わります。東京アプリでは、東京都が発信する防災情報を、プッシュ通知などを通じて都民に直接届ける仕組みが重視されています。

    子育てや健康分野も同様です。制度や支援策は存在していても、「知らなかったために使えなかった」というケースは少なくありません。東京アプリは、そうした情報の取りこぼしを減らし、必要な支援に自然とたどり着ける環境を整えることを狙っています。

    行政に「探しに行く」時代の終わり

    東京アプリがこれまでの行政サービスと決定的に違うのは、「自分で探しに行かなくてもいい」設計を目指している点にあります。

    従来の行政サイトは、制度を起点に情報が整理されてきました。しかし、都民が本当に知りたいのは制度の一覧ではなく、「自分の場合、何が関係するのか」です。

    東京アプリでは、年齢や家族構成、居住地域などに応じて、関係のある情報が前に出てくる仕組みが検討されています。必要な人に、必要な情報が自然と届く設計です。

    こうした考え方自体は、民間のスマートフォンアプリではすでに一般的になりつつありますが、行政分野に本格的に取り入れられるのは、大きな転換点だと言えるでしょう。

    11,000円分の東京ポイント、何に使えるのか

    今回の生活応援ポイント事業では、東京アプリ上で本人確認などを行った都民に、11,000円相当の「東京ポイント」が付与されます。特徴は、その使い道の広さにあります。

    付与された東京ポイントは、都の施策への参加に使えるほか、複数の民間ポイントサービスと交換することも可能です。日常の買い物や支払いに充てられるため、「行政ポイントは使いにくいのではないか」という不安を感じにくい設計になっています。

    東京という巨大都市だからこそ必要だった仕組み

    東京都は、日本の中でも特異な存在です。人口規模が大きく、行政サービスの数も多い。自治体構造も複雑で、部分最適を積み重ねるだけでは、全体像が見えにくくなっていました。

    東京アプリは、こうした状況に対応する共通インフラとして設計されています。今後は区市町村との連携も視野に入れながら、東京都と基礎自治体のサービスを、よりシームレスにつないでいく構想が示されています。

    引っ越しや出産、介護、就職といった人生の節目で発生する手続きを、一本の流れで完結させる。その第一歩として位置づけられているのが、東京アプリです。

    東京アプリが示す、行政DXの次の段階

    東京アプリは、単なるデジタル化に留まるものではありません。行政サービスを、「使いやすい体験」として捉え直し、設計し直そうとする試みです。

    窓口に足を運ばなくてもいい。制度を一つひとつ調べ回らなくてもいい。知らなかったことで不利益を被ることも減らしていく。東京アプリが目指しているのは、そうした行政との距離感の変化です。

    この構想は、行政サービスを「特別なもの」から「日常の一部」へと近づけようとするものであり、東京アプリはその入り口として位置づけられています。

    使うかどうかで、見える景色が変わる

    東京アプリを使うことで、行政サービスとの距離は縮まっていきます。

    支援制度や防災情報、都のさまざまな取り組みが、必要なときに手元へ届く。行政は、「自分で探しに行くもの」から、「日常の中で自然に触れるもの」へと、少しずつ姿を変えつつあります。

    行政と都民の関係を見直す局面において、東京アプリは、行政と民間サービスをつなぐ接点として、新しい役割を担い始めています。

    #東京アプリ#行政DX#スマートシティ#デジタル行政#都政#自治体DX#公共サービス#防災#子育て支援#ポイント制度

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