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令和時代の理想のリーダー像とは?―「命令型」から「支援型」へ進化するリーダーシップ
ビジョナリー編集部 2025/12/08
厳格でカリスマ性にあふれるトップダウン型のボス。あるいは、率先して現場を引っ張る熱血漢。昭和や平成の時代、こうしたイメージは「理想のリーダー」として日本社会に根付いていました。しかし、社会もビジネスも、かつてないスピードで変化しています。そんな現代において、従来型のリーダー像は徐々に通用しなくなっているのです。
この時代に求められるリーダーの素質とは何なのでしょうか。実際に現場でリーダーを任された方、これからリーダーを目指す方に向けて、時代の変遷とともに変わるリーダー像、そして必要なスキルや心構えを具体例とともに解説します。
昭和・平成の「指示型」リーダーシップはなぜ通用しなくなったのか
高度経済成長の昭和時代、ビジネス社会では「家長」的なリーダー像が主流でした。たとえば松下電器(現パナソニック)の松下幸之助氏のように、社員を家族のように大切にしながらも、トップダウンで方針を示し、「背中を見て学べ」と部下を導く姿が理想とされていたのです。
この時代は市場が拡大し、一定のクオリティの製品を大量生産すれば売上も上がる。そんな環境下では、リーダーが一方的に指示を出し、メンバーが従う「支配型リーダーシップ」が合理的に機能していました。組織はピラミッド型で、成果も出やすい。これが昭和・平成の「勝ちパターン」だったのです。
ところが、令和の今、状況は一変しました。
近年よく耳にする「VUCA」という言葉。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語です。グローバル化やデジタル化、価値観の多様化により、昨日までの成功体験が明日には通用しなくなる。そんな激動の時代においては、従来のトップダウン型リーダーシップでは組織の力を最大限に引き出すことができません。
令和時代のリーダーに求められる素質
では、VUCA時代を生き抜くために、令和のリーダーにはどんな資質が求められるのでしょうか。
傾聴力と共感力
現代のリーダーは「答えを持っている人」ではなく、「問いを立てられる人」へと役割が変わりつつあります。メンバーの声に耳を傾け、現場の知恵や悩みに共感することから信頼関係が生まれます。
具体例
- 週1回の「1on1ミーティング」を設け、メンバー一人ひとりの課題や展望を丁寧にヒアリング。
- あるメーカーでは、経営層自らが工場の現場スタッフに「最近困っていることは?」と率直に質問し、現場改善のヒントを得たことで生産性が15%向上した事例もあります。
柔軟な適応力
環境が目まぐるしく変化する現代では、過去の成功体験にしがみつくことなく、新しい状況に柔軟に適応する力が欠かせません。
具体例
- コロナ禍でリモートワークに即対応した会社は、変化に強い組織へと成長。旧来の出社前提主義に固執していた企業との差は歴然です。
- 新サービスの立ち上げ時、社内公募でメンバーを募り、多様なバックグラウンドの人材を集めてプロジェクトを推進した例も増えています。
ビジョンと目的を言語化し共有する力
「どこに向かっているのか」が曖昧なままでは、メンバーは力を発揮できません。リーダー自身がビジョンを明確に言葉で伝え、チームと共有することが重要です。
おすすめの工夫
- 目標やビジョンを「一言で表せるキーワード」にまとめ、朝礼やミーティングで繰り返し伝える。
行動力・率先垂範
「やって見せる」ことが、言葉以上にメンバーに影響を与えます。リーダー自身が挑戦し、失敗も恐れず行動する姿は、組織全体の活力を引き出します。
実例
- 新しい業務フロー導入時、リーダー自らが率先してトライし、現場の困りごとを体験しながら改善案をまとめた結果、現場からの信頼度が格段に高まったケースもあります。
公平さと責任感
現代のリーダーに必要なのは、誰に対しても誠実かつ公平であること。そして、チームの成果や失敗に対して自ら責任を負う覚悟です。
ポイント
- メンバー評価は他者との比較ではなく、本人の成長や行動を基準に行う。
- 失敗や問題が発生した際は、まず自分が矢面に立ち、メンバーの信頼を守る姿勢を大切にしましょう。
支援型・共創型リーダーシップがもたらす組織の進化
サーバント・リーダーシップ
近年注目されているのが「サーバント・リーダーシップ」。リーダーは組織の頂点で命令するのではなく、メンバーの成長や目標達成を「支援する存在」として振る舞います。
実際の効果
- 部下の声を受け止め、必要なリソースや情報を積極的に提供することで、メンバーの自律性が高まり、離職率の低下や生産性向上につながった事例が多く報告されています。
変革型リーダーシップ
また、「変革型リーダーシップ」は、時代の流れを敏感に察知し、古い価値観にとらわれず企業や組織自体を変革する力を持つリーダー像です。
ポイント
- 明確なビジョンを掲げ、メンバーに「自分たちは意義ある目標に向かっている」と感じさせる。
- 新しい発想を奨励し、「失敗してもチャレンジを評価する」文化を醸成します。
令和リーダーのための実践的アクションプラン
ここまでの内容を踏まえ、現代のリーダーが明日から実践できるアクションプランをまとめます。
1on1面談を取り入れる
- 週1回、10分でもOK。メンバーの悩みや目標を「聴く」時間を確保しましょう。
ビジョンや目標の「言語化」を徹底する
- チームのミーティングやメールで、常に「どこに向かっているのか」を繰り返し伝えましょう。
主体的行動を促す「問い」を投げかける
- 「あなたはどう考える?」「他にどんなやり方がありそう?」といった問いでメンバーの自発性を引き出しましょう。
フィードバックは「事実と感情」をセットで伝える
- 「○○の行動はこういう成果につながった。私も嬉しかった」と、成果と感情を一緒に伝えることで信頼が深まります。
「多様性」と「自分らしさ」を両立する
今やリーダーの在り方は一つではありません。オーセンティック・リーダーシップのように、自分自身の価値観や信念を大切にしたうえで、メンバーの多様性も受け入れる。「こうあるべき」という理想像ではなく、「自分らしさ」を発揮し、それを周囲と共有することで組織に熱量が生まれます。
具体例
- 社員一人ひとりが自分の強みや価値観をポスターで言語化し、オフィスに掲示。互いの個性や目標を日常的に共有することで、社内コミュニケーションが活性化し、離職率も低下したというエピソードがあります。
まとめ
昭和から令和へと時代は大きく変化しました。「命令するリーダー」から「支援するリーダー」へ。多様性を受け入れ、率直に耳を傾け、ビジョンを明確に示し、感情をコントロールしながら、公平で責任感ある行動をとる。これが現代の理想的なリーダー像です。
「リーダーシップは生まれつきの才能ではなく、日々の実践と学びから身につけられるもの」
今いる場所から一歩ずつ、自分なりのリーダー像を磨いていきましょう。それが結果として、組織全体の進化をもたらし、社会に新しい価値を生み出す原動力となります。


